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この頁には、2014年03月01日 ならびに 2016年12月25日に開催した 社会学研究互助会例会(第8&9回)の告知文と配布資料を掲載しています。
ギルバート・ライルの現象学 | ピーターウィンチの『理念』 | ||
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研究会概要と趣旨 | |||
小宮友根「エスノメソドロジーにおけるライル」 | 浦野 茂「エスノメソドロジーにおける『理念』」 | ||
植村玄輝「ライルと現象学」 | 山田圭一「アプリオリな概念分析とはどのようなものか?」 | ||
» | 村井忠康「ライルとアスペクト」 | 笠木雅史「分析哲学の伝統における概念分析」 |
ライルは行動主義者であるという考えは、ライルを読んだことのない人にしか思い浮かばない。(Rödl 2012(2005),p. 5 n3)数多の教科書風の解説に満足せず、ちゃんと『心の概念』を読まなくては!
企図、意図、望み(wanting)の基本的対象を述べる言語表現が表示するのは、ライル、ケニー、ヴェンドラーが到達や遂行などさまざまな名称で呼んできたものである。今やこの伝統は、言語学者のあいだにしか生き残っていないように見える。(Thompson 2008, p. 123)
I was walking to school. (私は学校まで歩いていた。) I walked to school. (私は学校まで歩いた。)
どちらも過去形なので違いはテンスによるものではない。この違いを伝えるのがアスペクト。
ある時点(通常は発話時点)を基準として状況を時間上に位置づける。
Taro was taller than Hanako. 過去 Taro is taller than Hanako. 現在
状況の内的な時間的構造を伝える。
I was walking to school. 過程(活動) The tree was falling down. 過程 I walked to school. 行為 The tree fell down. 出来事
テンス \ アスペクト | 完成 perfective | 進行(未完成 imperfective)/結果 |
現在 | × | シテイル |
過去 | シタ | シテイタ |
(進行相) 木が倒れている。 (結果相) 木が倒れている。
テンス \ アスペクト | 完成 | 進行(未完成) | 結果 |
現在 | × | ショール | シトル |
過去 | シタ | ショッタ | シトッタ |
(進行相) 木が倒れよーった。 (結果相) 木が倒れとった。
(例) | ライル | 現代 |
信念 | 傾向性 | 状態 |
痛みの感覚 | 事象 | 事象 |
傾向性語 | エピソード語 | ||||
---|---|---|---|---|---|
半ば傾向性 動詞 |
達成動詞 achievement verbs |
仕事動詞 task verbs |
その他 | ||
わかった動詞 got it verbs |
保持動詞 keeping verbs |
臓器感覚動詞 organic sensation verbs 他 |
|||
be
a
migrant be soluble know believe |
migrate dissolve |
see hear cure/heal win sore find hit prove solve |
keep
in
view keep a secret hold the enemy at bay safeguard |
look listen treat fight kick hunt aim scan |
feel
a
pain itch |
※『心の概念』邦訳291頁の「痛みや針が刺さったときの感じなどの感覚器官による感覚」は誤訳。正しくは「・・・の臓器感覚」。
seeingやhearingは過程ではない。アリストテレ スは、まさしく的確に、「I see it」と言えるやいなや「I have seen it」と言えることを指摘している。(Ryle 1954 邦訳167頁)
A φs ⇒ A has φed
Though they are occurrences, or events, achievements do not take time in the way that tasks do: they are instantaneous or durationless happenings that consists in mere change in, or of, something. (p. 175)
Achievements, such as win, unearth, find, convince, prove, cheat, unlock, etc., are properly described as happening at a particular moment, while activities such as keep (a secret), hold (the enemy at bay), kick, hunt, listen, may last through a long period of time. (p. 51)
闘って勝った 旅立ち到着した 処置して治した 蹴って得点をあげた 耳を傾けると聞こえた 目を向けると見えた
これらのそれぞれにおいて、二つの事柄が行なわれたわけではない。行なわれたのは仕事のみ。
知覚動詞は競技者の語彙に属するのではなくむ しろ審判者の語彙に属する。(Ryle 1949 邦訳216頁)
達成や失敗は行為、努力、作業、遂行などではなく、(中略)ある行為、努力、作業、遂行がある結果をもたらしたという事実である。(Ryle 1949 邦訳214頁)
seeという動詞は、私の生涯の物語の下位区間を表示しない。(Ryle 1960 邦訳169頁)
状態 states | 達成 achievements | 活動 activities | 到達 accomplishments |
---|---|---|---|
進行形なし | 進行形あり | ||
How long 型 | At what moment 型 | For how long 型 | How long did it take 型 |
know believe love desire want hate dominate |
recognize find reach the hilltop win start/stop/resume be born/died |
run eat swim push a cart |
run
a
mile eat an apple paint a picture grow up recover from illness |
原理的には 時間的限界なし | 時間的限界あり |
状態 states |
活動 activities |
遂行 performances |
---|---|---|
真正の進行形なし | 真正の進行形あり | |
understand know believe hope intend love mean fear exist be able be blue perceive be taller than |
listen to keep a secret weep laugh talk enjoy live at Rome stroke ponder on |
discover learn find kill convince grow up think out build a house wash cut lift decide whether |
状態動詞 | A φs ⇒ A has φed | エネルゲイア 動詞 |
活動動詞 | A is φing ⇒ A has φed | |
遂行動詞 | A is φing ⇒ A has not φed | キネーシス 動詞 |
He loves her ⇒ He has loved her He is walking ⇒ He has walked He is building a house ⇒ He has not build a house
ライル | ヴェンドラー | ケニー | ||
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行 為 論 の 存 在 論 的 カ テ ゴ リ | |
傾向性 | 状態 | 状態 know |
|
達成 | keeping型 | 活動 keep a secret |
||
got it型 | 達成 |
遂行 cure |
||
仕事 | 到達 (got it型の達成+仕事) |
|||
進行中の到達 | 進行中の遂行 |
Taro was reading when I entered. (私が入ったとき太郎は本を読んでいた。)
主文: 活動、未完成 imperfective
副文: 達成、完成 perfective
The tree is falling down. 過程(未完成) The tree fell down. 出来事(完成) I saw him cross the street. 出来事(完成) I'm hearing buzzing sounds. 過程(未完成)
※知覚自体は行為者性の発揮、つまり行為ではない。
x は期間yのあいだφした ⇒ yの任意の時点においてxはφした
事象動詞「φする」について 「xはφしていた ⇒ xはφした」 が成り立たない。
個別者(particular) | 非個別者(non-particular) | 個別者? |
---|---|---|
物的対象
一体の銅像 |
空間的素材
銅(非可算) |
空間的境界
銅像とその周囲を区切る |
到達/発展 (非単時的出来事) 学校まで歩いたという一回の到達 |
時間的素材 歩くという活動/過程 |
時間的境界 学校まで歩いたという到達とその前後を区切る 出発と到着 |
先述のMourelatos (1978)は、空間的素材と時間的素材のアナロジーを強調した初期の代表的文献の一つでもある。
ひとは、ものを見ているときに同時にまた見ておったのであり、思慮しているときに同時に思慮しておったのであり、思惟しているときに同時に思惟していたのである。これに反して、何かを学習しているときにはいまだそれを学習し終わってはおらず、健康にされつつあるときには健康にされ終わってはいない。(中略)[瘠せること、学習すること、歩行すること、建築することなど]は運動であり、しかもたしかに未完了的である。というのは、ひとは歩行しつつあると同時に歩行し終わってはおりはせず、またかれは家を立てつつあると同時に立て終わっておりはしない[からである]。あくまで邦訳は参考。
エネルゲイア 現実態 |
キネーシス 運動 |
see be wise understand be happy live well be pleased |
reduce become healthy learn walk(to somewhere) build a house move |
エネルゲイア | 進行中 | 完全(完了) |
---|---|---|
キネーシス | 進行中 | 不完全(未完了) |
1950年代のオックスフォードの哲学者たちは動詞タイプの区別に関心を示したが、この関心が演習でのキネーシス/エネルゲイアの区別に関する議論に端を発するというのは、まったくありそうなことである。しかし残念なことに、ある時期、アリストテレスの区別は遂行(到達か達成のどちらか)と活動に関するケニー=ヴェンドラーの区別を予示しているという見解が広まってしまった。だが、ケニー=ヴェンドラーの区別への同化をやめるよう、当初から研究者たちに警鐘を鳴らしていたはずの明快な特徴が、アリストテレスの区別にはある。(Mourelatos 1993)
アクリル ヴェンドラー |
ケニー | ライル | グラハム ムレラトス |
|
エネルゲイア | 活動 | 活動 状態 |
got
it
型の達成 (keeping型も?) |
状態 |
キネーシス | 到達 | 遂行 | 仕事 | 遂行 (出来事) |
(ライル=)ヴェンドラー=ケニー | ムレラトス(1993) | |
エネルゲイア | atelic | autotelic |
---|---|---|
キネーシス | telic | heterotelic |
知覚的活動 | 知覚 | |
---|---|---|
行為者性の発揮/能動的 | 受動的 | |
探索型 | 非探索型 | |
look for watch out for listen (out) for |
look
at watch listen to |
see(見える) hear(聞こえる) |
(例) S listens to O ⇒ S hears O
アスペクト的カテゴリー | ||
listening out for O + hearing O | 到達(仕事+達成) | 道具的/telic |
listening to O | 過程 | 非道具的/atelic |
ただし、ケニー=ヴェンドラーと違い、クラウザーにとって活動は到達と過程の両方を含む。
クラウザーの議論は、ライルにおける仕事動詞の多義性にメスを入れているとも考えられる。
(口頭で)