2025.02.20
3/15に、関西大学にて著者講演会が開催されます。「反響とリンク」に情報とリンクを掲載しました。
2025.02.08
3/9に、紀伊國屋書店新宿本店にて、河野有理さん(日本政治思想史)と前田亮介さん(日本政治外交史)をゲストに招いた刊行記念イベントが開催されます。「反響とリンク」に情報とリンクを掲載しました。
2025.02.08
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2025.02.06
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著者自身による著作解題

政治学の現場は、静謐な観照からほど遠い。政治の喧騒のなか、不安定な土壌の上で、知識体系の構築と解体がくり返されてきた。政治学とは何であるのか、その共通了解が確固として成立したことはない。この学問の歴史は、政治をめぐる探求史であると同時に、政治の学問的追究とは何かをめぐる、騒々しい試行と臆見の堆積でもあった。

このことは翻って、政治に対する探求の仕方、広くいえば研究行動(research behavior)のうちに、政治学のあり方とあるべき姿にかかわる研究規範が刻印されているということでもある。なかでも「科学としての政治学」は、戦後日本の政治学でもっとも広範なインパクトを与えた、しかしそれ自体が論争的な研究規範だった。本書は、戦後日本に出現した「科学としての政治学」をめぐる論争史としての側面をもつ、その錯綜した発展史を記述したものである。

一つのキーワードは行動科学だ。観察可能な人間行動を研究対象とするこの学際的な科学運動は、長期にわたる反発と受容を経て、日本政治学の姿を変えてきた。本書でとりあげる選挙研究、圧力団体論、一九五五年体制、日本型多元主義、新制度論などの業績は、学説の発展である以上に、政治学のやり方を変える震源地にもなってきた。

学問が知見の積み重ねとして発展するには、後進学者が先達の研究を まね できなくてはならない。この意味で知的探求が科学であるためには、探求が模倣可能な開かれたものであること、すなわち知的営為の民主化が必要である。このことは研究行動を条件づける人や物、組織に目を向けさせる。学会の創設、計算機、データ・アーカイブ、提言団体などは本書でも主要なトピックとして登場する。

このように本書は、学説の発展史である以上に、学問そのものの歴史を扱う。文中ではこれを「科学史としての政治学史」と呼んでいる。

従ってまた、名著とされた画期的業績について、その現代的意義の擁護に本書は関心をもたない。むしろ、往年の政治学書に対しては、取扱注意の赤札を貼らなくてはならない。それらは方法や資料が制約され、しばしば現代の私たちとかけ離れた問題意識に導かれている。無媒介に現代の理解に役立つと思い込むことは初学者の陥りやすい危険であり、その後の研究蓄積を軽視する態度だからである。歴史を歴史として扱うこと、そして政治学史でもそれが可能であるということ、このことが本書の基本方針である。

さらにいえば、正当な評価を得られず忘れ去られた業績に、再び光を当てることも本書はしない。取り上げるのは、いずれも専門家のあいだで高く評価されている現代日本政治分析の著作である。対象の限定づけは単純化を招く反面、学問的探究の主流とその対抗的潮流の布置を明確にし、学史のアウトラインを提供するだろう。

(酒井大輔)

目次

著者プロフィール

酒井大輔(さかい・だいすけ)

1984年愛知県生まれ.名古屋大学法学部卒業.同大学院法学研究科修士課程修了.現在は国家公務員.専門は日本政治学史.
https://researchmap.jp/dsakai

反響とリンク

『政治学の科学化とは何か -戦後日本の政治学史から考える』
2025.03.15
関西大学 法学研究所 第66回公開講座。聴講無料 要事前申込(締切 3/13)。
紀伊國屋書店新宿本店 【3階アカデミック・ラウンジ】『日本政治学史』【中公新書】刊行記念 河野有理さん×前田亮介さん×酒井大輔さん(著者)トークイベント
2025.03.09
紀伊國屋書店新宿本店にてゲストを招いた刊行記念トークイベント が開催されます。参加費無料ですが、着席参加券には事前申込が必要です。
哲学の劇場#216 酒井大輔『日本政治学史』(中公新書)刊行記念特集
2025.01.20
哲学の劇場Youtubeチャンネルにて、『日本政治学史』を紹介していただきました。酒井大輔・酒井泰斗・上林達也(中央公論新社)の三名でお邪魔しています。