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ワードマップ ベルクソン
諸学と協働する哲学
伊東俊彦・酒井泰斗・平井靖史・三宅岳史・村山達也 編
版元 新曜社 刊行日 2026/1/10 判型 4-6 ページ数 288ページ 定価 3,190円(本体2,900円+税) ISBN 9784788519060 購入 Amazon
同時代の諸学をありったけ渉猟し社会と深くかかわる知識人として時間・心・生命・道徳・宗教をめぐり考え続けたベルクソン。学問を無視して生きることも学問だけを手掛かりに生きることもできない今を生きる私たちに向けた誠実で明快な入門書。
* 広い研究範囲と独自用語で捉えにくいベルクソンを、主著の紹介とキーワード解説を軸に解きほぐす
* 主著の主題に収まらない多彩な活動を解説するコラムも充実
目次
- まえがき
- 序論その1 私たちにとってベルクソン哲学とは何か
- 序1-1 ベルクソン哲学の三つの魅力
- 序1-2 第一の魅力―ベルクソンはどのような問いに取り組んだか
- 序1-3 第二の魅力―ベルクソンは周囲の人びとにとってどのような存在か
- 序1-4 第三の魅力―ベルクソンはどのように問いに取り組んだか(1)哲学と諸学
- 序1-5 第三の魅力―ベルクソンはどのように問いに取り組んだか(2)諸学と私たち
- 序論その2 ベルクソンにとって哲学とは何か
- 序2-1 哲学論と認識論との関係
- 序2-2 ベルクソンの認識論と科学論
- 序2-3 ベルクソンにおける哲学と科学との関係
- 序2-4 実証的な学としての形而上学
- コラム1 生涯
- コラム2 先行者たち
- 第1章 時間と自由―『意識の直接与件についての試論』
- 著作の概要
- 学術的背景
- 1-1 直接与件
- 1-2 言語
- 1-3 空間
- 1-4 強度
- 1-5 多様体
- 1-6 持続
- 1-7 自由
- コラム3 ゼノンのパラドックス
- 第2章 精神と身体―『物質と記憶』
- 著作の概要
- 学術的背景
- 2-1 イマージュ―純粋知覚、可能的行動、非決定性の中心
- 2-2 二種の再認―運動メカニズム、運動図式、二種の記憶
- 2-3 純粋記憶―過去のそれ自体における存続
- 2-4 意識の諸平面
- 2-5 心身問題・持続のリズム・凝縮
- コラム4 心身論のその後の展開
- コラム5 ベルクソン哲学と芸術
- 第3章 生命と物質―『創造的進化』
- 著作の概要
- 学術的背景
- 3-1 生命の哲学と進化論―機械論と目的論、エラン・ヴィタル
- 3-2 認識論と進化論の融合―本能、共感、知性、ホモ・ファベル、直観
- 3-3 錯覚の発生―映画的メカニズム、無
- 3-4 科学と科学哲学―物質、規約主義、実在論、熱力学、エントロピー増大の法則、異質、等質
- 3-5 宇宙生成論―物質、生命、宇宙の熱的死
- コラム6 ベルクソンと哲学史
- コラム7 『持続と同時性』
- 第4章 道徳と宗教―『道徳と宗教の二源泉』
- 著作の概要
- 学術的背景
- 4-1 閉じた社会
- 4-2 開いた社会
- 4-3 静的宗教
- 4-4 動的宗教
- 4-5 神
- 4-6 機械主義と神秘主義
- コラム8 同時代の人びと
- コラム9 後世への影響
- あとがき――企画者備忘録
- ベルクソン講義リスト / ベルクソン関連年表 / 索引
- 装幀=加藤光太郎
立ち読み
まえがき
扉図
あとがき――企画者備忘録
学生時代に読者としてお世話になり勝手に恩義を感じてきた『ワードマップ』のシリーズで、私もまた、関与の仕方に濃淡はあるが、これまでに三冊の刊行に携わることができた(『エスノメソドロジー』 『現代形而上学』 『現代現象学』)。幸いにしてどれも好評を得て版を重ねているが、これらの経験を踏まえたうえで今回は、企画人選の段階から刊行後のプロモーションに至る全てのプロセスに一貫してかかわってみようと思いたって企画したのが本書『ベルクソン』である。[略]
序論には、我々執筆陣が、現代を生きる私たちにとってのベルクソン哲学の魅力だと考えるものを三点で簡潔にまとめておいたから、あとがきを立ち読みして購入するかどうかを決める習慣のある方は、ぜひついでに序論の【序1-1】だけは読んでいってほしい。このあとがきでは、その三点─主張内容の面白さ、歴史的重要性、学問的知識との付き合いを考えるうえでのヒントの豊富さ― のうち、特に三つ目のポイントに関連して、ベルクソンが間違えることのできた哲学者であった、という点を追記しておきたい。遠くから見ても、ベルクソンの与える印象は他の哲学者たちとははっきりと違っている。その理由の一つは、ベルクソンが調べながら考えることを徹底していたところに由来するのではないかと私は思う。ハイデガーやウィトゲンシュタインのように自分が書いたものに自分でコメントをつけながら人生をやり過ごせたような哲学者の言葉は時がたっても古びないのに対し、ベルクソンのように同時代の諸学の知見を貪欲に摂取しながら考え・書いた著述家の言葉は、それら諸学の知見が古びるとともに古び、それらが修正され捨て去られるとともに意義を失っていく……ように見える。しかし諸学の知見にますます翻弄されながら生きていかざるを得なくなった時代に生きる私たち自身にとって参考になるのは後者ではないか。ただしそうできるためには、序論で謂う「ヒント」のなかにベルクソンの間違いも含め、間違いと間違い方からも学ぶのでなければならないが。私がワードマップの四冊目の題材としてベルクソンを選んだ理由、そしてなかば思想史的なアプローチを取り入れながら基本設計をおこなった理由はそうしたところにもあった。ちなみに私からの企画提案に際して、編者たちとの間で、こうしたポリシーについて意見を擦り合わせたり説得したりする必要がなかった― ほぼ最初からコンセンサスとして前提にできた―ということも、このプロジェクトの特徴を伝える情報としてここに記しておきたい。
本書は主として二種類の具体的な想定読者を置いており、著者たちにもそれを念頭に執筆するようお願いした。
一つは「理学部の三年生」である。これはまずは、学部生時代の私が読みたかった本を今回もまた作ったということではあるのだが、理学部の三年生に読める哲学の入門書は、本が読める者であれば誰にでも読めるはずである(ここで「本が読める者」というのは、自分の不案内な分野やテーマに対しても知的な関心を持つことができ、論理的な道筋を頼りに文書を読める者のことを指している)。私からは、「この文章、〈エラン〉という言葉を―〈創造性〉を、〈自由〉を―使わずに書いてみてください」といった著者にとっては面倒な注文を、読者代表としておこなっておいた。著者たちはこれに実に誠実に手間をかけて応えてくれたから、本書は実際に予備知識なしに読める本になっていると思う。
もう一つは、大正・昭和期の文化史に関心のある読者である。ベルクソンは存命中から世界中で人気のあった著述家であり、日本語圏にも早くから翻訳・紹介されたから、その思想は大正・昭和期の文化史においても避けては通れない。しかも扱った論題も手広いから、ひとがベルクソンの本を手に取ることになるきっかけは現在でも非常にたくさんある。しかし実際にベルクソンの著作を手に取った者は誰でもすぐに、あまりの難解さに絶望的な気分にさせられるはずである(どんな哲学書であれ多かれ少なかれそうしたことは起こるだろうが、哲学愛好者として長期にわたってそれなりに多種多数の哲学書を読み漁ってきた私の知識と経験からしても、ベルクソンの難解さは 格別なもの であるように思う)。本書でもやはり残念ながら「ベルクソンをわかりやすく解説する」などということはできなかったが、それでも二つの工夫はおこなった。一つは、中堅研究者たちのコンセンサスだけを記すこと。もう一つは〈ベルクソンが踏まえた同時代の知識 - ベルクソンがそれらにもとづいて立てた問い - ベルクソンが与えた答え〉の三つをセットで・クリアに分節化して提示すること、である。これによって、少なくとも「過去に類例がない」といえる程度には明快な書籍ができたと思う。企画者としては、本書が哲学史だけでなく文化史への間接的な貢献にもなれば嬉しく思う。
ところで右に、「研究者のコンセンサスだけを記す」という目標を記したが、これを実行するのは実際にはなかなか難しい(複数分野を見た上での私の印象では、哲学分野では特になおさらそうである)。それが可能であるためには、少なくとも研究者間の幾年にもわたる議論が前もって必要であり、だから、しっかりとした共著本をつくるためには、それを可能にするインフラとしての場が必要である。本書の場合は「ベルクソン哲学研究会」がそれに当たり、私が今回の題材にベルクソンを選ぶことができた最終的な理由の一つもここにあった。この研究会は1990年代末に故・石井敏夫氏と根田隆平氏とを中心に創設され、以降20年以上にわたって年に二回の例会を開催している。本書に参加した著者たちも全員が本会の会員であり、本書はそこで積み重ねられた議論の成果物でもある。この場を借りて長年にわたって会の維持管理に努めてきた皆さんに御礼を申し上げたい。[略]
本企画は、ベルクソン哲学研究会(の懇親会)での非公式的な相談期間を経て2019年の秋にスタートし、以後30回以上にわたる進捗報告の場を設けながら制作を進めたものである。途中、一般からも広く参加者を募って「ベルクソン哲学の概説書執筆準備作業進捗報告互助会」を設置し、多数の目で繰り返し企画・草稿の検討をおこなっていただいた。[略](酒井泰斗)
編者プロフィール
村山達也(むらやま・たつや)[編者 序論、第一章]
- 慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(哲学)。現在は東北大学大学院文学研究科教授。
- 専門は近現代フランス哲学と倫理学。
- 主な論文に "Portrait de famille? Bergson et le dernier Wittgenstein" (in F. Worms (ed.), Annales bergsoniennes V, PUF, 2012), "Bergson on Virtuality and Possibility" (in M. Sinclair and Y. Wolf, The Bergsonian Mind, Routledge, 2022), "Bergson's Arguments for Matter as Images in Matter and Memory" (Archiv für Geschichte der Philosophie, 2023, Advance Online Publication), 「人生の意味はどう問えばよいのか:人生の意味を考えることについて考える」(蔵田伸雄・森岡正博 編『人生の意味の哲学入門』春秋社、2023)などがある。
平井靖史(ひらい・やすし) [編者 第二章、コラム2]
- 武蔵野美術大学造形学部油絵科・東京都立大学人文学部哲学科・同大学院博士課程単位取得退学。慶應義塾大学文学部哲学専攻教授。
- 専門はベルクソン・ライプニッツなど近現代哲学。時間と心の哲学。記憶の形而上学。
- 著書に『世界は時間でできている ベルクソン時間哲学入門』(青土社、2022年)、編著に Bergson's Scientific Metaphysics: Matter and Memory Today (Bloomsbury, 2023年)、 共訳にベルクソン『意識に直接与えられたものについての試論』(ちくま学芸文庫、2002年)、 『時間観念の歴史 コレージュ・ド・フランス講義1902−1903』(書肆心水、2019年)、 『記憶理論の歴史 コレージュ・ド・フランス講義1903−1904』(書肆心水、2023年)がある。
三宅岳史(みやけ・たけし) [編者 第三章、コラム2、コラム7]
- 京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得後退学。博士(文学)。現在は香川大学大学院創発科学研究科・教育学部教授。
- 専門は、近現代哲学および科学史、科学哲学。
- 著書に『ベルクソン哲学と科学との対話』(京都大学学術出版会、2012年)、 共編著に『現代フランス哲学入門』(2020年、ミネルヴァ書房)、 共訳にジル゠ガストン・グランジェ『科学の本質と多様性』(白水社クセジュ文庫、2017年)などがある。
伊東俊彦(いとう・としひこ) [編者 第四章、コラム2]
- 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在は相模女子大学人間社会学部教授。
- 専門はベルクソンを中心とするフランス社会思想。
- 主な論文に 「創造としての自由―ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』における社会論」(『社会思想史研究』第40号、2016年)、 「「当事者」のアートとしての「アール・ブリュット」―浦河ひがし町診療所の取り組みから」(『ひとおもい』創刊号、2019年)がある。
酒井泰斗(さかい・たいと)[企画・プロデュース ワードマップ、おわりに]
- 大阪大学大学院理学研究科(物性物理学専攻)修士課程中退。音楽制作会社を経て現在は金融企業のシステム部に所属。
- 専門はインターフェースデザイン。ルーマン・フォーラム管理人(socio-logic.jp)。関心事は道徳哲学・道徳科学の歴史、社会科学方法論争史。
- 編著に『概念分析の社会学─社会的経験と人間の科学』(ナカニシヤ出版、2009年)など、 論文に「行動科学とその余波─ニクラス・ルーマンの信頼論」(小山虎編著『信頼を考える』勁草書房、2018 年、高史明との共著)などがある。
コラム担当者
- 田村康貴(たむら・こうき) [コラム1]
- 小田切裕史(おだぎり・ゆうし) [コラム3]
- 天野恵美理(あまの・えみり) [コラム4]
- 野瀬彰子(のせ・あきこ) [コラム4]
- 中原真祐子(なかはら・まゆこ) [コラム5]
- 持地秀紀(もちぢ・ひでき) [コラム6]
- 木山裕登(きやま・やすと) [コラム6]
- 北 夏子(きた・なつこ) [コラム8]
- 磯島浩貴(いそしま・こうき) [コラム8]
- 山根秀介(やまね・しゅうすけ) [コラム8]
- 原 健一(はら・けんいち) [コラム9]
- 米田翼(よねだ・つばさ) [コラム9]
催事と反響
- 2026.02.24
- 代官山 蔦屋書店にて『ワードマップベルクソン』(新曜社)・『ベルクソン入門』(青土社)刊行記念イベントが開催されます。
村山達也×平井靖史×酒井泰斗「今度こそベルクソン――迷わず辿り着くための最短ガイド」
2026.2.24 19:00-20:30 代官山蔦屋書店3号館2階イベントスペース、オンライン(Zoomウェビナー)
※申込受付は近日中に開始します。
ベルクソン哲学の概説書 執筆準備作業進捗報告互助会
趣旨
概説書(教科書)執筆へ向けた準備作業の進捗報告会への参加者を若干名募集します。- 本会の成果物が2026年1月に刊行されます: 伊東俊彦・酒井泰斗・平井靖史・三宅岳史・村山達也 編『ワードマップ ベルクソン』(新曜社、2026年)
著者について
著作の課題とスケジュール概要
作業タイトル
- ベルクソン哲学の概説書
著作の課題と概要
- 理学部の学部三年生でも読めるベルクソン哲学の概説書。
- 主要著作や術語の内容が確認でき、解釈の争点や今後の研究課題も知ることができる簡便なガイドブック。
- 中堅研究者のコンセンサスをまとめ、「国際的な研究動向や近年の公刊資料を視野に収めた標準的見解を示すもの」として薦めることができるもの。
- 専門的研究を志す学部生や修士院生を研究の入り口まで最短最速で運ぶ、今後の研究インフラとなるもの。
- 「そのつど最新流行の学術的話題に “いっちょ噛み” する著述家だったせいで、いまとなっては評価が難しくなってしまっている著述家(の著作群)に、後世の者たちとしては どう付き合えばよいのか」という哲学史・思想史上の わりと よくある難問の一つにも──当時の学問状況、科学史的・文化史的背景を(概説書に許される範囲で)可能な限り考慮する方向で──あわせて取り組む。
著作の構成案
※2021年1月26日暫定版| 第一部 概論 | 1. ベルクソン哲学とは何か |
|
|---|---|---|
| 2. ベルクソンにとって哲学とは何だったのか |
|
|
| コラム 伝記 | ||
| コラム 同時代の人々1:フランス編 | ||
| 第二部 各論 | 1. 時間と自由:『意識の直接与件についての試論』 | |
| 2. 精神と身体:『物質と記憶』 | ||
| コラム 記憶論のその後の展開 | ||
| コラム 芸術論 | ||
| 3. 生命と物質:『創造的進化』 | ||
| コラム ベルクソンと哲学史 | ||
| 4. 道徳と宗教:『道徳と宗教の二源泉』 | ||
| コラム 同時代の人々2:国際編 | ||
| コラム 後世への影響 | ||
| おわりに |
スケジュール概要
- 脱稿目標: 2021年初秋
- 進捗報告会:
- キックオフを 2020年1月15日(水)19:00-21:00 に開催。目次案の作成、キーワードの選定をおこないます。
- 2020年4月から執筆&相互検討を本格的にスタート。以後1~2ヶ月に一度のペースで開催予定。
会合には Google Hangtout を使用しますが、仙台、東京、京都・大阪などにはオフラインにサテライト会場の設置を検討中です。
ZOOMを使ったオンライン会議。
参加資格と参加申込
参加資格
- 学術論考の草稿、配布資料などの取り扱い作法を ご存知の方
- 他参加者に対して、エントリーメールにおいて丁寧な自己紹介を行っていただける方 (不十分な場合、参加をお断りしたり、著名人との自認がある方だと判断させていただくことがあります)
- 会の場において、ほかの参加者の意見をよく聴き、適切な受け答えの出来る方
- 構想・草稿などのブラッシュアップに貢献できる方
参加申込
- 進捗報告・検討会の参加者を 最大で20名 募集します。
- 参加希望の方は、下記項目を記し 件名を「ベルクソン報告会参加希望」としたメールを
までお送りください。
- メールアドレス以外の情報は、参加者間で共有されます。
- 会に関する連絡は Google Groups で行ないます。
| 記載事項 | 注記 | |
|---|---|---|
| 1 | 氏名 | 漢字+フリガナ |
| 2 | Googleアカウントに登録しているメールアドレス | お持ちでない方は、こちらから作成してください:Google アカウントの作成 |
| 3 | 所属と専攻* | * 研究者以外の方は関心のある分野、バックグラウンドなどを記してください。 |
| 4 | 自己紹介 | 研究関心などをお書きください。 |