日曜社会学 - ルーマン・フォーラム / エスノメソドロジー番外地

Sunday sociology - Luhmann Forum / Ethnomethodology: on the edge of nowhere

作成:20141226 更新:20180621

酒井泰斗プロデュース:ニクラス・ルーマン解読講座

この頁には、酒井泰斗が 朝日カルチャーセンター新宿などにおいて担当した講義や 関連する催しなどに関するこれまでの情報や今後の予定を掲載しています。

更新情報

20180621
2018年10月講座 「『近代の観察』解読」のの講義概要を掲載しました。
20180618
2018年10月講座 「『近代の観察』解読」の開催日が 10/3(水)、11/7(水)、12/5(水)に確定しました。
20180601
2018年10月講座 「『近代の観察』解読」紹介欄を設置し、ゲスト講師である馬場靖雄さんによる著作概要を掲載しました。
20180405
2018年4月講座「『権力』解読」の講義紹介ページを開設し、4/2に開催した第一回講義の内容を掲載しました。
20180221
2018年4月講座「『権力』解読」の申込受付を開始しました: 一般ユース
20171226
「『権力』解読」の講義概要を掲載しました。
20171209
「『権力』解読」紹介欄に、ゲスト講師である長岡克行さんによる著作概要を掲載しました。
20171127
「『権力』解読」の開催日が 2018年4月2日(月)、5月7日(月)、6月4日(月)に確定しました。
20171024
「『信頼』解読」質疑応答頁を開設しました。
20171003
小宮友根さんによるルーマン『信頼』著作概要掲載しました。
20170822
朝カル2017年10月講義、「『信頼』解読」の受講申込の受付が始まりました。
20170522
朝カル2017年10月講義、「『信頼』解読」の講義概要を記しました。
20170620
「『法システムと法解釈学』解読」質疑応答頁に、第3回講義の概要を掲載しました。
20170524
2015年06月に開催した「『リスクの社会学』を読む」講義の第3回でいただいた質問いくつかに対する回答を掲載しました。
20170522
朝カル2017年10月講義、「『信頼』解読」の開催日が 10月18日(水)、11月15日(水)、12月20日(水)に決まりました。ご予定おきください。
20170517
「『法システムと法解釈学』解読」質疑応答頁に、第2回講義の概要と、講義内やアンケートなどにていただいた質問に対する回答の一部を掲載しました。
20170508
「『法システムと法解釈学』解読」質疑応答頁に、第1回講義へのアンケートなどにていただいた質問に対する毛利康俊さんからの回答を公開しました。
20170424
「『法システムと法解釈学』解読」質疑応答頁を開設しました。
20170227
朝カル連続2017年4月講義 「『法システムと法解釈学』解読」の申込受付が始まりました。
20170117
朝カル連続講座講師リストに馬場靖雄さんを追加しました。
20170116
朝カル連続2018年04月講義は、長岡克行さんをゲスト講師に 1975年の著作『権力』をとりあげる方向で調整中です。
朝カル連続2017年4月講義 「『法システムと法解釈学』解読」の講義概要を掲載しました。
20161205
朝カル連続2017年4月講義 「『法システムと法解釈学』解読」でゲスト講師をお願いしている毛利康俊さんに、本書の紹介を書いていただきましたので公開します。
20161108
朝カル連続2017年4月講義の準備を開始しました。4月期は、法哲学者の毛利康俊さんをゲスト講師に招いて、1974年に刊行された『法システムと法解釈学』を取り上げることにしました。「法解釈学」はルーマンが「範例」的な仕方で幾度も取り上げ・検討したトピックです。「法解釈学」そのものに馴染みのある方は多くないでしょうが、そうした方にも理解していたけるような講義を目指しますので、ぜひ多くの方に受講をご検討いただければと思います。初回開催日は 2017年4月17日(月)、申込受付は2月中旬の予定です。
20160824
朝カル連続2016年10月講義、「『マスメディアのリアリティ』解読」の申込受付が始まりました。
20160722
「『目的概念』解読」質疑応答頁に、第三回講義における質問に対する解答を幾つか書きました。
20160715
次回講座「『マスメディアのリアリティ』解読」の 趣旨文と、ゲスト講師である高橋徹さんによる著作紹介文を掲載しました。
20160630
次回講座「『マスメディアのリアリティ』解読」の 開催日程が 2016年 10/05、11/02、12/07 に確定しました。ゲスト講師は高橋徹(中央大学法学部)です。
20160216
『目的概念とシステム合理性』講座の受付を開始しました。「講座概要」
20160121
『目的概念とシステム合理性』講座の講義名が「ルーマン解読:組織合理性の社会学」に決まりました。「講座概要」文を掲載しました。
20160107
三谷さんによる著作紹介文を掲載しました: 著作紹介:『目的概念とシステム合理性』に関する三つの質問(三谷武司)
20160107
ルーマン解読講座3「三谷武司さんと『目的概念とシステム合理性』(1968)を読む」の開催日が ①2016年 04/20(水)、②05/18(水)、③06/29(水) に確定しました。
20160107
更新情報欄を作りました。

掲載物一覧

これからやるもの・やっているもの

ニクラス・ルーマン解読講座 (各 全3回)
2015年04月以降 朝カル新宿 講義

  • 次の各著作をゲスト講師を交えて検討します。
告知  著作  ゲスト講師 
講座案内 『制度としての基本権』
  終了(2015年10-12月
小山 裕 質疑応答
講座案内 『目的概念とシステム合理性』
 終了(2016年04-06月)
三谷武司 質疑応答
講座案内 『信頼』
 2017年10-12月
小宮友根 質疑応答
講座案内 『法システムと法解釈学』
 終了(2017年04-06月)
毛利康俊 質疑応答
講座案内 『権力』
 2018年04-06月
長岡克行 質疑応答
講座案内 『リスクの社会学』
 終了(2015年04-06月)
小松丈晃 質疑応答
講座案内 『マスメディアのリアリティ』
 終了(2016年10-12月)
高橋 徹 質疑応答
講座案内 『近代の観察』
 (2018年10月-12月)
馬場靖雄

馬場靖雄ゼミナール:ニクラス・ルーマン講読
2017年09月から2018年3月 開催 講義

  • 馬場靖雄さんが進めてこられたルーマンの諸著作に対するコメンタール作業を公開でおこなっていただくものです。
  • 2017年9月から2018年3月まで毎月開催予定。
  • 講座案内

すでにやったもの

ルーマン入門:『社会の理論』を〈社会のブックガイド〉として読む (全1回)
2013年05月 開催 朝カル新宿 講義

  • 北田暁大さんが担当した「ルーマン入門」にゲスト出演し、ルーマンの研究プロジェクトの全体的な形式について大まかな紹介を行ないました。
  • 「質疑応答の記録」

独学者のための社会学入門 (全2回)
2014年11&12月 開催 朝カル新宿 講義

  • 行動科学運動を中心に、1930~1950年代のアメリカにおいて急速に発展した社会学と周辺諸科学の関係などについて大まかな紹介を行ないました。
  • 講座概要

ルーマン解読・エクストラ:『社会の芸術』解読講義
2015年07月 開催 講義

  • 芸術に携わる方の向けのエクストラ・セッションです。
  • 2015年7月から2017年3月にかけて開催しました。
  • 講座の趣旨
  • 講義の記録

じんぶんや「社会のブックガイド──ルーマンからはじめる書棚散策」
2015年3月20日(金)〜 紀伊國屋書店新宿本店 ブックフェア

  • 紀伊國屋書店新宿本店にて。
  • ルーマン晩年のプロジェクト『社会の理論』を援用してブックリストを作成しました。店頭では、総勢8名の執筆陣による解説パンフレットも配布します。
  • フェア紹介ページ

酒井泰斗×北田暁大 「マイナー社会学の愉しみ方──ルーマン、エスノメソドロジー、『概念分析の社会学』」
2015年4月06日(月) 紀伊國屋書店新宿本店 無料トーク・セッション

  • 「ルーマン・ブックフェア」関連イベント。紀伊國屋書店新宿本店にて。
  • 詳細・申込

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ニクラス・ルーマン解読 連続講座@朝カル新宿:直近の講座情報とこれまでの記録

かつて うっかり著作を手にとり
あえなく挫折したことが心残りになっている
すべての方のためのルーマン再入門講座です
社会学者ニクラス・ルーマンのキャリアは、 この講座では、こうしたルーマンのキャリアとプロジェクト、そしてまた「アメリカの行動諸科学を摂取しつつ・大陸の社会理論の伝統に対峙する」というルーマンの二面性に留意しつつ、これまでも比較的よく読まれてきた小品いくつかを、それぞれに相応しいゲスト講師を招いて検討・紹介します。
全三回の講義のうち、
 著作 刊行年  ゲスト講師  検討観点1:行動科学 検討観点2 開講時期
 『制度としての基本権』 1965  小山 裕 行動論的政治学 ドイツにおける自由主義をめぐる論争  2015年 10/09、11/13、12/04 
 『目的概念とシステム合理性』 1968  三谷武司 組織行動論
意思決定理論
行政学・組織論  2016年 04/20、06/29、07/20
 『信頼』 1968  小宮友根 ゲーム理論を用いた社会心理学実験
行動科学的行政学
ジンメル、ゴフマン
エスノメソドロジー
 2017年 10/18、11/15、12/20
 『法システムと法解釈学』 1974  毛利康俊 情報理論 ドイツにおける法学方法論をめぐる論争  2017年 04/17、05/15、06/19
 『権力』 1975  長岡克行 行動論的政治学
ゲーム理論
 2018年 04/02、05/07、06/04
 『リスクの社会学』 1991  小松丈晃 社会心理学における帰属研究 発売時ならびに最近のリスク研究動向など  2015年 04/20、05/18、06/29 
 『近代の観察』 1992  馬場靖雄 『社会の理論』
+『社会構造とゼマンティク』
 2018年 10/03、11/07、12/05
 『マスメディアのリアリティ』 1995  高橋 徹 コミュニケーション研究 マスメディアと政治  2016年 10/05、11/02、01/11
企画者プロフィール
酒井 泰斗
横浜生まれ。大阪大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程中退。音楽制作会社を経て現在は金融系企業のシステム部に所属。ルーマン・フォーラム管理人(socio-logic.jp)。専門はインターフェース・デザイン。
共著に 『ワードマップ エスノメソドロジー』(2007)、『概念分析の社会学』(2009)、『概念分析の社会学2』(2016)。論文に「〈法と科学〉の比較行政法政策論」(『科学・技術・社会』26、2017年、吉良貴之・定松淳・寺田麻佑・佐野亘との共著)、「社会システムの経験的記述とはいかなることか」(『ソシオロゴス』31、2007年、小宮友根との共著)。

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講座8「ルーマン解読:馬場靖雄さんと『近代の観察』(1992)を読む」

講義概要

 「ルーマン解読」連続講座の最終回として、1992年に刊行された論文集『近代の観察』を取りあげます。1980年以降、ルーマンは自らの研究人生の集大成となる2つの著作シリーズ(社会の理論+社会構造とゼマンティク:計13巻)を続々と刊行していきましたが、この論文集は、その真っ最中(1990-91年)に行われた一連の講演を元にしたものです。
 論文集全体のテーマは──ギデンズの著作の邦訳タイトルを借用すれば──「近代とはいかなる時代か」であり、上掲2シリーズを補完するとともに、それらを理解するための補助線を示してもくれます。ただしルーマンは、先の問いに対して「この問いには答を出すべきなのか/そもそも出しうるのか」との疑念も提起するのですが。

 そこで本講義では、

なお、これまでの講座を受講されていない方も、問題なく受講していただけます。

※講義では邦訳テクスト(馬場靖雄訳、2003年、法政大学出版局)を使用します。お持ちの方は持参してください。

ゲスト講師紹介
馬場靖雄(大東文化大学社会学部教授)
京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了.専門は社会システム論、社会学史。
主な著書: 『ルーマンの社会理論』(勁草書房、2001年)ほか。
翻訳:N.ルーマン 『社会の社会』1(共訳、法政大学出版局、2009年)ほか

著作概要
(馬場靖雄)

Q1. 本書で ニクラス・ルーマンが取り組んだのは どのような課題ですか。

 これまで本講座に参加し、あるいはルーマンの著作ないし紹介文献を繙かれたことのある皆さんなら、ルーマンは全体社会(Gesellschaft)の主要な分化様式を「環節分化/階層分化/機能分化」の三つに区分しており、18世紀西欧に始まる近代社会は、機能分化によって特徴づけられる云々と(一応は)主張しているのをご存じでしょう。このテーゼは社会学の世界である程度「定説」として受容されると同時に、特に近年では厳しい批判に曝されています。
 ITの普及・進展とグローバル化が急速に進みつつある現代は、もはや機能分化(とりあえず、経済、法、政治、科学 …… の「専門分化」と考えておいてもよい)という視点では捉えられなくなっている。今や、一度は分化した各領域が複雑に絡み合い、融合する新しい社会編成原理を考えねばならない云々。本書は「セカンド・オーダーの観察」「偶発性」等のルーマン理論の鍵概念を駆使しつつ、すでに早い段階から登場してきたこの種の批判に応答することを通して、ルーマンなりの近代社会理解を明らかにしようとするものです。

Q2. それぞれの課題に対して ルーマンが与えた回答はどのようなものですか。

 ルーマンは「機能分化体制としての近代社会は終焉を迎えつつあり、今やそれに代わる新たな社会構想が求められている」といった類の議論を退けます。そのそも「機能」とは、或る問題に対する等価な代替選択肢を探究する思考法・コミュニケーション様式を意味しており、したがって「機能分化に取って代わる新たな秩序の登場」という発想自体が、機能に定位した社会編成原理を前提にする/そのような社会編成を導くものに他ならないからです。したがって機能分化の「次」はありません。近代社会の編成原理である機能分化は或る意味、ヘーゲル=コジェーヴ=フクヤマが提起したように、「歴史の終わり」に他ならない。ただし「大きな物語の終焉」「歴史の終わり」に対してすでに早い段階から批判されてきたように、この種の主張は根本的なパラドックスを孕んでいます。「もう次はない」という指摘自体が、新たな時代の、新たな体制の到来を示すメルクマールとして呈示されてしまっているからです。
 ルーマンが本書冒頭から、一時期リオタールなどの名とともに喧伝された「ポストモダン」論に対してアイロニカルな態度を示しているのも、まさにそれゆえにです──リオタールの『ポストモダンの条件』の中では、新たな社会秩序像を先駆的に示す論者の一人として、ルーマンが(ある程度)肯定的に援用されているのですが。

Q3. こうした課題に取り組むことには どのような意義がありますか。

 私たちの生活が、社会が、世界が、急速に変化しつつあるのは、誰しも認めるところでしょう。先にも述べたように、現在生じている社会と世界の大転換の兆しとしてよく挙げられるのは、ITの進展と普及、グローバリゼーション、テロとゲリラ戦の蔓延、少子高齢化、地球環境問題の深刻化、などでしょう。これらの個々の問題が深刻化しているのみならず、それらの相乗効果によって、私たちが所属する人類の状態そのものが何らかの臨界点に達して、大いなるカタストロフィが、あるいは変革の時が訪れるのではないか。こう思われてくるのは、むしろ自然なことでしょう。そのような予感を表現するために最近でもしばしば用いられるのが、「パラダイムシフト」や「シンギュラリティと」いった語彙群です。これらの語彙が盛んに口にされ、論じられているのをみれば、私たちは、木村敏が統合失調症患者の精神状態を記述するために用いた表現を借用するならば、「アンテ・フェストゥム」(ante festum=祭りの前)状態の真っ只中に置かれていることがわかります。
 来たるべき祭り(大いなる転換の発生)に備えて/祭りを乗り切るために/祭りの到来を促進するために何をなすべきが。もう一つ、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンの楽曲のタイトル(ミサ通常文に基づく)を借用すれば、ワレラ死者ノ復活ヲ待チ望ム(Et exspecto resurrectionem mortuorum.)──今現在「常識」「当然のこと」として世に君臨しているものがまもなくその地位から追い落とされ、すべてが新たな審判に服するはずだ云々。それが、ルーマンをはじめとする「グランド・セオリー」に──「そんなものは役に立たない」と揶揄されながらも──何らかの関心を抱き続きている私たち(少なくとも、この講座に参加されている皆さん)の心象風景ではないでしょうか。
 このアンテ・フェストゥムは未来へと開かれた、期待と不安が充満する、生じつつある変革に自分も参与しているという「選ばれてあることの恍惚と不安」(これは、太宰治が引用したヴェルレーヌの言葉でした)を実感できる、ある意味ではすばらしい時間であるとも言えます。しかし同時に私たちは、祭りなど永遠に到来しないのではないかという密かな不安に苛まれてもいないでしょうか。世界は変化し続けている──しかし「常に変化する」というこの状態が、このまま何ら変化することなく永遠に続いていくのではないか。どんな新しいことが起ころうとも、決定的な突破口などもたらしてはくれないのではないか。私たちは、アンテ・フェストゥムの中に閉じ込められてしまっているのではないか。来たるべきものへの期待と願望だけが常に増幅されてゆき、それらがか叶えられることは決してない.そしてその結果、焦燥感だけがいや増していく──近代社会学の創設者の一人であるエミール・デュルケームは、近代社会特有のこの状態を「アノミー」と呼んだのでした。ボードレールが短い、しかしきわめて示唆に富む批評の中で「現代生活の画家」、近代社会を常に変転していく生活様式として捉えた上で、その不安定性からの救済を、科学技術の進歩などではなく芸術の内に求めたのも、同じ問題意識に基づいてのことでした。私もまた同様の疑念を拭いきれないがゆえに、「シンギュラリティ」といった語を無条件に使用する気にはなれないのです。
 本書は決して、近代を超える新たな展望を呈示したり、各人がそのような展望を抱きうるためのヒントを与えてくれるものではありません。しかし性急に「新たなもの」を求めるのではなく、一歩立ち止まって変わりゆくものと変わらないものとを弁別し見極める作業も、激変の最中に居る私たちには必要なのではないでしょうか。
 「われらに、変えうるものを変える勇気を、変えることのできないものを受け入れる智慧を与え給え」──これはアルコール依存症からの回復を目指す自助グループで用いられているスローガンだそうです(「ニーバーの祈り」と呼ばれる)。本書を読み解くことによって、そのような勇気と智慧の一端を会得してもらえればなどと、不遜な希望をも抱いている次第です。

講座7「ルーマン解読:長岡克行さんと『権力』(1975)を読む」

講義概要

 1975年に刊行された『権力』は、〈シンボルによって一般化されたコミュニケーション・メディア(SGCM)〉論をある程度まとまったかたちで提出したという点で、ルーマン理論の形成史において一つの画期をなす著作だといえます。これによって、「機能分化した現代社会の成立を人類史的なタイムスパンにおける社会進化として描く」という構想に コミュニケーション理論からアプローチする、というルーマンのプロジェクトの最小限の道具立て(システム分化論+社会進化論+SGCM論)が いちおう揃ったことになるからです。
 他方でこの著作は、70年代初頭に ハーバーマスとの論争によって一躍悪名を世に知らしめられることになったルーマンからの、ハーバーマスへの返答でもあります。数あるSGCMの中でも特に「権力」が選ばれたのは、「社会システム論には、対立や闘争の側面よりも現存支配体制の維持安定と効率とを重視するテクノクラート主義的な傾向があり、支配の諸関係や権力現象についてのリアリスティックな分析が欠けている」といった批判への応答でもあっただろうからです。

 こうした事情を踏まえ、この講義では、死後刊行された『社会の政治』(2000)も併せて参照しつつ、 というかたちで、この著作にアプローチしてみたいと思います。

※講義では邦訳テクスト(長岡克行 訳、勁草書房、1986年)を使用します。お持ちでない方はお近くの公共図書館に購入リクエストを出してみてください。

ゲスト講師紹介
長岡克行(東京経済大学名誉教授)
神戸大学大学院経営学研究科博士課程終了 経営学博士。東京経済大学経営学部教授を経て、現在、名誉教授。ブッパータール大学経済学部客員教授、ヴィッテン・ヘルデッケ大学経済学部教授を歴任。
著書: 『企業と組織 グーテンベルク経営経済学研究』(千倉書房、1984年)、『ルーマン/社会の理論の革命』(勁草書房、2006年)。
翻訳書: ルーマン『権力』(勁草書房、1986年)
論文: 「社会理論としての社会システム理論とハーバマス=ルーマン論争」(『思想』680号、1981年2月)[CiNii]。「ルーマンの社会の理論:全体像と現代的意義」(『社会学研究』83号、2008年3月)[CiNii]

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講座6「ルーマン解読:小宮友根さんと『信頼』(1968)を読む」

講義概要

 1968年に刊行された著作『信頼』は、特に日本では著名な倫理学者によって邦訳されたこともあずかって、ルーマンの著作の中では比較的広く読者を得たものです。しかし、なぜこの時期にこのような形で信頼を取り上げなければならなかったのか、そしてまた ルーマン理論のなかで信頼という論題がどのような位置にあるのかは、それほど判明ではありません。
 後期の著作群『社会の理論』の方から振り返ってみると、これが、ルーマン流の近代化論の内実を与える社会学的時間論を構築するための一論題として扱われていることが見えてきます。そこで本講義では、

紹介することで、この著作に新たな光を当ててみたいと思います。

ゲスト講師紹介
小宮友根(東北学院大学経済学部共生社会経済学科准教授)
東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程修了。専門はエスノメソドロジー/会話分析、ジェンダー論、理論社会学。司法におけるジェンダー問題に関心をもち、現在は裁判員裁判の研究、とりわけ裁判員評議の会話分析研究に取り組んでいる。
著書: 『実践の中のジェンダー──法システムの社会学的記述』(新曜社、2011)、「評議における裁判員の意見表明」(『法社会学』77号、2012)、「裁判員は何者として意見を述べるか」(『法社会学』79号、2013)、「強姦罪における『被害者資格』問題と『経験則』の再検討」(陶久利彦編『性風俗と法秩序』尚学社、2017年)など。

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講座5「ルーマン解読:ドグマ的思考の社会学──毛利康俊さんと『法システムと法解釈学』(1974)を読む」

講義概要

 ドグマはふつう、人々の思考を縛るものだと考えられています。しかし1974年に刊行された本書においてルーマンは、法専門職の仕事を例に取り、ドグマ的思考は法律家の思考を解放する側面と、類似の事例に法的決定を一貫させるという効果をあわせ持つ、と主張します。そしてドグマ的思考のこうした積極面に着目することで、法律家集団内外からの法律家批判に適切に応じることができるようになるとしています。
 また本書6章では特に所有概念が取り上げられます。近代的な所有権概念の成立後も所有をめぐる判例理論が展開しただけでなく、さまざまな私法の特別法が制定され、種々の公法的な規制が所有権に加えられてきました。その結果、所有の基本的な概念は同じままでも、その機能には大きな変化が生じました。この変化の背景に、ルーマンは、法律家たちの、所有概念をコアとする概念ネットワークを複雑化し、洗練させてゆく努力をみているわけです。さらに、所有の概念は近代社会を特徴づける経済システムの分出に対応するものなので、ルーマンは新たな理論装置を作ってはさまざまな角度からたびたびこのトピックに立ち戻ることになりました。
 残念ながら本書は、ルーマンの理論装置がまだ未整備だったために分かりにくい面もあるのですが、この点は後年の『社会の理論』シリーズを参照することで明確になります。したがって、70年代のルーマンが、所有をめぐる諸制度と法思考についてどのように見ているかを知ることは、彼の理論の全体がどのように展開していったかを知るためにも有意義でしょう。そこで本講義では、

という順序で、のちに「冗長性と多様性」や「構造的カップリング」といった術語で語られるようになる事態について、法解釈学を例に考えてみたいと思います。
ゲスト講師紹介
毛利康俊(西南学院大学 法学部教授)
京都大学大学院法学研究科単位取得退学(1996年)。
著書に 『社会の音響学:ルーマン派システム論から法現象を見る』(勁草書房2014年)がある。
この著作では、ルーマンの理論を法秩序論の方法論として再構成し、若干の応用例を示した。最近では、システム論や推論主義意味論の観点から、法的思考・法解釈学の実態を適切に記述し、位置づけることを試みている。

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講座4「ルーマン解読:高橋徹さんと『マスメディアのリアリティ』(1995)を読む」

「ルーマン『マスメディアのリアリティ』解読」概要

 ルーマンの最晩年にあたる1995年に刊行された本書は、放送局の依頼に応じて1994年におこなった講演ノルトライン・ヴェストファーレン州の科学アカデミーで行った講演の講演録(1995年) がもとになっています。
 一方で本書は、「我々はどのような現実のなかで暮らしているのか」に関する判断材料を、他に凌駕・匹敵するもののない仕方で与えているマスメディアという制度に照らして・その観点から、現代社会のあり方を描こうとしたものであり、この点で『社会の理論』シリーズと同様の課題を持った著作だといえます。
 他方で、「社会の理論+社会構造とゼマンティク」という著作群が「近代化」をテーマとし、それを主として概念史から素材を借りて論じようとしていたのと比べると、本書にはそうした性格は薄く、またそもそも「ゼマンティク」なる術語自体がほぼ登場しません。代わりにその位置には、(「スキーマ」「スクリプト」などといった)認知科学から取り入れた術語群が置かれています。
 こうした事情に鑑みて、本講義では、

ゲスト講師紹介
高橋 徹(中央大学法学部教授)
東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了.博士(文学).
専門はコミュニケーション論、社会システム論。近年はこれらのアプローチを政治社会学に応用している。
主な著書:『意味の歴史社会学―ルーマンの近代ゼマンティク論』(世界思想社、2002年),『滲透するルーマン理論―機能分化論からの展望』(共著、文眞堂、2013年)ほか。
翻訳:N.ルーマン『社会の社会』(共訳、法政大学出版局、2009年)、N.ルーマン『社会構造とゼマンティク3』(共訳、法政大学出版局、2013年)ほか。

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講座3「ルーマン解読:組織合理性の社会学──三谷武司さんと『目的概念とシステム合理性』(1968)を読む」

「ルーマン解読:組織合理性の社会学」概要
  1968年に刊行された本書では、ハーバート・サイモンの組織モデルをなぞる形で組織合理性の検討が行われています。しかし、どうしてこうした作業を行わなければならなかったのか判明には書かれていないため、この点に戸惑った読者は少なくないかもしれません。
  晩年の著作シリーズ『社会の理論』の方から振り返って考えてみると、 という二つの事情が見えてきます。そこで本講義では、 という順序で、社会理論にとっての「合理性」概念の意義をルーマンがどのように捉えようとしていたのか考えてみたいと思います。
※講義では邦訳テクスト( 馬場靖雄・上村隆広 訳、1990年、勁草書房)を使用します。お持ちでない方はお近くの公共図書館に購入リクエストを出してみてください。
ゲスト講師紹介
三谷武司(東京大学大学院情報学環准教授、翻訳家)
東京大学大学院人文社会系研究科単位取得満期退学。専門はルーマン研究。主な論文として
  • 「システム合理性の公共社会学――ルーマン理論の規範性」(盛山和夫・上野千鶴子・武川正吾(編),『公共社会学1 リスク・市民社会・公共性』,東京大学出版会,71-86頁,2012年)
  • 「システムが存立するとはいかなることか――ルーマン・システム理論の超越論的解釈に向けて」(『思想』970,岩波書店,113-129頁,2005年)
など。主な訳書として など。

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講座2(2015年10月09日(金) 開講): 小山 裕さんと『制度としての基本権』(1965)を読む

概要
これまでも比較的よく読まれてきたルーマンの小著を、彼の研究構想全体に関連づけて、また〈大陸における社会理論の伝統への対峙〉と〈北米の行動諸科学の摂取〉という二側面に注目して読み解く講座の二冊目です。今回とりあげる 『制度としての基本権』は、憲法学におけるいわゆる「人権論」を社会学的に基礎づけ直そうとしたものですが、〈コミュニケーション理論によって内実を与えられた機能分化論〉を中心に据えた社会理論の構想を最初に提示した著作であるという点で、ルーマンの数ある著作の中でも特に重要なものです。
開催日

第一回 2015年 10/09、第二回 11/13、第三回 12/04

受講料
ゲスト講師紹介
小山 裕(東洋大学社会学部講師)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。東京大学文学部助教を経て現職。
主著に 『市民的自由主義の復権』(勁草書房より刊行予定)。
主な論文に「ニクラス・ルーマンの政治思想」『思想』(2015年 1月2月3月)、「観察する科学としての社会学の誕生」『現代思想』(2014年12月)など。

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講座1(2015年04月20日 開講): 小松丈晃さんと『リスクの社会学』(1991)を読む

概要
これまでのルーマン像は、次々に出版される特定の時期の著作群の内容に大きく左右され・変転してきました。しかし『社会の理論』と『社会構造とゼマンティク』という二つの著作シリーズが刊行されてみると、これら膨大な著作群の多くが、30年をかけて追求された一つのプロジェクトのパーツであったことが分かってきました。(そして現在では、このプロジェクト、2シリーズのほとんどに翻訳でもアクセスできるようになっています。)
こうした状況を踏まえ、この講座では、これまでも比較的よく読まれてきたルーマンの幾つかの小品を、上記研究プロジェクトに関連付けて──また「アメリカの行動諸科学を摂取しつつ・大陸の社会理論の伝統に対峙する」というルーマンの二面性に留意しつつ──改めて読みなおします。
受講料(税込み)[4月~6月(3回)]
ご案内

ニクラス・ルーマン (著), 小松 丈晃 (翻訳) 『リスクの社会学』(新泉社)をお持ちの方はご持参ください。(テキスト持参は必須ではありません)

ゲスト講師紹介
小松 丈晃(東北大学文学部 准教授)
大学教員。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。 専門は社会システム論、リスク研究。
主な著書として、 『リスク論のルーマン』(勁草書房、2003年)、「リスク社会と信頼」(今田高俊編『リスク学入門4』岩波書店、2007、109-126頁)、『滲透するルーマン理論―機能分化論からの展望』(文眞堂、2013年、高橋徹・春日淳一との共著)他。

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