socio-logic.jp

2011-10-03 掲載

『社会の科学』合評会

ルーマン『社会の科学』 このコーナーには、2011年08月07日に早稲田大学にておこなった二クラス・ルーマン『社会の科学』(邦訳: 合評会における配布資料を収録しています。
この頁には川山 竜二さんの配布資料を掲載しています。

このコーナーの収録物一覧 評者 川山竜二さん
  評者 関谷 翔さん
  司会 酒井泰斗さん

川山 竜二(筑波大学大学院 人文社会科学研究科)

総評
各論
I.科学システムの内部分化
II.科学の統一態と反省
III.技術・科学技術・応用研究(応用科学)をめぐる問い

総評

 ニクラス・ルーマンがおこなう科学の記述は,『社会の科学』だけではなく、様々な著書のなかでみつけることができる.ところが、ルーマンの「科学社会学」が社会学者の内部で浸透しているとは言いがたい.それは,一般にいうルーマンシステム理論の難解さ,社会システム理論と科学社会学との間を取り持つ言語と研究がないからなのだろうか.とはいうものの,社会システム理論とはいかないまでも,吉岡の議論や松本三和夫の「STS相互作用論」や藤垣裕子の「妥当性境界」,そしてKrhon&Küppersの科学の自己組織化の議論などはある.
 『社会の科学』では,科学は社会システムのなかで分出する機能システムであり,したがって科学的コミュニケーションは,社会的コミュニケーションであり得るとする.このことによって,科学を観察するのであれば,社会理論を意識せざるを得なくなる.また、そのような社会理論は科学システムにおけるコミュニケーションの産物であるという循環的構造のなかに取り込まれてしまうことになる.
 個人的に(誰もが思うことだが), 『社会の科学』では [1] 社会から観察した科学 [2] 科学システムの作動の一つであろう社会システム理論の言及 [3] 科学論の科学論という多くの要素が散りばめられているため,より難解に感じてしまうのだろう.それらをひとつひとつ解きほぐしていくことが必要であり,その知見を専門分野にいかに接続させていくかが今後の問題になるだろう.

各論

 私自身,科学的知識の組織化に関心があり、その方法論としてルーマンの機能分化概念を用いえないか検討した[それしかしていない].もっぱら焦点に当てたのは,専門分野であるがこの専門分野化の説明が様々な議論に応用可能なのではないかと考える.例えば,現在の科学(知識)は必ずどこかの学体系に属していなければならない.ある知識Aが物理学だとしたら,Aの知識はどこに属されるかという観察が必要とされる.そして,近現代社会以前から機能システムとされる科学以前から,科学のようなものは存在していたのであり,近現代科学の特徴が「専門分野という構造」に求められるのではないかと.そう考えるならば,「科学システムの内部構造=専門分野の機構が機能的分化的特徴をもつ仮定」と「社会システムの内部構造=機能分化」には一種の相関関係があるとも考えられる.
 さらに「専門分野」の議論で波及するのは「科学論」である.例えば,近現代以前の科学は神学ないしは哲学が最終的な審級となっていたが,科学システムではそうはいかない.「科学論」も様々な諸学と同じようないち専門分野としての位置づけとなる.「科学論」に関しては,一言で片付けることができないが「専門分野」との関連で言えば次のことが言えるのではないか.観察が区別を必要とするならば,まさに科学システムのなかでシステム分化した専門分野が確立することで,科学システムのなかで差異が生じ科学論は,観察する諸科学から距離をとり観察することができるようになったのではないか.などと考えている.

I.科学システムの内部分化

1.科学システムの内部分化

2.専門分野の分化形態を「環節分化」と語ること.

3.機能システムの反省と科学システムの関係

4.研究「プロジェクト」/プロジェクト連合

5.「自然諸科学/精神諸科学」

頁先頭↑

II.科学の統一態と反省

1.科学の統一性と分化

2.反省としての科学論

頁先頭↑

III.技術・科学技術・応用研究(応用科学)をめぐる問い

頁先頭↑川山竜二さん| 関谷 翔さん | 酒井泰斗さん