日曜社会学 - ルーマン・フォーラム / エスノメソドロジー番外地

Sunday sociology - Luhmann Forum / Ethnomethodology: on the edge of nowhere

『ワードマップ エスノメソドロジー──人びとの実践から学ぶ』概要

ワードマップ エスノメソドロジー──人びとの実践から学ぶ

このページには、『ワードマップ エスノメソドロジー』各部の冒頭に付された 内容概観の言葉を全文掲載しています。
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第 I 部 エスノメソドロジーのアイデア ──実践に学ぶ
第 II 部 エスノメソドロジーの論理 ──なぜ実践に着目しなければならないか
第 III 部 エスノメソドロジーの記述 ──実践の記述に向けて

第 I 部 エスノメソドロジーのアイデア ──実践に学ぶ

第1章 エスノメソドロジーのアイデア

 第 I 部では、EMにおいて用いられる基本的な用語を中心に、そのアイデアの大枠を紹介します。そもそも、「エスノ("ethno"=人びとの)・メソドロジー("methodology"=方法論)」という名前自体が、ちょっと変わっています。最初のキーワードとしてとりあげた、この言葉は、それぞれの実践に参加している人びと(メンバー)が使っている「メンバーの方法(members' method)」の名前であると同時に、それをとおして実践を記述する研究の名前なのです。それでは、なぜわざわざ、こんな難しい言葉づかいをしているのでしょう?  この言葉は、私たちの参加することのできる実践は、なんであれ方法的に成り立っているからこそ、「説明可能(アカウンタブル)である」、ということに、注意を向けるために用いられています。つまり、日常会話からはじまって、テレビでCMを見る、教室で学ぶ(/教える)、病院で診察を受ける(/診察する)、法廷で評決を行なう、実験室で科学実験をする、といったさまざまな実践にいたるまで、そこで行なわれていることや起きていることを理解し、見て語ることができるのは、その実践に参加している人びとが、何らかの方法論を用いているからだ、ということに注意を向けているのです。  そして、実践が方法的に成り立っているからこそ、まずこの「人びとの方法論」を研究するところから、出発できるのではないでしょうか。これが、EMのアイデアの最初の出発点です。実践を記述する研究であるEMは、この意味で、「実践から学ぶ」研究なのです。第 I 部では、こうしたアイデアの輪郭を、はっきりと見とおせるようにしていきます。

第 II 部 エスノメソドロジーの論理 ──なぜ実践に着目しなければならないか

第2章 行為を理解するとは、どのようなことか  第3章 秩序があるとは、どのようなことか
第4章 合理的であるとは、どのようなことか  第5章 規範があるとは、どのようなことか

 第 II 部では、エスノメソドロジストたちが、なぜ実践を記述しなければならないと考えたか、明らかにします。EMは、社会学の中心的な問いを考え抜くことによって、それらの問いが、まず何よりも実践の参加者たちにとっての実践的な課題なのだ、という考え方にたどりつきました。 
 たとえば、行為を理解するために概念を厳密にしようとあらたに定義しなおすかわりに、メンバーが実践的行為を理解するために用いている概念の用法そのものに着目したのです(第2章:行為を理解するとは、どのようなことか)。また、切り離された個人の間での秩序の生成を構想するかわりに、実践において場面が見てわかるかたちで組織されていることに着目したのです(第3章:秩序があるとは、どのようなことか)。あるいは、合理的なモデルからの偏差として現象を理解しようとするかわりに、現象そのものが実践において観察/報告できることの合理性に着目したのです(第4章:合理的であるとは、どのようなことか)。さらに、行為や社会秩序を規範によって説明しようとするかわりに、そもそも実践的行為を可能にしている規範の用法そのものに着目したのです(第5章:規範があるとは、どのようなことか)。
 このように第Ⅱ部の各章では、それぞれの問いを実際に考えながら、実践において用いられる「人々の方法論」を研究する、という第 I 部で紹介したアイデアを、EMがたどりついた到達点として、(再)提示します。なお、各章は、それぞれ並列的な関係になっていますので、関心をひいた章から読み始めていただくことができます。

第 III 部 エスノメソドロジーの記述 ──実践の記述に向けて

第6章 会話をする  第7章 会話における実践  第8章 ワークの実践  第9章 実践における理解

 第III部では、エスノメソドロジストたちが、具体的にどのように実践を記述してきたのか、紹介したいと思います。第Ⅲ部は、さまざまな実践を具体的に記述していますが、それらは、医療、科学、教育、メディア、法……といった領域ごとというよりは、会話する、議論する、物語を語る、教える、学ぶ、実験する、測定する、見る……といった、具体的な活動や現象ごとに分類されています。こうした具体的な活動や現象が組織されるようなそれぞれの実践に、それぞれ固有な「人びとの方法論」があることを、実感していただきたい、と思うからです。
 第III部は、まず、日常会話で用いられている「人びとの方法論」を記述するところから出発します(第6章)。そこから議論する、ジョークを語る、ニュースを伝える、といった活動が、会話においてどのように組織されているかを記述していきます(第7章)。続いて、授業や実験室といった具体的な状況において、さまざまな具体的な作業がどのようになされているかについて、教える、学ぶ、実験する、測定する、比較するといったワークの実践を記述していきます(第8章)。最後に、見る、感情を持つ、想い出す、といった認識にかかわる言葉で語られる現象を、状況に埋め込まれた実践として、記述します(第9章)。これらの実践は、少なくとも可能的には、私たちが参加できるものです。
 EMは、私たちが参加しうる実践であれば、どこからでも研究を始めることができます。きっと、第 III 部の各項目のなかに、自ら実践していることを見つけだしていただくことができるはずです。気になった項目からまず読み始め、全体にさかのぼる、というような、読み方もありうるでしょう。

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