2023.07.16
読売新聞に書評が掲載されました。評者は小池寿子さん(国学院大学教授・美術史)です。
2023.07.08
朝日新聞に書評が掲載されました。評者は神林龍さん(武蔵大学教授・労働経済学)です。
2023.07.01
書籍刊行にともないページの内容を一新しました。
  • アートの値段

    現代アート市場における価格の象徴的意味

    オラーフ・ヴェルトハイス 著/陳海茵 訳

    版元 中央公論新社
    初版刊行日 2023/4/20
    判型 A5判
    ページ数 344ページ
    定価 3960円(10%税込)
    ISBNコード ISBN978-4-12-005645-1
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  • 聞き取りと統計分析の矛盾示す

    ... 評者にとって興味深いのは、その聞き取りと統計分析が矛盾を示す点だ。とくにオランダの現代美術のデータを用いた統計分析の結果は驚きである。美術作品の値段の「ばらつき」を、作家(の知名度)や制作方法、制作のタイミングなどでほぼ説明してしまうからだ。...

    朝⽇新聞 2023年07月08日

    (神林龍 武蔵大学教授・労働経済学)

  • 初物の価値 愛・道徳も作用

    ... アート市場研究は、日本の美術史学ではこの10年来始まったばかりであり、本書を起爆剤に人文書科学の共同によって市場のみならず脆弱な日本文化制作の推進をも期待する。

    読売新聞 2023年07月21日

    (小池寿子 国学院大学教授・美術史)

多くの人は、オークションに出品された有名な絵画の落札額に驚愕したり、困惑したりしたことが少なからずあるはずだ。なぜ人びとは困惑するのか? その根源には、値段が付けられる「プロセス」の不透明さがある。

実は、絵画をはじめとするアート作品の値段は、作品単体の良し悪しに対する評価ではなく、芸術家、画廊オーナー、オークションハウス、コレクターなど多くのプレイヤーが参加する「意味交換システム」の中で決定される。

本書では、アート市場という特殊な交換の場におけるゲームのルール、「意味の交換システム」の存在を明らかにする。そして、経済学的理論モデル、インタビュー、データ分析、さらに参与観察などの社会学的方法を用いて、その特徴を分析していく。

まず現代アート市場に「一次(プライマリー)」と「二次(セカンダリー)」があることを説明し、両者におけるプレイヤーを整理した上で、画廊とオークションハウスの2業種における値段の付け方の違いを分析する。

たとえば、値段が急上昇しやすい二次市場にたいして、一次市場は「新人芸術家を守る」という使命をもち、最初から高値を付けず、新人が業界内で安定した地位に登るまで少しずつ値段を調節することを暗黙の了解としている。アート作品の値段は、決して一点の作品それだけで決まるものではなく、多くのプレイヤーによる継続的な相互行為によって生み出されるものなのである。

最後に著者は、値段自体もまた「アートの価値システム」において重要なプレイヤーであるとする。経済学では、商品の値段は単なる値だが、それは芸術家とその作品に「象徴的意味(信頼・名声など)」をもたらすだけでなく、アート市場の根幹をなすものでもあるのだ。

美と商業は対立するものと言われてきたが、それでも両者は長い歴史の中で共存しながら「持ちつ持たれつな関係」を築いてきた。本書は芸術と経済の関わりを社会学的視点から丹念に解きほぐしていく。

目次

  • まえがき
  • 序章  イントロダクション――アートの価格は単なる数字ではない――
  • 1章 アート市場の構造――芸術はいかに商品化されるのか――
  • 2章 意味の交換――支援と感謝の気持ちを交換する――
  • 3章 後援者VS便乗者――ギャラリーとオークションはなぜ相容れないのか――
  • 4章 価格の決定要因――統計分析からみるアートの諸要素と価格の関係性――
  • 5章 値付けの技術――ディーラーは実際にどのように価格をつけるのか――
  • 6章 価格の物語――価格はどのように正当化されるのか――
  • 7章 価格の象徴的意味――価格に込められた意味を読み解く――
  • 8章 結 論――価格が私たちに語りかけること――
  • 付録A/インタビュー質問票  付録B/インタビューサンプルの解説
  • 付録C/美術品価格の記録   付録D/美術品価格のマルチレベル分析
  • 参考文献  索引

著者プロフィール

Olav Velthuis オラーフ・ヴェルトハイス

アムステルダム大学社会学部教授。専門は経済社会学、芸術社会学、文化社会学。
同学部では、文化社会学プログラムグループのディレクターを務めている。研究テーマは、アート市場のグローバル化、市場と贈答品交換の相互関係、現代アートの評価と価格設定、アダルトコンテンツ市場の道徳的・社会技術的側面など。
最近では、BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)におけるアート市場の出現と発展を横断的に比較して研究している。
アムステルダム大学に移る前は、オランダの日刊紙「de Volkskrant」のスタッフ・レポーターとして数年間勤務。(参照https://www.researchgate.net/profile/Olav_Velthuis)

陳 海茵(ちん かいん)(翻訳)

東京大学大学院学際情報学府博士課程/埼玉大学大学院人文社会科学研究科研究員。
1991年中国生まれ,幼少期から日本静岡県三島市で育つ。お茶の水女子大学卒業後、東京大学大学院学際情報学府北田暁大研究室にて社会学を学び、修士論文として「中国現代アートの発展過程分析:制度と実践の相互作用」を執筆した。
Sotheby's Institute of Art を経て、中国現代アート市場を対象とした社会学研究に取り組む。
査読論文には「中国現代アートとアクティビズムにおける政治の多義性:ポスト文革期の前衛芸術グループ星星画会を事例に」『年報カルチュラル・スタディーズVol.5』(2017, 創文企画)などがある。
日本学術振興会特別研究員。

反響

2023.07.21
翻訳者である 陳 海茵が 9月に女子美術大学でゲスト講師として『アートの値段』に関する講演をおこないます。
2023.07.16
読売新聞に書評が掲載されました。評者は小池寿子さん(国学院大学教授・美術史)です。
2023.07.08
朝日新聞に書評が掲載されました。評者は神林龍さん(武蔵大学教授・労働経済学)です。
2023.07.01
『月刊アートコレクターズ』(No.172 2023年7月号)のBOOK紹介コーナーに訳者インタビューが掲載されました。

翻訳準備作業進捗報告互助会

Talking Prices: Symbolic Meanings of Prices on the Market for Contemporary Art

趣旨

翻訳対象

対象著作について

本書の概要

    見込み
Introduction    
1 The Architecture of the Art Market  
2 Exchanging Meaning  
3 Promoters versus Parasites  
4 Determinants of Prices  
5 The Art of Pricing   
6 Stories of Prices  
7 Symbolic Meanings of Prices  
Conclusion    
Appendix A Interview Questionnaire 191(3)
B Description of Interview Sample 194(3)
C Record Prices for Art 197(2)
D Multilevel Analysis of Prices for Art 199(10)
 

翻訳作業と進捗報告会のスケジュール概要

執筆と報告会の概要

  • 脱稿目標: 2020年mm月
  • 進捗報告会のキックオフ: 2020年08月29日(土)。
  • 会場: 東京都内&WEB

参加資格と参加申込

参加資格

  • 学術論考の草稿、配布資料などの取り扱い作法を ご存知の方
  • 他参加者に対して、エントリーメールにおいて丁寧な自己紹介を行っていただける方 (不十分な場合、参加をお断りしたり、著名人との自認がある方だと判断させていただくことがあります)
  • 会の場において、ほかの参加者の意見をよく聴き、適切な受け答えの出来る方
  • 構想・草稿などのブラッシュアップに貢献できる方
※いわゆる読書会に近い形式で進めますが、参加者に対する「レジュメ担当」などの負担はありません。

参加申込

  • このプロジェクトは終了しました。
20200701 作成|20230721 更新