趣旨

• 共著論文執筆へ向けた準備作業の進捗報告会への参加者を募集します。
• 主題は「所有（における構造的カップリング）」です。
• ※進捗報告互助会の開催は必ずしも実際の執筆ひいては完成を保証するものではなく、「調べてみたところ特に書くべきことはなかった」、「進捗しなかった」などの場合も含め 諸事情を勘案した結果として執筆を取りやめる可能性があります。

作業課題とスケジュール概要

作業課題（第二期：2019年5月から）

• 第一期（2019年3月まで）の10回で、
  • 術語「構造的カップリング」に関する先行研究
  • ルーマン諸著作における「構造的カップリング」概念登場の脈絡
  のフォローが大まかには終了したため、次のフェーズに入ります。
• 今後は
  1. 木庭顕占有論*のルーマン理論による再解釈
  2. ルーマン諸著作において「所有」とともに登場する他の諸観念との配置
  の二つの焦点を設けて、更に検討を続けます。

作業課題（第一期：2019年3月まで）

• 所有 という概念を範例として、ルーマン理論における「構造的カップリング」周辺のターミノロジーの含意と射程について検討します。
• 予備作業として、まずは次の二つのことを行う必要があります：
  1. ルーマンは 所有 に関して──『法システムと法解釈学』（1974）、「はじめに不法なかりき」（『社会構造とゼマンティク３』、1988）など──複数の時期に幾つかの論稿を残していますが、この論題は、晩年の著作シリーズ『社会の理論』において「構造的カップリング」なる術語のもとで取りまとめられることになりました。この術語は毀誉褒貶が激しく、中には マルブランシュの〈機会原因〉と同様に無内容な概念だと非難する論者¹もいるほどです。したがって、この術語の守備範囲と狙いがどのようなものであるのかを明らかにする（＝特定し・限定する）必要があります。
  2. 所有 は、経済、法、政治といった複数の領域に関わるものであるため、『社会の理論』シリーズにおいては──『社会の経済』（1988）、『社会の法』（1993）、『社会の政治』（2002）など──シリーズの複数の著作に分散して登場し、
     • 封建制下における 支配と所有 の緊密な概念的連関
     • 市民革命期における所有概念の一般化
     • 経済活動のア・プリオリな基盤としての象徴的に一般化したコミュニケーション・メディア、メディア・コード
     • 貨幣による所有の二次コード化
     • 経済／法／政治の分化
     など、様々なかたちで論じられています。 したがって、『社会の理論』シリーズを通覧したうえで、関連箇所を「所有」を中心にして描き直す作業も必要です。
• 進捗報告互助会では、作業時期を二つに分け、それぞれ下記の作業を行います：
  • 第一期（2017年8月から2017年12月まで）： 主として「構造的カップリング」を扱った先行研究の検討。（検討候補リスト）
  • 第二期（2018年1月～）： ルーマンによる「所有」関連文献の検討

報告会概要

• 投稿先　：　未定
• 脱稿目標：　2020年中くらい(?)
• 会　場　：　東京都内+web
• 開催時期：　2017年8月以降の平日夜（二時間程度）開催 （開催日は「進捗報告互助会一覧」参照のこと）

参加資格と参加申込

参加資格

• 配布資料・草稿などの取り扱い作法を ご存知の方
• エントリーメールにおいて　他参加者に対する丁寧な自己紹介を行っていただける方　（不十分な場合、参加をお断りしたり、著名人との自認がある方だと判断させていただくことがあります）
• 会の場において、ほかの参加者の意見をよく聴き、適切な受け答えの出来る方
• 構想・草稿などのブラッシュアップに貢献できる方

参加申込

• 進捗報告・検討会の参加者を 10名程度（最大で20名）募集します。
• 参加希望の方は、下記項目を記し 件名を「所有祭り参加希望」としたメールをまでお送りください。
  • メールアドレス以外の情報は、参加者間で共有されます。
  • 会に関する連絡は Google Groups で行ないます。

	記載事項	注記
1	氏名	漢字＋フリガナ
2	Googleアカウントに登録しているメールアドレス	お持ちでない方は、こちらから作成してください： Google アカウントの作成
3	所属と専攻*	* 研究者以外の方は関心のある分野、バックグラウンドなどを記してください。
4	自己紹介	研究関心などをお書きください。

第二期 進捗報告互助会の検討候補

1. 木庭 顕 （2017）『新版 ローマ法案内』勁草書房

ルーマン（1988）『社会の経済』参照文献

第五章「資本と労働」

II〈資本／労働〉区別の意味論的来歴について：マルクス主義とは何だったのか

2. ミラボー
3. テュルゴー
4. ハリス
5. 注09　チャールズ・ホール（1805）『ヨーロッパの人々への文明の影響』
6. 注12　トマス・ホジキンスン（1825）『資本の主張に対する労働の弁護』

V

7. 注20 ヤノーシュ・コルナイ『反均衡と不足の経済学 (1983年)』

第六章「稀少性」

I 稀少性の自己言及性

8. 注14　ルーマン「社会・宗教・意味」in （1990）『自己言及性試論』
9. 注11, 18 ポール・デュムシェル＆ジャン・ピエール デュピュイ『物の地獄―ルネ・ジラールと経済の論理』 法政大学出版局

II 道徳経済／貨幣経済

10. 注20 George M. Foster, 1965, Peasant Society and the Image of Limited Good. https://www.jstor.org/stable/668247 George M. Foster, 1967, Tzintzuntzan: Mexican Peasants in a Changing World.
11. 注21 道徳経済：スコット、ジェームス（1976→1999）『モーラル・エコノミー―東南アジアの農民叛乱と生存維持』高橋彰 訳、筑摩書房
12. 注22 ポランニー
13. 注22 ルイ・デュモン
14. ルイ デュモン（）『個人主義論考―近代イデオロギーについての人類学的展望』

III コミュニケーション・メディアとしての所有／偶発性定式としての稀少性

15. 注27　マーシャル・サーリンズ（1974→1984）『石器時代の経済学』法政大学出版局
16. 注32　エルマン・サーヴィス（1966）『現代文化人類学2 狩猟民 (1972年)』 鹿島研究所出版会
17. 注35　ジョン・G・A・ポーコック（1979→1993）「所有の流動性と18世紀社会学の興隆」 in 『徳・商業・歴史』
18. 注36　Dietmar Willoweit, Dominium und Proprietas: Zur Entwicklung des Eigentumsbegriffs in der mittelalterlichen und neuzeitlichen Rechtswissenschaft, Historisches Jahrbuch (1974)

IV 稀少性概念の変容：貨幣による二次コード化と貨幣による稀少性の二重化

19. 注48,51 　ヒューム『政治論集』

V 二次コード化によって可能となった諸々のパラドクス緩和策について

20. 注50 Nicholas Xenos, 'Classical Political Economy: The Apolitical Discourse of Civil Society', Humanities in Society, 3 (1980), 229-42.
21. ライヘンバッハ
22. 注63 ポランニー『経済の文明史』： 貨幣鋳造の登場
23. 注64 Pierre-Paul Le Mercier de la Rivière de Saint-Médard, 1767, L'Ordre Naturel Et Essentiel Des Sociétés Politiques. ：重農主義の法解釈
24. 注65 モートン・J. ホーウィッツ（1977→1996）『現代アメリカ法の歴史 (アメリカ法ベーシックス)』 樋口範雄訳、弘文堂：アメリカ慣習法における所有概念の拡張について。

VI 労働

25. 注71 マーシャル・サーリンズ（1968→1972）『現代文化人類学5 部族民 (1972年)』青木 保訳、鹿島研究所出版会：所有の観念が変わるとと労働が増える。
26. 注73 J. H. ブーケ（1953→1979）『二重経済論―インドネシア社会における経済構造分析 (1979年)』 永易浩一訳、秋菫書房：遠隔地で豊作のときに労働価格が上昇する謎現象について。
27. 注74 ジョセフ・ハリス（1757→1975）『貨幣・鋳貨論 (初期イギリス経済学古典選集)』 小林昇訳、東京大学出版会： 裕福な国の方が労働は多い説。

VII コード化／プログラム化

ルーマン（1993）『社会の法』参照文献

ルーマン『社会の政治』参照文献

ルーマン『社会の宗教』参照文献

ルーマン（1997）『社会の社会』参照文献

ルーマン「所有権の起源とその正統性──歴史的概観」参照文献

その他

モラル・エコノミー

28. 音無通宏（1998）「モラル・エコノミーとポリティカル・エコノミー」 経済学史学会年報 36(36), 26-39, 1998
29. 中澤信彦（1999）「「モラル・エコノミー」とアダム・スミス研究」 『関西大学経済論集』（関西大学経済学会）第48巻第4号, 1999. 3, pp.55-71
30. 田中秀夫（2002）「18世紀ブリテンにおける社会秩序観の転換── モラル・エコノミーとポリティカル・エコノミー」『地域と社会』第5号、大阪商業大学比較地域研究所
31. 安藤裕介（2014）『商業・専制・世論―フランス啓蒙の「政治経済学」と統治原理の転換』創文社

人類学

32. クロード・メイヤスー（1975→1977）『家族制共同体の理論―経済人類学の課題 (1977年)』 筑摩書房

第一期進捗報告互助会で検討したもの

第１回

1. 高橋徹「機能システムのインターフェース、あるいは自立する周辺」 高橋徹・小松丈晃・春日淳一 『滲透するルーマン理論：機能分化論からの展望』文眞堂、2013年。
2. Detlef Krause, Luhmann - Lexikon. Eine Einführung in das Gesamtwerk von Niklas Luhmann, 1996.
3. クラウディオ・バラルディ、エレーナ・エスポジト、ジャンカルロ・コルシ『GLU―ニクラス・ルーマン社会システム理論用語集』 国文社, （1997→）2013.

第二回

4. 山下和也『オートポイエーシス論入門』ミネルヴァ書房, 2010. （目次）
5. 上村隆広「機能システムの構造的カップリング：「法と政治」に関する社会システム理論的考察のために(1-3)」 大阪府立大学紀要 人文・社会科学 56, 57 & 60, 2008, 2009 & 2012.

第四回

6. ルーマン（1993）『社会の法』上下
7. ルーマン（2000）『社会の政治』

第五回

8. Luhmann, Niklas (1988), "Closure and Openness: On Reality in the World of Law", in: Gunther Teubner (ed.), Autopoietic Law: A New Approach to Law and Society, Walter de Gruyter.

第一期検討候補

この欄は随時更新予定。

論文

1. 高橋徹「構造的カップリングの問題性」 in 佐藤勉編『コミュニケーションと社会システム―パーソンズ・ハーバーマス・ルーマン』 恒星社厚生閣, 1997.
2. 赤堀三郎「構造的カップリングとセカンド・オーダーの観察：いかにして社会システムを「観察」するか」 ソシオロゴス 21, 1997.
3. 山田信行「社会理論の説明形式──「コンティンジェンシー」をいかに処理するか」関西学院大学社会学部紀要 84, 2000.
4. 井本佳宏「戦前期に置ける女子中等教育システムの形成とその構造──システム理論からのアプローチ」 東北大学大学院教育学研究科研究年報 55-1, 2006.
5. 清水 たくみ・井庭 崇「Web2.0時代における創造のマネジメント」 情報社会学会誌 2-2, 2007.
6. 川村仁子「グローバルな政治における政治思想の位置と機能─オートポイエーティック・システム理論分析の適用可能性に関する考察」立命館国際研究 21(2), 2008.
7. 上村隆広「機能システムの構造的カップリング：「法と政治」に関する社会システム理論的考察のために(1-3)」 大阪府立大学紀要 人文・社会科学 56, 57 & 60, 2008, 2009 & 2012.
8. ラルフ・ポッシャー「タブーとしての人間の尊厳」 比較法雑誌 46(4), 2013.
9. 真鍋貞樹「社会システム間の相対的自律性」 拓殖大学政治行政研究 7, 2016.
10. 高橋徹「機能システムのインターフェース、あるいは自立する周辺」 高橋徹・小松丈晃・春日淳一 『滲透するルーマン理論：機能分化論からの展望』文眞堂、2013年。

書籍

11. マツラナ＆バレラ『知恵の樹―生きている世界はどのようにして生まれるのか』 ちくま学芸文庫, （1987→）1987/1997.
12. クニール、ナセヒ『ルーマン社会システム理論』 新泉社, 1995.
13. Detlef Krause, Luhmann - Lexikon. Eine Einführung in das Gesamtwerk von Niklas Luhmann, 1996.
14. クラウディオ・バラルディ、エレーナ・エスポジト、ジャンカルロ・コルシ『GLU―ニクラス・ルーマン社会システム理論用語集』 国文社, （1997→）2013.
15. 永井俊哉『システム論研究序説』, 自費出版(?), 1997?/2015.
16. 福井康太『法理論のルーマン』 勁草書房, 2002.（第七章　法の構造的カップリング）
17. M. King & C. Thornhill, Niklas Luhmann's Theory of Politics and Law, Palgrave Macmillan UK, 2003
18. ルック・チオンピ『基盤としての情動―フラクタル感情論理の構想』 学樹書院, 2005.
19. 大黒岳彦『〈メディア〉の哲学──ルーマン社会システム論の射程と限界』 NTT出版, 2006.
20. 河本英夫『システム現象学―オートポイエーシスの第四領域』 新曜社, 2006.
21. 西垣 通『続 基礎情報学―「生命的組織」のために』 NTT出版, 2008.
22. 山下和也『オートポイエーシスの世界―新しい世界の見方』 近代文芸社, 2004.
23. 山下和也『オートポイエーシスの倫理―新しい倫理の考え方』 近代文芸社, 2005.
24. 山下和也『オートポイエーシスの教育―新しい教育のあり方』 近代文芸社, 2007.
25. 山下和也『オートポイエーシス論入門』ミネルヴァ書房, 2010. （目次）
26. 河本英夫『臨床するオートポイエーシス：体験的世界の変容と再生』 青土社, 2010.
27. 河本英夫『損傷したシステムはいかに創発・再生するか: オートポイエーシスの第五領域』 新曜社, 2014.
28. 河本英夫（2017）『経験をリセットする：理論哲学から行為哲学へ』 青土社