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朝カル講座 講義概要(2021年01月版)
朝日カルチャーセンターでは一線の哲学研究者たちによるバラエティに富んだ多数の哲学講義が開催されていますが、本講座は、それらとはまったく異なる性格を持っています。本講座は、哲学に関心のある非専門家たちが集まって、非専門家である講師二人とともに、哲学との「大人のつきあい方」について相談しあうための互助会であることを目指しているからです。
今シーズンからは、過去の講座で要望の多かった文献講読講義を、自己啓発書の古典を使って開始します。課題は二つ:手続きを踏んで形式的にテクストを読む訓練と、私たち自身の通俗性について反省的に検討することです。
自己啓発は、哲学のライバルプログラムとしてすでに私たちの思考に深く大きな影響を与えていますが、それだけでなく私たちが帯びざるを得ない通俗性を反映してもいます。これから1〜2年ほどの時間をかけて、自己啓発の一つの起源だと言われる「ニューソート」へと歴史をたどり・調べながら、私たち自身の通俗性について考えてみたいと思います。その作業は、自己啓発書の愛好者にも嫌悪者にも無関心な人にも、そしてなにより、哲学とのつきあい方に苦慮している人たちにとって 有意義なもの──「自分自身を知ること」に関わるもの──になるはずです。
なお、本講座の受講にあたっては、哲学に関する特別な知識も過去の講座の受講経験もまったく必要ありません。(講師記)講読候補
- エマーソン(1841)『自己信頼』
- マーデン(1894)『前進あるのみ』
- マルフォード(1889)『精神力』
- トライン(1897)『人生の扉をひらく万能の鍵』
- アレン(1902)『原因と結果の法則』
- アトキンソン(1906)『引き寄せの法則』
- ワトルズ(1910)『富を引き寄せる科学的法則』
- カーネギー(1936)『人を動かす』
- ヒル(1937)『思考は現実化する』
- ピール(1952)『積極的考え方の力』
- マルツ(1960)『自分を動かす』
- マーフィ(1963)『眠りながら成功する』
講義概要(2019年10月版)
大人は「現実的」であるよう求められます。大人は、過去の経緯を踏まえ・未来を見据えたうえで、時間的制約のなかで行動しなければなりません。他人への影響を度外視するわけにはいかないし、自分の選択が他人からどのように見えるかも無視できません。だから、大人の生活の背後には、たくさんの「考えないでおくことにしたこと」が控えています。
「考えていると話が進まない」「考慮すると面倒なことになりそうだ」「いろいろ考え直さないといけなくなるかも」……。そうしたものについて考えることは、たいていは役に立ちませんし、しばしば危険でもあります。そのせいで仕事が進まなくなったり、混乱が生じたりするかもしれません。深甚なダメージを食らうことだってありうるでしょう。
しかし、それらは黙っておとなしくしてくれるわけでもありません。たとえば疲れているとき、暇なとき、気が緩んだときに、それらはときおり大人の生活に闖入してくるのです。
では、そうしたものとどう付き合えばよいのでしょうか。──これがこの講座の課題です。
この課題に答えるために特に行いたいのは、素朴で漠然とした直感的な疑問を、継続的に掘り進めたり部分的に解消したりできる問いに変換する練習です。そのために、毎回、受講生から疑問や論題を募り、「どうしたら より安全な仕方で、危険なものと まともに付き合えるか」に配意しながら、実演的に講義を進めていきます。積み上げ型ではなく、その都度特定の論題を使った演習型の講義なので、過去講義に来ていない方でも問題なく参加していただけます。
この講座で「哲学」と呼ぶのは、こうした、解けるかどうかわからない問題への対処のことです。そして、この意味での「哲学」に無縁な人は誰もいないはずです。私たちは、「これだけが・これこそが哲学だ」とまで述べる気はありません。しかしこれを哲学的だと呼んでよいだろうことまでは──哲学の専門家も含め──大方に認めてもらえるだろうと考えています。ゆっくりと考えていきましょう。(講師記)
【ショートバージョン】
ルーマン・フォーラムの酒井泰斗氏と文筆家の吉川浩満氏による共同講義。毎回、受講生から問いや主題、書籍などを募り、講義内でとりあげて検討しながら、哲学との大人のつきあい方を実演的に考えます。(96文字)
【ロングバージョン】
哲学は、人文諸学の代表者として敬意をもって扱われるとともに、無用なものの典型としても遇されてきました。学問の分化が進んでからは、個別専門分野に収まりきらない論題を引き受けること、見通し難い学問動向を要約し市民が備えるべき知識を見定めることも期待されています。
役に立たないという非難と、人文主義の称揚とは同じ土俵の上での対立です。私たちはどちらにも与したくありません。収まりきらないものを扱うことや見通しの必要性は、単純化や極論によってスッキリしたいという欲求と隣り合わせです。私たちはその危険性も無視できません。
この講義では、非哲学者にとっての哲学の必要性と危険性について、そして哲学との距離をとった大人の付き合い方について、実演的に考えてみたいと思います。まずは、すでに長いあいだ実際に哲学とそれなりに付き合ってきた講師二人が、自分たち自身の付き合い方を振り返ってみます。そしてさらに──「哲学とは本当には何なのか」と問う代わりに──歴史的に、哲学が取り組むことを期待され(部分的には果たし)てきた課題を個別に取り上げ、それらに別の形で取り組もうとするライバルプログラム──たとえば書店における隣接ジャンルたち(宗教・精神世界・自己啓発など)──へも視野を広げ・比較しながら検討してみることにしましょう*。
* 毎回アンケートを実施し、哲学に関する問いや主題、取り上げてほしい書籍など募集します。アンケ―トの回答は講義内でも取り上げて検討します。
記載事項 | 注記 | |
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1 | 氏名 | 漢字+フリガナ |
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3 | 所属と専攻* | * 研究者以外の方は関心のある分野、バックグラウンドなどを記してください。 |
4 | 自己紹介 | 研究関心などをお書きください。 |
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