趣旨
2011年1月に開催した
「ピエール・ブルデューの方法 検討会」で私たちは、
- 【Q1】 「社会空間」に関する知識は どのようにして得ることができるのか。
という問いを立て、「ブルデューの方法と理論における計量的手法の位置を──特に《社会空間》概念にフォーカスして──確認する」という課題を設定しました。そして、研究会での検討をとおして得られた最初のミニマムな洞察は、
- 【P】 『ディスタンクシオン』(1979→1989/1990)において、
- 対応分析 correspondence analysis が析出するのは 生活様式空間の軸であり、
- 生活様式空間は 補助変数を用いた解釈を経て 社会空間 と重ね合わされる。
というものでした。
これは、
- 【Pa】 社会空間に関する知識を得るためには 対応分析を経由することが必要だが
- 【Pb】 社会空間に関する知識は 対応分析だけでは得ることができない
ということを意味しています。
ところで、前回の研究会で 私たちが Q1 を出発点にしたのは、次の前提があったからでした:
- 調査技法との関連でいえば: 「社会空間」概念は、計量的な技法の採用と軌を一にして登場するものである。
- ターミノロジーの観点でいえば: 「社会空間」概念の登場のあとで、初期の頃から存在していた「ハビトゥス」「資本」「界」などの概念は、「社会空間」概念のもとで再考され、相互に関連付けられるかたちで統一的に再配置されている。
したがって、P を出発点に取り直すと、さらに・すぐに次のような──関連しあう──問いの検討に進みたくなります:
- 【Q2】 P がブルデュー理論全体に対してもつ含意は何か。
「社会空間-と-対応分析」の関係を論じることの、ブルデュー理論全体に対する射程は どこまで・どの程度のものか。
- 【Q2a】 ブルデューの議論は どれくらい対応分析に依存したものなのか。
- 【Q2b】 依存していないところでは、どんな作業が行われているのか。
- 【Q2c】 対応分析に依存した部分 -と- 依存していない部分 の関係はどうなっているのか。
- 【Q3】 対応分析を他の手段で代替できるのか。
- 【Q3a1】 対応分析を回帰分析で代替することはできるのか。
- 【Q3a2】 計量分析なしに──インタビューやフィールドワークなどの他の調査手段によって──「社会空間」について論じることはできるのか。
- 【Q3b】 代替した場合に、ブルデューの議論からどれほどのものが取り去られることになるのか。
・・・などなど。
二回目の研究会となる今回は、今後そうした問いへと進んでいくためにも、しかし、もう少し P に立ち止まり、同じ課題を さらに掘り下げることにします。
具体的には、第一回研究会における瀧川裕貴さんの報告を 特に取り上げ、ブルデュー研究や計量社会学研究を専門とする方をゲストに招いて、
- ブルデュー理論における「社会空間」の位置
- ブルデューによる対応分析の利用(特に軸の設定)の仕方
- ブルデューによる回帰分析に対する批判
といった点を中心に、瀧川論考の解釈の適切さを検討・確認していただいたうえで、参加者のみなさんと Q2、Q3 を睨んだディスカッションができればと考えています。
企画概要と参加者募集要項
- 日時: 2013年10月14日(月・祝、日本社会学会大会翌日)、★13:00~18:00
- 会場: 東京都内 (詳細は研究会MLにて告知します)
- 報告:
- 瀧川 裕貴(東北大学国際高等研究教育機構 学際科学フロンティア研究所)
- 指定討論者:
- 筒井 淳也(立命館大学 産業社会学部 現代社会学科)
- 川野 英二(大阪市立大学大学院 文学研究科)
- 企画・主催・司会:
- 酒井泰斗(会社員/ルーマン・フォーラム)、北田暁大(東京大学大学院情報学環)
ブルデューを参考にしつつ対応分析を使って行われた研究
「社会空間」を含む基本的なターミノロジーを検討した論考
ブルデュー理論の発展史における計量調査の位置に関する論考
その他、計量社会学全般における対応分析の意義について論じたもの
- 佐藤俊樹(2000)「第5章 統計の実践的意味を考える」 (『実践としての統計学』、東京大学出版会)
- 筒井さんとのやりとり:http://d.hatena.ne.jp/jtsutsui/20110903/1315050506