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このWEBページは、酒井大輔 著『日本政治学史』 の刊行一周年を機に開催するブックフェア 「日本政治学史からはじめる書棚散策」 をご紹介するために、WEBサイト socio-logic.jp の中に開設するものです。 本ブックフェアは、2025年12月~2026年1月に、紀伊國屋書店 新宿本店三階にて開催されます。フェア開催中、店舗では 選書者たちによる解説を掲載した24頁のブックレットを配布しますが、このWEBページには その内容を収録していきます。 なお、過去にも本フェアと同趣旨のブックフェアを開催しています。そちらの紹介ページもご覧いただければ幸いです:
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私たちの社会生活において政治とまったく無縁なものはありません。そうであるがゆえに、政治学は難しい学問です。政治学的関心は政治的関心とまったく無縁には成立しませんし、政治学の成果物は 多かれ少なかれ政治的な関心のもとで読まれます。そもそも政治的自由がなければ、政治学研究という営みそのものが不可能です。こうした事情は、およそどんな学問にも言えることではありますが、政治学には特にそれが強くあてはまります。本書『日本政治学史』は、学問が成立するための前提条件である「状況からの距離」を確保するのが難しいという基本的事情のもとで、しかし政治学を科学にしようと苦闘してきた日本の戦後政治学の歴史を描いたものであり、歴史を振り返ることで、社会に対する反省への手がかりを読者に与えようとするものです。
今回のブックフェアは、日本政治学史という この大きな広がりを持つテーマを書籍遊猟者たちにも利用していただこうという趣旨で企画したものです。この趣旨に沿って、「日米政治学史茶話会」 有志の皆さんを中心に、『日本政治学史』の中心的なテーマ8つから出発して、分野を超えない名著を中核とする選書を行なっていただきました(会については同書「あとがき」参照)。
小冊子を片手に、いつも立ち寄る書棚を違った眼で眺めたり、いつもは立ち寄らない棚に寄り道してみたりするために、このブックリストを利用していただけたら幸いです。(酒井泰斗)
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- まえがき――科学としての政治学の百年
- 序 章 本書の方法
- 第1章 民主化を調べる――占領から逆コースまで
- 第2章 英雄時代――講和独立から高度成長期へ
- 第3章 近代政治学の低迷と挑戦者――豊かな社会の到来
- 第4章 新しい流れ――一九八〇年代の断絶と連続
- 第5章 制度の改革――平成の時代へ
- 第6章 細分化の向かう先――二一世紀を迎えて
- 終 章 何のための科学
- あとがき
- 参考文献
- 主要人名索引
日本の政治学はいかなる問題意識を抱え、いかにして制度化されてきたのか。政治思想史から行動論、実験政治学に至るまでの多様な研究潮流を俯瞰しつつ、新たなバランス感覚のもとで日本政治学の歴史的展開を捉え直す一冊。
趙星銀(明治学院大学)
今日に至る日本政治研究を対象として〈科学としての政治学〉の軌跡を追い、「何のための政治学か」を問う書。
竹中英俊(編集者)
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| 高畠通敏集5(政治学のフィールド・ワーク) | 高畠通敏 著 | 2009 | 岩波書店 |
| 戦後政治と政治学 | 大嶽秀夫 著 | 1994 | 東京大学出版会 |
| 現代日本政治研究と丸山眞男 | 渡部純 著 | 2010 | 勁草書房 |
| アメリカ政治学研究 | 山川雄巳 著 | 1977 | 世界思想社 |
| 民主主義へのオデッセイ | 山口二郎 著 | 2023 | 岩波書店 |
| 日本政治研究事始め | 大嶽秀夫 著 | 2021 | ナカニシヤ出版 |
| 戦後日本の学知と想像力 | 前田亮介 編 | 2022 | 吉田書店 |
| 戦後日本と政治学史 | 熊谷英人 編 | 2025 | 白水社 |
| 日本政治学出版の舞台裏 | 岩下明裕・竹中英俊 編 | 2025 | 花伝社 |
| 科学ジャーナルの成立 | A. シザール 著 | 2024 | 名古屋大学出版会 |
| サイエンス・オブ・サイエンス | D. Wang, A. Barabási 著 | 2025 | 森北出版 |
| 科学を計る | 窪田輝蔵 著 | 1996 | インターメディカル |
学史は、学説の歴史であると同時に、研究にかかわる人間と社会の歴史である。とりわけ政治の学問である政治学は、政治への立ち位置において微妙な関係をはらむ。政治との関わり方如何はこの学問を動かし、その軌道を方向づけてきた。このことは、学史の読者に「研究する人」と社会への関心を要求する。>>解説文を開く/閉じる
「政治学の独立宣言」とも呼ばれる丸山眞男「科学としての政治学」(『政治の世界 他十篇』収録、初出1947年)は、科学的な政治認識の可能性や、学者の持つべき規範について語る戦後初期の檄文だ。そのインパクトの深さ・広さ・長さにおいて他に並ぶものがなく、現在に至るまで最重要文献の一つである。高畠通敏「職業としての政治学者」(『高畠通敏集5』収録、初出1970年)は「人はなぜ政治学者になるのか」を考える上で示唆に富む。半世紀経った現在との差を比べてみてもよいだろう。
日本政治学史の初期の古典として、大嶽秀夫『戦後政治と政治学』を省くことはできない。先行業績に対する切れ味の鋭さは随一であり、いま読んでも発見がある。渡部純『現代日本政治研究と丸山眞男』は、政治学史の構造や時期区分について理論的に捉えた、薮野祐三の『先進社会=日本の政治(1)』以来の著作であり、学史の全体像を提供する大きな役割を果たした。戦後政治学の栄養源であったアメリカについては、学説、学術運動、研究プログラムに至るまで、目配りの行き届いた山川雄巳『アメリカ政治学研究 増補版』の意義がいまでも薄れていない。
従来、研究者の自伝は必ずしも豊富ではなかった。「学者の生活記録が乏しく、またそういう形の資料をのこすことへの関心が低い」と丸山が書いたのは1968年である(「『一哲学徒の苦難の道』対談を終えて」)。ところが近年、政治学者の記録への意識が変わりつつあり、回顧録が続々公にされている。ここでは山口二郎『民主主義へのオデッセイ』と大嶽秀夫(酒井大輔・宗前清貞編)『日本政治研究事始め』のみ挙げておく。新たな時代を切り開こうとする研究者の息遣いを、ひしと感じることができるはずである。東京女子大学の丸山眞男文庫をはじめ、研究者の資料保存も少しずつ拡大しており、こうした記録への意識は今後も強まっていくだろう。
こうした中、政治史や思想史のトレーニングを受けた若手によって、学史の新たな語りが生まれている。例えば前田亮介編『戦後日本の学知と想像力』や熊谷英人編『戦後日本と政治学史』は、公刊物の外にも資料を求め、政治学者の新たな側面を語り直す意欲作である。これらはいわゆる記念論集(Festschrift)であり、昨今この主の書籍は意義が問われる傾向にあるが、学史研究にとって依然欠くことができない。
さらに、東京大学出版会に長年務めた編集者への聞き取りが、岩下明裕・竹中英俊編『日本政治学出版の舞台裏』である。「学問史ないし出版史において、未刊企画の記録もそれなりに意味を持つ」という考えから、ついに日の目を見なかった出版企画について多くが語られる。完成した刊行物のみで学史を理解することの危うさを教えてくれる。
学術メディアとしての本や雑誌への理解は、「研究する人」の行動を理解する上で有用である。アレックス・シザール(柴田和宏訳・伊藤憲二解説)『科学ジャーナルの誕生』は、科学ジャーナルのもつ矛盾的性格──「永続的なアーカイブであると同時にニュース速報でもあり、公共の知識保管庫であると同時に専門家だけのための領域でもある」──を歴史的に描き出す。私たちのよって立つ科学/学問の理念が、いかに脆い物質的基礎の上にあるか、そして現在も研究規範として生きているのかを考えさせられる。
最後に研究行動の定量分析。デジタル人文学といえば近年計量テキスト分析が伸長しているが、似て非なる分野として計量書誌学(Bibliometrics)がある。最近は科学の科学(Science of Science)とも呼ばれるが、その最近の話題書がDashun Wang, Albert-László Barabási(SciSci翻訳委員会訳)『サイエンス・オブ・サイエンス』として訳出された。書誌情報、著者情報などの指標を用いて研究行動のパターンや因果関係を探求するものであり、学史研究への応用可能性が大きい。古い本だが、窪田輝蔵『科学を計る』は引用分析の発展に貢献したユージン・ガーフィールドの歩みを辿るものであり、この手法のもつ意義と限界を知るために勧めたい。
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1 研究する人
1984年愛知県生まれ。名古屋大学法学部卒業。同大学院法学研究科修士課程修了。現在は国家公務員。専門は日本政治学史。。>>業績
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2 行動科学運動、プロデュース
会社員。大阪大学大学院理学研究科(物性物理学専攻)修士課程中退。関心領域は道徳科学史、社会科学方法論争史、行動科学史。>>業績
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3 大学史
明治大学政治経済学部兼任講師・聖学院大学政治経済学部政治経済学科非常勤講師。1986年生まれ。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士後期課程修了(博士(政治学)2018年)。>>業績
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4 ジェンダーと政治
広島市出身。名古屋大学大学院法学研究科教授。専門は政治学・政治理論。名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。>>業績
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5 経験的政治理論
1983年生まれ。関西大学政策創造学部教授。名古屋大学法学研究科博士後期課程満期退学。博士(法学)。名古屋大学男女共同参画センター研究員などを経て現職。>>業績
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6 行政改革と政治改革
名古屋大学大学院法学研究科大学院研究生。名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。修士(法学)。専門は政治学(戦後日本政治史、戦後日本政治学史)。>>業績
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7 政治過程1:有権者、メディア、市民社会
関西学院大学法学部教授(政治過程論、現代政治分析担当)。1965年生まれ。筑波大学博士課程社会科学研究科学位取得修了(博士(法学)1993年)。>>業績
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8 政治過程2:国家
明治学院大学法学部政治学科教授(日本政治論担当)。1962年生まれ。東北大学法学部卒、京都大学博士(法学)。弘前大学人文学部公共政策講座専任講師、助教授(当時)、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員などを経て現職。。>>業績
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| 会場 | 紀伊國屋書店 新宿本店 三階 G04棚(三階カウンタ前フェア棚)
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| 会期 | 2025年12月27日から2026年1月末まで |
| ページ | 誤 | 正 | |
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| はじめに | |||
| 02 | 中核的なテーマ7つ | → | 中心的なテーマ8つ |
| 2. 行動科学運動 | |||
| 07 | たとえばルーマンの『権力』では、 | → | たとえばルーマンの『権力』は、 |
| 8 政治過程1:有権者、メディア、市民社会 | |||
| 18 | 「右も左も陰謀論」と帰結 | → | 「右も左も陰謀論」という帰結 |
| 20 | 東日本大震災の教訓 D. アルドリッチ(飯塚明子・石田佑訳) | → | 東日本大震災の教訓 D. P. アルドリッチ(飯塚明子・石田 祐訳) |