このページは、論集 『在野研究ビギナーズ』 の刊行を記念して開催するブックフェア 「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」 をご紹介するために、WEBサイト socio-logic.jp の中に開設するものです。
またプロデューサーは別ですが、こちらも御覧ください: |
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このブックフェアは、荒木優太編著『在野研究ビギナーズ』の刊行を記念して開催するものです。
本書は、研究教育機関に所属せずに研究を続けている者を中心とする書き手15人が、自らの生活と研究との関わりを振り返って記した論集です。それはまずは、「大学を卒業した後でも学問を続けたい」といった意向を持つ読者へむけた実例集として企画されたものでした。しかし本書はそうした当初の想定以上の支持(と反発)を受け、私たち執筆陣は、目下驚きをもってこの事態を受け止めています。
これは、「在野研究」というキーワードが、自分で研究したいわけではない方にも、しかし自分に関係のあるものとして受け止められた ということなのでしょうが、それが どのようなことであるのか 私たちにもまだよく分かっていません。ともあれこの事態を踏まえ、このブックフェアでは、「在野研究」という鍵語から出発しつつも、それを超えて、かならずしも研究を指向してはいない書籍遊猟者たちにも向けて企画することにしました。具体的には「研究」という活動のなかから――調べ・考え・書き・集まり・伝えるといった――いくつかの契機を抜き出すとともに、そうした知的営みの環境のあり方への反省に資する諸分野の良書を紹介することを狙っています。
いつも立ち寄る書棚の中でリストの広がりを確かめたり、いつもは立ち寄らない本棚の前で立ち止まってみたり。そんなふうに、書棚をふだんと違った眼で眺めるためにこのブックリストを利用していただけたら幸いです。(酒井泰斗)
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9月上旬から10月まで |
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7月14日~10月7日[終了] |
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5月中旬~7月末[終了] |
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2020年02月~[終了] |
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2020年03月~[終了] |
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2020年03月~[終了] |
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2020年03月01日(月)~3月末 |
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2020年03月06日(金)~05月10日(日) |
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2020年03月01日(月)~3月末 |
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2020年02月10日(月)~03月15日(日) |
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2020年02月01日(金)~[終了] |
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2020年01月17日(金)~02月29日 |
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2020年01月10日(金)~2月29日(土) |
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2020年12月~[終了] |
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2019年12月末~[終了] |
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2019年12月14日(土)~2020年1月31日(金) |
※ が付された書籍は、解説文では触れなかったもののトピックに関連するものとして選者が挙げたものです。
をクリックすると書籍の紹介文が開きます。
木鐸社
ISBN 978-4-8332-2518-2
2017年 |
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有斐閣
ISBN 978-4-641-12596-4
2018年 |
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新曜社
ISBN 978-4-7885-1486-7
2016年 |
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オーム社
ISBN 978-4-274-50583-6
2016年 |
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誠文堂新光社
ISBN 978-4-416-11548-0
2015年 |
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本の雑誌社
ISBN 978-4-86011-418-3
2018年 |
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河出書房新社
ISBN 978-4-309-02708-1
2018年 |
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笠間書院
ISBN 978-4-305-70878-6
2019年 |
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ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1014-4
2016年 |
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亜紀書房
ISBN 978-4-7505-1579-3
2019年 |
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堀之内出版
ISBN 978-4-909237-41-5
2019年 |
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勁草書房
ISBN 978-4-326-10270-9
2018年 |
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みすず書房
ISBN 978-4-622-08682-6
2018年 |
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文化科学高等研究院出版局
ISBN 978-4-938710-56-9
2009年 |
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翻訳のダイナミズム時代と文化を貫く知の運動
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白水社
ISBN 978-4-641-12596-4
2019 |
編著には単著にはない魅力がある。現役で活動している在野研究者たちの知的生活のノウハウを書いてもらった『ビギナーズ』は編著によって、言い換えれば、複数の著者によって構築されている。具体的には14の論考にくわえ、3人のインタビューからなる。政治学、法学、哲学、文学、宗教学、昆虫研究、活字研究、妖怪研究など、様々な分野の研究者を呼びつつ、国会図書館司書、学校化批判論者、翻訳研究者のインタビューを収めた本書最大の達成は、一人の研究者の視角からは見えてこない多様な研究スタイル、そして在野観が生き生きと披露されているところにあるだろう。開く/閉じる
一口に研究といっても、一方には学術論文、さらには英語の査読論文を通す奴もいれば、他方には商業媒体で調べものの成果を世に問うたり、インターネットを駆使しながら知的発信をおこたらない奴もいる。そもそも専門領域の違いに応じて、個々人に課されるミッションはまるで異なる。いささか胡散臭い「在野」―とりあえずは大学に所属をもたないの意―についても同様だ。8時間労働×週5日の忙しさのなかで時間をなんとか捻出する働き者もいれば、ニートすれすれの人生博打感はなはだしいマイペース者もいる。同じ無所属だったとしても、当然、家族構成や性差、健康状態などで学知の見え方はずいぶん変わってくる。
本書が編著であるということは、言い換えれば、学問に対する様々な見え方、その先にある様々なアクセスを決して切り捨てることなく、その多様性自体を大きな財産として捉えようとする企図を意味している。多様だからなんだってんだ、そんなのただ拡散しているだけだ? そうではない。「色々ある」ということを知ること自体が、ややもすれば硬直的になりがちな学問との付き合い方に、柔軟な姿勢とほんの少しだけ豊かな選択肢を与える。
本書はだから、きれいに整理された一つのマニュアルよりもずっと実践的な、研究者サバイバルキットなのである。もしも鍛えられた読み方で全論考に目を通すのならば、生活習慣や思想がまるで違う執筆者のあいだに、いくつもの連絡線が引かれていることに読者は気づくはずだ。たとえば、矢印という表象文化の研究に取り組む伊藤未明と文学者と縁故のあった市井の人物の聞き取り調査をした内田真木は、ともに肩書きのおぼつかなさに頭を悩ませている。また、熊澤辰徳の昆虫研究と朝里樹の妖怪譚研究のあいだには一見なんの共通性もないようにみえるが、蒐集(コレクション)が大きな意味を持つという意味で、司書・小林昌樹がいう研究者とコレクターの近さへと読む者を導く。さらに、研究成果ではなく研究過程に目を向け、学会とは異なる集合を企図する酒井泰斗と逆卷しとねのあいだには、順接的な読み方だけでなく、東京と地方という地理的条件の差、持続的な学的共同体を目指すのか、それとも瞬間的な出会いに賭けるのか、といった目的意識と方法の違いがある。この論点は、後続する論考、地方の学的リソースを翻訳してアカデミズムの活性化を図ろうとする石井雅巳や、ビジネスとの連接によってアカデミズムの持続可能性を維持しようとする朱喜哲によってより深められる。
学問はもっと自由なものでいい。しかし、手放しの自由はあまりに漠然としすぎていて、しばしば人を混乱させる。意図せぬ仕方で「トンデモ」におちいってしまうことも珍しくない。本書で登場する諸々の活動記録は、直接の模範とするというよりも、実例を介して読者が己の知的生活をチューンアップするための一個の目安となるだろう。在野研究者は、なろうと思えば誰にでもなれる。最初は勝手に自称しているだけなのだから。そこからどんな道を歩くのかは各人が決めることだ。ようこそ、『ビギナーズ』の世界へ!(荒木優太)
図書館は無料貸本屋?! 初期の図書館に小説本はなかった? 出版業界とは仲が悪いの? 今とは違う、別の選択肢が図書館にありえたのではないか。150 年の歴史に、これからの図書館を考えるヒントを探る。
小林昌樹
本当かいな、といいたくなるぶっ飛びエピソード満載の『ホッファー自伝』ですが、原題はTruth Imagined…つまり最初っから嘘つきますよって感じがビシビシ伝わってくるわけです。ただ、そういうフカシ込みでテンションが上がるのがこの手の本を読む一番の醍醐味だと思うので、ぜひ手に取って頂ければ。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) December 13, 2019
作品社
ISBN 978-4-87893-577-0
2003年 |
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国文社
1973年 |
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学生社
ISBN 978-4-311-20216-2
1998年 |
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西日本新聞社
ISBN 978-4-8167-0810-7
2010年 |
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日本図書センター
ISBN 978-4-8205-5775-3
1999年 |
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生き物文化誌学会
ISBN 978-4-8122-0540-2
2004年 |
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晶文社
ISBN 978-4-7949-6278-2
1996年 |
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河出書房新社
ISBN 978-4-309-74052-2
2014年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-08110-0
1994年 |
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KADOKAWA
ISBN 978-4-04-192907-0
1996年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-08999-1
2006年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-08894-9
2005年 |
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講談社
ISBN 978-4-06-134022-0
1973年 |
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小学館
ISBN 978-4-09-389703-7
2006年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-06315-1
2006年 |
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宝島社
ISBN 978-4-8002-9692-4
2019年 |
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ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-08384-8
2018年 |
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ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-08385-5
2018年 |
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ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-06703-9
2013年 |
『ビギナーズ』は拙著『これからのエリック・ホッファーのために』の事実上の続篇となっている。通称『これエリ』は、かつて日本で活躍してきた在野研究者たちの人生と業績をコンパクトに紹介し、彼らのテクストから、いまなお示唆に富む「在野研究の心得」40項目を抽出した一書だ。開く/閉じる
在野研究の花形、エリック・ホッファーはその自伝のなかで、充実した研究生活のためには一日6時間×週5日以上働いてはならないという独自の労働法をあみだし、言語学者の三浦つとむは『文学・哲学・言語』のなかで、労働者哲学者ディーツゲンを引合いに出しながら、半日はガリ版印刷の仕事で生活費を稼ぎつつもう半日は研究に当てるという、(現代でいうところの)ワーク・ライフ・バランスを調整していた。在野研究者にとって結婚するかどうか、子供をもうけるかどうか、といった家族の問題もひときわ大きい。ホッファーは生涯独身を貫いたが、たとえば平山遺跡を発掘した考古学者の原田大六は、妻であるイトノに経済的に依存していた。反対に、女性史学を立ち上げた高群逸枝は、大恋愛をへて結婚した橋本憲三というパートナーのケアのなかでその仕事を完成させた。『火の国の女の日記』では「K」と表記されている。在野の困難もさることながら、女性であることから生じる様々な社会的障壁は、『ビオストーリー』第四号の民俗学者・吉野裕子へのインタビューにて語られた大器晩成型学問道が多くを物語っている。
人文知の一つの特徴は、現在のはやりすたりに安易に流されることなく過去に学んで未来に活かす時代横断的な足腰の強さにあろうが、このように具体的な研究人生を捉え直してみる大きなメリットは、私たちが抱く悩みにはかなり普遍性があり、一〇年、五〇年、一〇〇年単位ではあまり変わり映えしない点に自覚的になれるということだ。効用は二つある。一つは、いま抱いているかもしれない不満や焦燥感は決して個人的なものではなく過去の在野研究者の多くも感じていたものであり、孤独感をこじらせることなく自分の研究ペースに向き合えるということ。もう一つは、障壁のミクロな次元での突破という方向もふくめた在野研究の戦略を、精緻に練れることだ。在野ならではの障壁を解消するには、ミクロ(個人的工夫)とマクロ(社会政策)、そのあいだに広がるグラデーションを正確に見極めなければならず、これに失敗してしまうと、本来はマクロで取り組むべきものをミクロ問題に還元してしまったり、ミクロにできることがあるにもかかわらずマクロ的対応策の展望が暗いために無能感にひたったりする。
編集者から民俗学者に転身した谷川健一は『独学のすすめ』のなかで、巨人・南方熊楠を筆頭に偉大な民俗学者を紹介しているが、考古学にならびに郷土史をふくめた民俗学において在野の学者が数多く活躍してきた歴史のなかには戦略のための大きなヒントがあるだろう。専門を異にしても、民俗学的アプローチという仕方で活かせる場面は意外に多い。赤松啓介は柳田国男の「常民」(一般大衆のようなもの)を批判して『非常民の民俗文化』のなかでそのカテゴリーから外れる「非常民」の概念を提出したが、生々しい差別や性を前提とする研究的姿勢は、アカデミズムの追従にならない在野ならではの独自なアングルに資するかもしれない。
また、大学危機によってギスギスしているからこそ研究者同士の互助会的な試みは再評価されて然るべきだ。そのとき、廣松渉の寺子屋塾の門を敲き、その延長線上で自身も団地の集会室で勉強会を開催していた小阪修平の『思想としての全共闘世代』や、私塾・小室ゼミにて数多くの有能な学者を輩出した小室直樹の伝記などは、直接の参考になるに違いない。過去は生半可な現在よりもずっとアクチュアルなのである。(荒木優太)
「人文学? 文学部でやってるようなことでしょ」とゆるい認識でいる方にこそ、人文知の系譜と射程がどれだけの広がりと長さを持つのかを知るために、ベルリン大学でエンチクロペディーを講じたフィロロギストの巨星、アウグスト・ベックの紹介者でもある安酸敏眞氏のこの書が最適です。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 21, 2020
この書ともに(いずれも現在入手困難ですが)、アウグスト・ベック『解釈学と批判: 古典文献学の精髄』と、安酸敏眞『歴史と解釈学: 《ベルリン精神》の系譜学』があれば鬼に金棒でしょう。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 21, 2020
読書猿さま。
— 知泉書館SNS (@chisensns1) January 27, 2020
この度は有り難うございました。
おかげさまで『人文学概論』(増補改訂版)の注文が急増し,在庫の70余部が2日でなくなりました。
現在増刷中です(2月7日出来予定)。
ご予約の方から
『「読書猿」さんが紹介されていて初めて知った』
と伺ったので,取り急ぎ御礼まで。
知泉書館より
本書は、研究者に限らず、以下の「言い訳」に心当たりのあるひと全員にお勧めです。
— Fumi (@inflorescencia) December 20, 2019
「まとまった時間さえとれれば、書けるのに」
「もう少し分析しないと」
「文章をたくさん書くなら、新しいコンピュータが必要だ」
「気分がのってくるのを待っている」 #2019_bookfair https://t.co/XKHwOgCSwT pic.twitter.com/K0oeMUcwPl
読書猿のくるぶしさんによるブックレビュー。原著である “How to write a lot” 前半のポイントがぎゅっと凝縮されています。 #2019_bookfairhttps://t.co/qghsUa407g https://t.co/BgnaocoHbQ
— Fumi (@inflorescencia) December 21, 2019
企画のかなり最初の段階で「今度のアイデアの本、人文書にしていいですか?」という投げかけに二つ返事で応諾してもらったところから『アイデア大全』という実用書は始まりました。
— 明石書店 (@akashishoten) December 26, 2019
人文の知が、もともと実践知の系譜に連なることを、知っている人は(多分戦略的に)口にしなくなり、そのせいもあって
フェーベックやペレルマンらの法理学におけるレトリック研究や、イエイツやロッシにはじまる記憶術研究のように、脚光があたる機会にも恵まれませんでした。
— 明石書店 (@akashishoten) December 26, 2019
しかし、みんなが忘れたもの、忘れたいものを覚えておき、必要なら掘り起こして、今現にあるのとは違う可能性を示すことこそ、
毛根を伸ばす先は古代弁論術に限らず、科学技術、芸術、文学、哲学、心理療法、宗教、呪術にまで広げられました。こうした遠い異分野の中に離れたものを結び付けることもまた、ヴィーコがインゲニウムと呼び、カイヨワが「対角線の科学」と呼んだ、人文知の伝統から得られたものです。
— 明石書店 (@akashishoten) December 26, 2019
ベレ出版
ISBN 978-4-86064-236-5
2009年 |
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名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0661-3
2011年 |
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近代科学社
ISBN 978-4-7649-0382-1
2009年 |
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University of Chicago Press
ISBN 978-0-226-43057-7
2018 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-100624-0
1981年 |
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文一総合出版
ISBN 978-4-8299-1177-8
2010年 |
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日本実業出版社
ISBN 978-4-534-05647-4
2018年 |
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KADOKAWA
ISBN 978-4-04-192919-3
2007年 |
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無明舎出版
ISBN 978-4-89544-467-5
2007年 |
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駿台文庫
ISBN 978-4-7961-1618-3
2004年 |
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講談社
ISBN 978-4-06-158961-2
1991年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-101820-5
2005年 |
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勉誠出版
ISBN 978-4-585-23061-8
2018年 |
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インパクト出版会
ISBN 978-4-7554-0179-4
2008年 |
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みすず書房
ISBN 978-4-622-08559-1
2016年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-06870-5
2016年 |
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勁草書房
ISBN:978-4-326-19978-5
2019年 |
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勁草書房
ISBN:978-4-326-19979-2
2019年 |
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PHP研究所
ISBN 978-4-569-62162-3
2002年 |
選書の中から。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) December 25, 2019
小松貴『裏山の奇人』。野に在った博物学者、南方熊楠の再来か、ともいわれる若き著者の自伝。帯が全て。
小さな虫を中心に、知られざる生き物の姿を見いだす様子が語られ、身近な場所に多くの発見が眠っていることが伝わる。
サブカル要素を取り入れた文体が独特で惹き付けられます。 pic.twitter.com/bBoUFXy5Yp
しかし奇妙なもので、何かを集めて分類し、体系立てて整理すると、なんでも博物学のようになってくる(この団体には博物学者の荒俣宏氏や、建築史学家の藤森照信氏もいる)。学問のつもりがなくても、気づけば学問の形になっている。この「呪縛」はかなり強固だ。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) December 31, 2019
自分で研究の看板を掲げる、には、この路上観察学や、最近だと石井公二『片手袋研究入門』などが当たるだろう。ちなみに片手袋研究は選書してから知ったが、もう少し早く知っていればリストに入れていたかもしれない。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) December 31, 2019
特に博物学は超強力な枠組みで、似たものを一定以上集めて分類すると大概博物学とみなすことができる。こんなに危険な学問があろうか。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) December 31, 2019
敵から逃れるにはまず敵を知るべし。この本を読むとしかし、町中に研究対象が沢山あるように見えてくる。かえって敵の術中にはまってしまうような、大変危ない本。
ISBN 978-4-87378-807-4
2003年 |
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ISBN 978-4-486-01999-2
2015年 |
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ISBN 978-4-622-07757-2
2013年 |
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アストラ
ISBN 978-4-901203-50-0
2012年 |
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ISBN 978-4-7601-5007-6
2019年 |
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ISBN 978-4-8299-7217-5
2017年 |
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ISBN 978-4-7699-1575-1
2015年 |
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ISBN 978-4-486-01769-1
2007年 |
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ISBN 978-4-320-12234-5
2009年 |
どこかに出かけて「何か」を見て集めるというのは、知的好奇心をくすぐる楽しみだ。時には、個人的な興味からの観察や収集がきっかけで学問がはじまることもある。
特に生物学は観察から始まった学問といえる。クリフォード・ドーベル『レーベンフックの手紙』を読むと、一人の織物商人が自作の顕微鏡で観察した記録を手紙に書いたことから微生物学がはじまったことがわかる。今から約300年前の話だ。開く/閉じる
また中島淳『湿地帯中毒』、小松貴『裏山の奇人』は、どちらも野に出てまだ見ぬ生き物を追う研究者の自伝だ。対象とするフィールドや活動スタイルは異なるが、生き物を見つけて観察・採集する魅力が伝わってくると同時に、そこから研究者となるまでの道のりを辿れる。地道な観察や採集に支えられている基礎生物学の世界に触れて、身近な自然を見る眼が変わる二冊だ。
もう一つ、観察からはじまった重要な分野に天文学がある。ティモシー・フェリス『スターゲイザー』は、宇宙の魅力にとりつかれて天体観測をする人々を描いたドキュメンタリー。アマチュアすごい、という話だけでなく、プロとの軋轢も含めた天文愛好家の姿が描かれた力作。やや専門的だが、読み物として長い夜のお伴にも。
世にある多様な事物は何でも観察対象になる。誰も見ていない対象を違った視点でアプローチすると、新たな発見が生まれることにつながる。赤瀬川原平他『路上観察学入門』では、考古学に対して、現代の事物を対象にした「考現学」という思想を踏まえ、街中の少し変なものを集めて人間活動のミクロな痕跡をたどる。また沢田佳久『醤油鯛』は、パック寿司に入っている醤油入れを集めて分類し、魚類図鑑を模してまとめた一冊。研究か否かという線引きを考えるより、純粋に面白がることが大切と感じられる一冊だ。さらに山下泰平『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』では、ネットの海で大量に公開された歴史的資料を読んで「遊んでいる」うちに発見した「明治娯楽小説」という忘れられた文学ジャンルを面白おかしく紹介している。ネット時代の新しい古書蒐集の形だが、決して研究書ではなく、あくまで明治のエンタメ小説の紹介本だという。それにしては内容が濃い。
さていよいよ出かけよう、というその前に、「道具」を携えておくと観察や収集の深みが増す。特にカメラは記録にも観察にも役立つので、ノートと合わせて持っておくべきだ。さらに少しの工夫を凝らすと、日本自然科学写真協会『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る』のように「見えない小さな世界」を写すこともできれば、鈴木文二他『あなたもできるデジカメ天文学』にある天文観察のツールにもなる。また発見の宝庫である生き物や岩石などの自然史標本の集め方、活用法をやさしく解説した本として、大阪市立自然史博物館『標本の作り方』がある。さらに京都大学フィールド情報学研究会『フィールド情報学入門』は、自然科学や人文科学の本格的なフィールドワークの様々な手法を紹介している。研究を志す人はもちろん、個人的に観察や採集を楽しむ人も、プロの技術を知ることでものごとの着眼点が変わり、観察の仕方や収集物の活用の幅が広がるだろう。
街中にも森林にも驚くほど沢山の観察対象がある。子どものように石をめくれば違う世界が見える。自分だけの「眼」をもって野に出て、気になるものに光を当てれば、身の周りの見えかたはガラッと変わるはずだ。(熊澤辰徳)
SNSに投稿された虫の写真から新種が見つかるくらい、まだまだ謎多き昆虫の世界。観察や採集をとおして昆虫を見る「目」が変われば、きっと新発見につながります。
写真家による美しい虫の拡大写真も満載。
熊澤辰徳
オーラルヒストリーは「下からの歴史history from below/ bottom-up history」を書く手段にもなっていく。変化したというよりも、そもそも異なっていたものが、どちらも口述の資料を使って歴史を書く点で共通していたために「オーラルヒストリー」と名乗ったという方が正確かも知れない。
— 明石書店 (@akashishoten) January 1, 2020
語られた過去の情報と、聞き手がすでに知っているそれが違うとき、聞き手はどうすべきだろうか。「実際は違います」と伝えるのか、それとも「あなたのおっしゃる通りです」と伝えるのか。もし後者を選ぶなら、そう答えた後に何を書くべきだろうか。本書は、
— 明石書店 (@akashishoten) January 1, 2020
本書はそのような方法上の問題を、著者自身の調査体験とオーラルヒストリーの叙述から解き明かしている。と同時に、本書はまた、中部イタリアと南部アメリカの労働者階級が、誰に、いかにして敗北したのかを、切なくなるほど鮮やかに描いた歴史書でもある。著者はおそらく、
— 明石書店 (@akashishoten) January 1, 2020
その意味でも、本書はオーラルヒストリーとは何かを問い、何を成せるかを示す1冊だ。
— 明石書店 (@akashishoten) January 1, 2020
文藝春秋
ISBN 978-4-16-714708-2
2008年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-602303-4
2018年 |
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ころから
ISBN 978-4-907239-33-6
2018年 |
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大月書店
ISBN 978-4-272-52086-2
2013年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-08296-1
1996年 |
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北大路書房
ISBN 978-4-7628-2561-3
2007年 |
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ハーベスト社
ISBN 978-4-86339-015-7
2009年 |
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医学書院
ISBN 978-4-260-01549-3
2012年 |
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ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1079-3
2016年 |
誰かに話を聴きたいとき、誰に、どういうふうに話を聞けば良いのか。聞いた話をどうやってまとめていけばいいのか。調査をしてから論文執筆を行うまでの研究者の苦労や工夫が具体的なエピソードと共に紹介されている社会調査の入門書です。指定の論文と合わせて読むことで、論文の執筆過程を追体験できます。
團 康晃
本書には、会議運営のミスや教訓について随所に出てきます。組織の運営側にいる方には是非読んでほしいですし、感じるところがあるのではないかと。
— Daisuke Sakai (@monogragh) December 26, 2019
帯にある「座長必読」「委員必読」「事務局必読」「国民必読」という文句は嘘ではありません。#2019_bookfair
本書はよく売れたらしく、シリーズ化して続刊が「3」まで刊行されてます。そういう意味でも政治学本として異例です。#2019_bookfair
— Daisuke Sakai (@monogragh) December 26, 2019
記号番号の付番方法という「これ、重要なのか?」と思えるような技術的な行政文書の山から、クリアな歴史分析をひきだす本書の射程を見てみてください。
— Daisuke Sakai (@monogragh) January 21, 2020
ミクロな行政活動への解像度の高さに、実務家ほど面白く読めると思うのですよ。
『番号を創る権力』はすでに学術的な賞を受賞しており、政治学界隈では高い評価を得ています。この本がもっと実務家に読まれるといいのではないかと。
— Daisuke Sakai (@monogragh) January 21, 2020
青弓社
ISBN 978-4-7872-3332-5
2011年 |
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日本評論社
ISBN 978-4-535-00404-7
1975年 |
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ぎょうせい
ISBN 978-4-324-10388-3
2018年 |
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ぎょうせい
ISBN 978-4-324-09195-1
2011年 |
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有斐閣
ISBN 978-4-641-13148-4
2013年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-101905-9
2007年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-431288-8
2011年 |
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有斐閣
ISBN 978-4-641-13169-9
2014年 |
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東京大学出版会
ISBN 978-4-13-036272-6
2019年 |
ああ、国や自治体の作成した文書を読むことになった―。読書や調査研究を進める中で、そういう場面に出会うこともあるかもしれない。もし、読者が行政文書に目を通すのが好きでたまらない「通」だというなら、以下のブックガイドは不要だろう。だが、カタいお役所言葉で書かれた文章は、普通はとっつきにくい印象を与えるものだ。―というより私自身、この種のものは仕事の外ではできれば避けたい。なにより読書として楽しくはない。楽しくないテキストにつきあう時こそ、手引となるガイドが必要だ。 開く/閉じる
まずは手始めに、文書の入手から。瀬畑源『公文書をつかう』は、行政文書を「つかう」歴史研究者の立場から、公文書管理制度を検討した本だ。実務者向けとは一味違う視角から、公文書管理の歴史と現在について見取り図を提供する。
次に、行政文書の読み方について。これは一筋縄にいかない。第一に、多くは法令上の用語・テクニックの体系に統制されて記述されている。表現のわずかな差によって、権力の発動たる行政活動が可能になったり、ならなかったりする。この「霞が関文学」に習熟するために、新米の法制官僚が脇において読む体系書がある。語彙については林修三『法令用語の常識』、文法については法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務 第2版』と礒崎陽輔『分かりやすい法律・条例の書き方 改訂版』が手堅い。これらはいわば「霞が関の隠れたベストセラー」だ。
第二に、行政文書は当然ながら、政府の法解釈に基づき議論が展開される。この法解釈は、法令のほか通知、閣議決定、答申、報告書などの各種リソースに事実上支えられている。個別法については(しばしば所管省庁が刊行する)逐条解説書があるので、ここは阪田雅裕『政府の憲法解釈』のみ挙げよう。
第三に、行政文書は政治過程の中で生まれる。審議会の報告書がどのように生まれるかは、森田朗『会議の政治学』で追体験できる。同書は政府の審議会に多数参加してきた、著者ならではの審議会運営の記述的分析だ。また、国会・政党と行政の関係(政官関係という。)の全体像を把握するには飯尾潤『日本の統治構造』、国会については大山礼子『日本の国会』がいまだ基本書だ。意外に知られていない国会制度については、浅野一郎・河野久編『新・国会事典 第3版』があると心強い。
最後に、行政文書を利用した最近の好著を紹介しよう。羅芝賢『番号を創る権力』は日本のマンナンバー制度を始めとした、番号制度の重厚な比較歴史分析である。医療保険の被保険者記号番号の付番方法といった、ミクロな行政活動への解像度の高さに読者は舌を巻くはずだ。天気予報の行政史を扱った若林悠『日本気象行政史の研究』も印象深い。気象行政というテーマの興味深さに加えて、セオドア・ポーター『数値と客観性』の枠組を援用した同書の分析は、科学史・科学社会学的な関心をひく面白さがある。いずれの本も、随所に資料入手の苦労がにじみ出ている。
これらを通して、行政文書の山がそれなりに秩序立って見えてきたとすれば、その魅力にはまる第一歩だ。(酒井大輔)
18世紀に登場したブリタニカやディドロたちによる『百科全書』の前にも、事典やそれに類するレファレンス書はもちろん存在しましたが、実はこの分野は、まださほど研究が進んでなくて、研究者諸君、未開の沃野が広がってるよ、というのが「Encyclopedia 」という項目 の大雑把な内容です。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 26, 2019
ブレアの師匠筋にあたるアンソニー・グラフトンは、インテレクチュアル・ヒストリーという研究分野を英語圏に紹介し多くの研究者を育てた人物です。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 26, 2019
『テクストの擁護者たち』という邦訳もある本が有名ですね。https://t.co/ueY5tbyvL9
帯にいろいろ危ないこと(合理性しね、論証いらね、とか)が書いてありますけど、やっているのは発想法を再び人文知の系譜につなぎ直すことです。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 31, 2019
インゲニウムは、『僕のヒーローアカデミア』にそういうキャラが出てきますが、原義は生まれながらの才能、天賦の才。エンジンの語源にもなった言葉です。発想法に寄せるなら天啓、ひらめきですね。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 31, 2019
この本を知って『アイデア大全』の試みが決して孤立したものではないと思いました。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 31, 2019
Lonesome no more(もうひとりじゃない)!
我々は植物の形と効能が何の関係もないことを既に知っているし、メタファーの乱用がいかに人文諸学をトンデモ化したかも覚えている。ロイヤル·ソサエティがレトリックの使用を禁じたのも宜なるかな。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 31, 2019
発想法は、つまるところ間違える方法です。そうして生まれた奇想が正しいことは期待できない。そして/しかし、この間違えることこそが、我々の考えることのはじまりです。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) December 31, 2019
ウォーレン·バジル卿の口説き文句を借りるなら
「アダムとイブが間違えなかったら、 私たちは生まれていなかったよ」。
本居宣長「うひ山ぶみ」全訳注
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講談社
ISBN 978-4-06-291943-2
2009年 |
独学大全
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ダイヤモンド社
2020年刊行予定 |
本を読む本
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講談社
ISBN 978-4-06-159299-5
1997年 |
問題解決大全
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フォレスト出版
ISBN 978-4-89451-780-6
2017年 |
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平凡社
ISBN 978-4-582-76667-7
2009年 |
ISBN 978-4-622-00716-6
1971年 |
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記憶術全史―ムネモシュネの饗宴
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ISBN 978-4-06-514026-0
2018年 |
社会科学のためのモデル入門
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ハーベスト社
ISBN 978-4-938551-18-6
1991年 |
こころざす
生きることや考えることと違って「研究」はそう思い定めて開始される。本居宣長『うひ山ぶみ』は、学問の道に分け入ろうとする初学者に本居宣長が与えた「物まなび」のあり方と心構えを記したもの。
「独学」という語は「研究」より広く、教師なしの自習から独立研究家の営為まで含んでいる。読書猿『独学大全』は、条件も準備も整わないうちに「物まなび」の中に飛び込んだ、あらゆる種類の独学者を支援する書。開く/閉じるあつめる
学ぶにしろ考えるにしろ、ある段階を過ぎれば、誰かに教えられた一冊に対して行う「点の読書」では足りなくなる。アドラー『本を読む本』は読者が自分のテーマに基づき複数の書物を読み合わせるシントピカル読書を到達点とする。
思考の材料は自己の外にのみ求められるのではない。自分の内からそれらを引き出す発見=発想の技法を古今東西の知的営為から集成した読書猿『アイデア大全』『問題解決大全』は元は一冊として構想されたもの。むすびつける
我々の思考は真空で行われるのでない。例えばファーガソン『技術屋の心眼』は、エンジニアの問題解決が機構や形状といった形で古来から綿々と受け継がれた共通資産を組み合わせることと、現場の経験による不断の修正の往復で支えられていることを明らかにする。
クルティウス『ヨーロッパ文学とラテン中世』は同じことを文学・芸術の分野で実証する。さまざまなトポス(定番の言い回しやイメージ)が、どのように受け継がれていったか具体的な作品・箇所を示しつつ、幾筋ものトポスの継承の糸がヨーロッパという文化共同体を編み上げていくさまを示して見せる。せいりする
覚えたいものをあらかじめ用意した
記憶の場所 に結び付けることを核とする記億術は、新世界と古典の発見や印刷術等によって生じた大量の知識を扱う技術として流通し出したルネサンス期に流行した。桑木野幸司『記憶術全史─ムネモシュネの饗宴』はこの時期の記億術を紹介した決定版ともいえるもの。
ブレア『情報爆発』は、書き込みや抜き書き、書物のノンブル、目次、索引、そして事典といった情報技術が同じ情報爆発に対処するために導入された経緯を明らかにし、知的営為の技術の連続性を明らかにしてくれる。みたてる
研究は妄想ではない。アカデミアに承認されるためには、研究の意義と正当性を論証し、同業者のレビューに耐えなくてはならない。しかし論証の域内で知的営為が止むわけではなく、ヒトはその外側でも学び考えることを続けている。グラッシ『形象の力』は古代レトリックから受け継がれる論証知以外の知的伝統を擁護し、その再統合を意図したもの。
レトリックは強力だが危うい。対象のある側面に光を当てるがそれ以外の部分を退かせ見えにくくする。しかし同じことは理論モデルにも言える。モデルから様々な推論を導き出せ我々の認識を拡大し得るのは、モデルが元の現象から多くを取り落としている故だ。レイブ&マーチ『社会科学のためのモデル入門』は、複雑な社会現象を相手に、そんなモデルとうまく付き合うための汎用の取説である。(読書猿)
有斐閣
ISBN 978-4-641-07649-5
2001年 |
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講談社
ISBN 978-4-06-216636-2
2010年 |
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慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2527-7
2018年 |
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慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2177-4
2014年 |
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丸善出版
ISBN 978-4-621-08914-9
2015年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-100624-0
1981年 |
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筑摩書房
ISBN 978-4-480-09526-8
2014年 |
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産業図書
ISBN 978-4-7828-0211-3
2006年 |
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慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-1960-3
2012年 |
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有斐閣
ISBN 978-4-641-12611-4
2019年 |
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日本評論社
ISBN 978-4-535-52162-9
2016年 |
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勁草書房
ISBN 978-4-326-00033-3
2009年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-102373-5
2016年 |
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日本評論社
ISBN 978-4-535-57475-5
1979年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-415092-3
1959年 |
論文を読むことが巨人の肩の上にのって彼方を見渡すことだとすると、論文を書くことは、巨人の一部になって誰かをその肩の上にのせることだ。
ルールとフィクション
研究は、新規性を含む正しい主張を、他者も検討できるような仕方で提示し防御せよとの規範のもとで行われるゲームである(『在野研究ビギナーズ』205頁)。新規性や正当性は、研究者共同体の知的蓄積に照らして判断される。その意味で、論文執筆は個人的であると同時に協働的な営為を伴う。開く/閉じる
大村敦志ほか『民法研究ハンドブック』は、論文執筆のモデルとして、研究者個人と学界の相互作用を示す。そして、執筆前の構想段階と公表後の反響(が芳しくないこと)を受け止める段階において、共同体への貢献という視座が大切だと教えてくれる。民法学という領域の特殊性があってもなお参照する価値がある書籍だ。伊丹敬之『創造的論文の書き方』も、読み手を意識することの重要性を様々なアナロジーを用いて語る。また、深遠で大きな研究課題を一人で一度に解く必要がないことも示唆されており、少し肩の力を抜くことができる。
躓きの石と妨げの岩
論文は、今はまだない新しい知見を読者に伝えるために書く。だから「光り輝くゴールなんてもちろんない。周囲はどの方向も真っ暗闇で、自分が辿ってきた道以外になにも見えない。たとえ飛躍的に進むことができて、なにかの手応えを感じても、そこには『これが正しい』という証明書は用意されていない。それが正しいことは、自分で確かめ、自分に対して説得する以外にない」(森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』)。
この道筋を探索する手引きとして、河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』が好適だ。ポール・J・シルヴィア『できる研究者の論文生産術』は、闇に飲み込まれないよう、執筆サポートグループを作って精神的負荷を緩和すべきと提案する。これは、誤った前提や危険な飛躍に気付き改訂する契機としても機能するだろう。加えて、慶應義塾大学教養研究センター『学生による学生のためのダメレポート脱出法』は、陥穽を具体的に展開しており必読である。
そして、研究対象の権利への配慮、著作権、オーサーシップ等の研究(者)倫理に関しては、日本学術振興会『科学の健全な発展のために』でおさえたい。月下の門とマイスタージンガー
読者が必要とする情報を過不足なく示し、説得的にわかりやすく書くには、スタイルとテクニックを知っておくと有益だ。木下是雄『理科系の作文技術』は定番である。結城 浩『数学文章作法 推敲編』も、充実した各論とチェックリストを備え実践に役立つ。また、論証の明晰化のために、野矢茂樹『新版 論理トレーニング』で鍛えてもよいだろう。
ただ、平易さと緻密さがトレードオフになる場合もあり、悩ましい。井田良ほか『法を学ぶ人のための文章作法』は、術語と独自文法によって曖昧さや多義性を排そうとする法学の研究者と、誰にでも了解可能な表現を目指す文章指導の専門家による稀有な共著であり、豊富な添削例を示してくれる。
巨人を倒そうと外から一石を投じるのは愉しい。同時に、巨人の一部となって共同体の知見を着実に更新するのも面白い。巨人から学び、さらに先へと進めていく。それは、矮人が巨人を内側から倒す方法であり、広い意味での学恩に報いる過程である。(工藤郁子)
1960年の初版刊行以来60刷以上を重ねるライティング指南書の定番。
編著者岩淵悦太郎が投げかける総論「悪文のいろいろ」に対し、若手(当時)7人が「どうすればよいか」をテーマごとに説明する。巻末の「悪文をさけるための五十か条」は、そのまま壁に貼っておきたい。戦後国語改革の勢いが感じられる好著。
高橋さきの(翻訳家)
今日12/23が発売日、「#調べながら考える フェア - 09 翻訳する」リスト書影に挙げた新刊『トランスレーティッド』は、翻訳人間・高山宏の時には「本篇よりも面白い」と言われた解題の一大集成にしてその翻訳人生の総浚え。人文翻訳書を愛する者は必ず読め。 #2019_bookfair https://t.co/oxnFRqfb6b
— 大久保ゆう (@bsbakery) December 23, 2019
収録された解題はかつて『ユリイカ』で提示した案(本書では序として収録)をはるかに上回って九百頁超。しかし我々は彼を学魔とも超人とも呼ばずに第二第三の翻訳人間として続くべきだ。たとえ出版界にもアカデミズムにも在野にもその体力がもう残されていないとしても。 #2019_bookfair
— 大久保ゆう (@bsbakery) December 23, 2019
翻訳出版にとって大事な翻訳権の問題は、先年の著作権保護期間延長に至るまで幾度となく政治に翻弄され、戦時加算を含めて未だに解決していません。国・文化・言語・人をつなぐ翻訳は政治と無縁ではありえず、翻訳行為もまたそれに左右されます。翻訳と戦後を考える不朽の名著。ぜひ。 #2019_bookfair
— 大久保ゆう (@bsbakery) December 24, 2019
二十一世紀ポエジー計画
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思潮社
ISBN 978-4-7837-1602-0
2001年 |
岩波書店
ISBN 978-4-00-028552-0
2012年 |
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みすず書房
ISBN 978-4-622-03668-5
1999年 |
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晃洋書房
ISBN 978-4-7710-3102-9
2018年 |
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村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解
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NHK出版
ISBN 978-4-14-035127-7
2014年 |
朝日新聞出版
ISBN 978-4-02-264664-4
2013年 |
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河出書房新社
ISBN 978-4-309-41215-3
2013年 |
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シーエーピー出版
ISBN 978-4-916092-76-2
2007年 |
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白水社
ISBN 978-4-560-09685-7
2019年 |
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アルク
ISBN 978-4-7574-2860-7
2016年 |
ひとえに「翻訳する」といっても翻訳行為そのものが多様なのだが、なぜか翻訳関連書籍というと本邦では翻訳のコツや軽い裏話に終始しがちだ。
しかし本質的な論点を扱った「翻訳論」を取り上げるなら、詩人・野村喜和夫による『二十一世紀ポエジー計画』所収「ベンヤミンのひそみにならって」で語られた言語間・テクスト間の「間白の距離」を見出すあり方は、唯一無二と言っていい重要性があり、凡百の翻訳等価論を一蹴する(初出『現代詩手帖』一九九六年七月号を読んだときの衝撃たるや!)。さらに言語措定の恣意性を指摘する酒井直樹『日本思想という問題』が、翻訳者の「間白」を創り出す能力理解への有益な補助線となるだろう。開く/閉じるさらに翻訳論は(ベンヤミンを俟つまでもなく)訳者のあとがきや解題で多く現出するが、言ってみれば翻訳の「あとがきを書く」ことの成否が訳書の出来に相関する(ことがよくある)。高山宏『トランスレーティッド』は、かつて『ユリイカ』二〇〇五年一月号で紹介された幻の案がようやく成った新刊だが、のち一書一作になるもの書けずして何が人文書のあとがきか、とも思わせてくれる。
翻訳の実作業に関わる学究的文章は無類に面白く、「実務家の翻訳研究」なら、著作権エージェントとしての多年の活躍をもとにした宮田昇『翻訳権の戦後史』や、字幕翻訳者としてのキャリアのあと大学院博士課程で堅実な勉強と研究を重ねて生まれた篠原有子『映画字幕の翻訳学』は、一種の重厚なあとがきとして読み応え抜群である。
訳者あとがきはテクスト往還後の考察に耐えうるもの、衝撃を与えるものであってもよく、たとえば『村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解』と柴田元幸『翻訳教室』を合わせ読むと、一テクストの「原文→英訳→再翻訳」の行き来から「翻訳の間白」が楽しめる。また無数の注で「完全読解」したはずの前書が、後書ゲストの英訳者ジェイ・ルービンの(文学好きなら気づいて当然の)一言で冒頭から粉砕されるのにも気づけよう。
そもそも訳すなら対象の内容だけでなく、書き方やレトリック・技巧などの初歩の理解が(うまく出来ないまでも)ほしい。人文書を訳す一学者に執筆経験がない、という事態はまずないと思うが、小説や記事の場合はままあったりする。高橋源一郎・柴田元幸『小説の読み方、書き方、訳し方』はその書く・読む・訳すのせめぎ合いが対談のかたちで覗けるし、小澤 勉『情報・技術・科学系分野のための翻訳の基礎技法』では「訳す前に書けるかどうか」が大きなテーマとして提示されている。
つまり翻訳行為を始めるには意識的になることが肝要で、むろん翻訳事象自体の様々なスタイルや戦略性を理解しておけるとなおいい。マシュー・レイノルズ/秋草俊一郎訳『翻訳』は最新の翻訳研究が反映された良質の入門書であるし、もし訳すに当たって翻訳業界のことを把握しておきたいのなら、実川元子『翻訳というおしごと』がよくまとまってわかりやすい。両書ともそのあと読める参考図書リストつきで、「ふつうの入口」としては絶好の書物だ。(大久保ゆう)
哲学者としては比較的冷遇されてきた九鬼周三の存在論理学は、偏執的といってもいいくらいのカテゴリー化に向かう記述スタイルをとりつつ、その形式化とは正反対に見える、「原始偶然」なる理念を手放さない。「実存」という訳語の発明者でもある九鬼の偶然の哲学の、
— 逆卷 しとね (@_pilate) December 26, 2019
けれどもそんな時間すらないわたしが本書を推すのは、哲学が決して孤独な思考実践ではないことを、本書が体現しているからだ。
— 逆卷 しとね (@_pilate) December 26, 2019
本書をめくればすぐにわかるように、九鬼はとある新カント派の哲学者と出逢い、ベルクソンと出逢い、シェリングと出逢い、ハイデッガー他さまざまな人たちや仕事と出逢って
宮野自身、福岡の哲学コミュニティや科研の同志たちとの途切れることのない出逢いと対話のあわいで、自身の哲学を練り上げていった。つまり出逢いの偶然性を精緻に分析する本書自体、出逢いの実践のたまものである。
— 逆卷 しとね (@_pilate) December 26, 2019
そして口に出してみればすぐにわかるように、この「であいのあわい」には宮野が終生こだわった愛がある。わたしは、宮野の言う愛とは「完全には」コントロールできないことへの愛であると思う。
— 逆卷 しとね (@_pilate) December 26, 2019
まだ出逢っていない人たちはさっさと『出逢いのあわい』に出逢って、人生を著しく狂わせてほしいと思う。そして狂おしい出逢いをいつまでも生きてほしいと思う。〆
— 逆卷 しとね (@_pilate) December 26, 2019
東京大学出版会
ISBN 978-4-13-010143-1
2019年 |
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東海大学出版部
ISBN 978-4-486-01859-9
2012年 |
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ベレ出版
ISBN 978-4-86064-533-5
2018年 |
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講談社
ISBN 978-4-06-515112-9
2019年 |
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鹿島出版会
ISBN 978-4-306-04552-1
2011年 |
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左右社
ISBN 978-4-86528-249-8
2019年 |
|
水声社
ISBN 978-4-8010-0135-0
2015年 |
|
みすず書房
ISBN 978-4-622-08831-8
2019年 |
|
講談社
ISBN 978-4-06-517446-3
2019年 |
|
青土社
ISBN 978-4-7917-7045-8
2018年 |
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Edinburgh University Press
ISBN 978-1-4744-1363-3
2016年 |
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Duke University Press
ISBN 978-0-8223-6224-1
2016年 |
集まることは簡単だ。しかし集まりは人を縛る。集まりは解散されることなく継続し、形骸化する。役割の固定や集まりの自己目的化に難しさを感じたなら、立ち止まってみるのも悪くない。
偶然、集まる。宮野『出逢いのあわい』は九鬼周造が説く日常的な偶然性の様相をハードに哲学する。集まるの始まりは偶然だ。どんなに長く続いているわたしも、瞬間ごとにたまたま始まっている一期一会の集積である。開く/閉じる集まるは巻きこまれ。平倉『かたちは思考する』は作品と共に平倉自身がつくりなおされていくプロセスの記述である。テクストは身体を欠いた記号として作品を遠くから説明するのではなく、作品と平倉が癒着する接触領域の形象として生成する。
わたしは集まる。ギルバート+ イーペル『生態進化発生学』は、生態学と発生学、進化論の知見を集めて生命の単位を再考する。わたしは、それぞれ異質な細胞、遺伝子のモジュール、細菌、食べものとなる生物、天候の絡みあいとしてある。
集まるは分解する。大園『生き物はどのように土にかえるのか』は、動物の死骸の周囲に一時的に現れる生態系を紹介する。つかの間の集まりが連続する土には、生産/消費の資本主義的ロジックではなく、合成/分解の終わりなき生成プロセスがある。
集まるは進化する。倉谷『進化する形 進化発生学入門』は発生のプロセスから進化を問い直す。異種間に共通の遺伝情報でも、その機能は遺伝子モジュールの集まり方によって変わる。わたしたちは集まり方の進化の過程を体現している。
集まるは転用する。中谷『セヴェラルネス + 』は、ある事物が、本来期待されていた機能とは異なる「いくつかの」機能を発揮する可能性を語る。どの集まりも、事物の別様なつなぎに転用される、ささやかな可能性を秘めている。
集まるは集まるを誘う。大貫+河野+川端編『文化と社会を読む批評キーワード辞典』は従来の孤独な知性による批評を、協働研究という集まりへと転換し、蛍の発光のごとくさらなる批評の凝集を誘う。
集まるは収まらない。インゴルド他『表現の生態系』は群馬と呼ばれる行政区とは一致しない生態系を生成するアート実践の記録である。差異は断絶の谷ではなく、集まるのために開いたエッジである。
集まるはつながる。ストラザーン『部分的つながり』は自己/他者の倫理に依存しない、異なるつながりかたを模索する。完全に辿りなおすことのできない半端なつながりが世界を新たに構築し、内省は別様の集まりへと開かれる。
キノコに集まる。チン『マツタケ』は決して無垢ではない、害を含む多種の 動的な編成 を物語る。どんな研究も協働研究であることは、世界の果てに生きる協働研究者、マツタケが教えてくれる。
外で集まる。川上『大きな鳥にさらわれないよう』は交流の途絶えた共同体が点在する架空の未来を語る。ヒトは同じものの再生産をいくら心がけても、いつのまにか未知との出逢いを希うようになる。
集まるをはじめるのに勇気はいらない。集まるはもうはじまっているから、いつも途中参加になってしまうけれども、あなたが参加したときにはどんな集まりも原理上集まりなおされることになる。(逆卷しとね)
学問の「用語」と私たちの使う「ことば」を架橋する。
それは同時に私たちの「ことば」と「社会」を架橋することでもあり、「社会」を想像しなおすことでもあります。
河野真太郎(英文学・文化研究)
『在野研究ビギナーズ』の( #調べながら考える )フェアに関連して、秋谷直矩さん(@n_akiya)からもコメントをいただきました。『ワークプレイス・スタディーズ:はたらくことのエスノメソドロジー』(ハーベスト社、水川喜文、秋谷直矩、五十嵐素子、編)について、以下に公開します。 #2019_bookfair https://t.co/ir2ONLIjkq
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
ページを開くと、イントロに「デザイン思考」や「ユーザエクスペリエンス」の重要性の認識の高まりと、ビジネスにおける「エスノグラフィ」という言葉のバズりがちょっと前に日本でもあった、その流れでEMにも注目が集まりつつある、と書いてあります(最後は希望的観測も混みなのですが)。
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
2010年に産業エスノグラフィーの国際会議EPICが東京で開催された時に参加しましたが、もしかすると日本の企業もこれから人類学や社会学の知識や調査スキルを持った人たちの雇用が進むかもしれない、また、人類学や社会学界隈でも、そうした進路を視野に入れたキャリア教育も始まるかもと期待しました。
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
今ではデザインファームも随分とフィールドワークに時間をかけるようになり、また、自社のサービスとして「エスノグラフィー調査」を掲げるところもそれなりに増えてきていますが、従来通り、美大や心理学系の大学(院)からの進路がまだ中心のようです。
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
ビジネスと人類学・社会学の架け橋になる本にしたい。学知や手法がアカデミアで閉じているのはもったいない。みんなどんどんユーザーになってほしい。特にEMは(海の向こうで)かなり蓄積があるし、何より面白いからいいぞ、と。
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
私は参加しなかったし、知り合いもいないのですが、最近Twitter経由でこんなイベントが開催されたことを知りました。社会科学は私たちの暮らしを知り、そしてそれをよりよいものにするために本当に「使える」。私も同じ思いです。https://t.co/ZKkQGkAbYa
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
最後になりますが、シカゴ学派や日本の都市社会学の重要なモノグラフを出版し続けたハーベスト社さんからこのいかにも応用的な『ワークプレイス・スタディーズ』を出してもらえたのは、個人的に本当に光栄なことでした。今回のフェアに並んだ関連本と併せてぜひお手にとっていただければ幸いです。
— 明石書店 (@akashishoten) January 10, 2020
【ソーシャル・マジョリティ研究の着想背景1】2006年頃から当事者研究のおかげで人と関わり始めた綾屋ですが、当初は人々のやり取りのルールが分かりませんでした。「おそらく規則性があり、それが分かれば、毎回驚いたり、人に聞いたりせずに済むのではないか」と思いました。#2019_bookfair
— 綾屋紗月 (@ayayasatsuki) January 12, 2020
【ソーシャル・マジョリティ研究の着想背景2】発達障害の仲間と「いじめられて辛かった」当事者研究をしている時、仲間の多くがいじめられた側なので「いじめた側」のデータが得られませんでした。似たことが続き、私たちは多数派についても知る必要がある、と思うようになりました。#2019_bookfair
— 綾屋紗月 (@ayayasatsuki) January 12, 2020
【ソーシャル・マジョリティ研究の着想背景3】会話分析の専門家と共同研究を始めた時、一般的な人々の会話のルールが、既に学問の対象となっていることを知り、こうした会話のルールを他の発達障害の仲間と共有していけたら、私たちはずっと生きやすくなるのではないかと感じました。#2019_bookfair
— 綾屋紗月 (@ayayasatsuki) January 12, 2020
【ソーシャル・マジョリティ研究の講師選び】この研究ではコミュニケーションを/内臓感覚と感情/発声・発話/身体の配置や動作/会話における人の関係/に分解して捉え、各々に対応しそうな分野のうち、少数派ではなく多数派を研究対象とする趣旨に理解のある専門家に依頼しました。#2019_bookfair
— 綾屋紗月 (@ayayasatsuki) January 12, 2020
【ソーシャル・マジョリティ研究をあなたに】「普通」の関わりがわからず困っている方。「普通」のルールを問われても「そんなの常識だろ!」としか答えられない方。多数派社会に適応/批判したい方。当事者研究を更に深めたい方。そんなあなたにぜひお手に取って頂ければ嬉しいです! #2019_bookfair
— 綾屋紗月 (@ayayasatsuki) January 12, 2020
私はマシュマロというウェブサービスで質問を受けたりしてるのですが、受ける質問で最も多いのは人間関係に関するものです。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 28, 2020
その大半は、私などが答えるよりも、この本を読んでもらえばよい、もう全部書いてあるから、と本気で思っています。
そこに、人々が《当たり前》にやっているけれど改めて考えると当人たちもうまく説明できない実践を探求するにはうってつけのアプローチ(会話分析、エスノメソドロジー)が加わることで、・・・
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 28, 2020
《当たり前にできる》とは実はどういうことなのか、こんなところまで分け入ることができるのだと感嘆することになると思います。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 28, 2020
医学書院
ISBN 978-4-260-02802-8
2016年 |
|
勁草書房
ISBN 978-4-326-60303-9
2018年 |
|
ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1291-9
2018年 |
|
晃洋書房
ISBN 978-4-7710-2957-6
2018年 |
|
ひつじ書房
ISBN 978-4-89476-731-7
2018年 |
|
日本評論社
ISBN 978-4-535-52115-5
2015年 |
|
金子書房
ISBN 978-4-7608-9282-2
2001年 |
|
有斐閣
ISBN 978-4-641-15046-1
2017年 |
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新曜社
ISBN 978-4-7885-1062-3
2007年 |
|
協働する看護急性期病院のエスノグラフィー(仮) |
新曜社
-
2020年刊行予定 |
子どもの豊かな学びの世界をみとるこれからの授業分析の可能性(仮) |
新曜社
-
2020年刊行予定 |
作業フォーマットとトレーニング抜きに研究は成り立たない。しかし研究のあり方について語られるとき、そのスタイルが実はかなり多様であることはあまり強調されることがない(おそらく多くの専門的研究者は一分野でのみ訓練を受けるからだろう)。この項では、そうした多様性のひとつの極ともいえるエスノメソドロジー(以下EMと略)を中心に、主として様々な仕事場に録画機材を持ち込んで行われる、働き方に関する研究を紹介したい。開く/閉じる
EM研究は〈ある場で何が行われているのか〉そして〈それはどのようにして可能になっているのか〉を、人びとが実際にやっていることに即して記述的に解明しようとするものである。こうした研究にとって、安価な録音機器の登場は重要な画期となった。それによって、実際に行われていることを記録し、繰り返し聴いて確認することが可能になったからである。この研究スタイル─繰り返し聴いて - 言葉を与えること─は素朴なものであり、仮説演繹法、モデル・ビルディング、データのコード化(~分類)といった標準的な研究の訓練を受けた人なら強烈な違和感を覚えるかもしれない。しかしそうであるが故に、EMを知ることには幾つかの利得がある。仕事場における人々のありふれた(しかし多くは言葉で表しにくい)ふるまいに言語的表現を与える作業はそれ自体が面白く、そうした素朴なやり方でも研究が成り立つことを知れば、研究にアクセスするハードルが下がる─より柔軟にアクセスできるようになる─人もいるだろうからだ。
近年ではこの領域でも邦語文献が増えてきたため、まず紹介したいのは秋谷ほか編『ワークプレイス・スタディーズ』である。同書は仕事場に録画機材を持ち込んだEM研究の来し方を概観するブックガイド的な性格をもっており、古典から最近の業績まで基本文献が網羅的に紹介されている。本書から自分の関心にかなう書籍を探すことから始めるのがよいだろう。同書以降に出版された好著としては、介護現場における実践を細やかに分析した細馬『介護するからだ』や、子育て広場に集う人びとの会話分析研究である戸江『和みを紡ぐ』などがある。
EM研究者は、他分野の研究者、さらには研究対象となる現場の人々と協働した研究を盛んにおこなってきた。たとえば、看護学・現象学との協働事例である前田・西村『遺伝学の語りと病い』や、発達障害者の側から社会の多数派のルールを研究する綾屋編『ソーシャル・マジョリティ研究』などがその例である。録画機材の導入はこうした協働的研究をさらに加速した感がある。複数人による協働的な分析や、さらに、分析結果をベースとした応用的展開まで見越した研究プロジェクトを組織することが容易になったからである。たとえば樫田他『医療者教育のビデオ・エスノグラフィー』は非定型発達の学生を現代的な医学教育プログラムにどのように包摂していくかを、医療者教育に携わる人びとらとの映像データの共有と分析を通して考えるものである。また科学未来館における多職種チームによる展示の経緯を追った高梨編『多職種チームで展示をつくる』、裁判員裁判における市民参加のデザインを法曹関係者とともに考える三島編『裁判員裁判の評議デザイン』などもある(後者は専門家チームの協働事例である)。人びとの活動を支援する情報機器の開発という応用的利用例としては加藤・有元編『認知的道具のデザイン』がわかりやすい。こうした協働と応用の展開は約30年の蓄積があり、教科書もいくつか出版されている。Crabtreeほか編 Doing Design Ethnography は現時点でもっともまとまった教科書である。
先に述べたように、EMは通常の科学的研究作法に従っていない。それが通常の作法とどのような関係にあるのかを教えてくれるのが筒井・前田『社会学入門』である。同書は、無作為化比較対照試験からEMまでにわたる極めて多様な研究潮流をコード化を軸として位置づけつつ、多数の研究事例とともに紹介したものである。さらにEMそのものについて詳しく知りたい読者は、この分野の教科書である前田ほか編『ワードマップ エスノメソドロジー』を─特に事例と分析を紹介している第Ⅲ部から─読んでみて欲しい。(酒井泰斗・秋谷直矩)
実践において人びとがそのさなかに用いている“概念”=実践を組織する“方法”
これが本書の公式である。
では、“概念=方法”の分析とは何をすることなのか。
障害や医療、司法、ソーシャルワーク、教育、ビジネス、スポーツ、観光。
この中の一つにでも関心をもったら、是非、手に取ってみて欲しい。
1つの主題を読むことで“概念が分析できる”よう、設計されている。
「なるほど」と思ったら、すでに本書の虜だ。
西村ユミ(看護学)
『在野研究ビギナーズ』はありがたいことに三刷が出るとのことで、研究機関を離れて研究することに関心がある方が想像以上に多かったように感じています。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) January 2, 2020
この本は多数の事例集ですが、特に自然科学系の話は少ないので、もっと違うタイプの在野の姿にも光が当たってほしいところです。
バイオハッキングとは、研究組織の外で(ここが大事)、細胞から遺伝子情報を読み取ったり遺伝子を組み換えたりして、知りたいことを明らかにしたり、さまざまな問題解決につなげようとする試みだ。主に海外でムーブメントになっている。日本ではまだまだこれからだ。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) January 2, 2020
バイオテロとか危険なイメージを持たれかねないが、生物工学の可能性を広げ、誰もがその成果を活用できる社会を作るのが彼ら彼女らの目的だ。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) January 2, 2020
ここで挙げられているのは、研究者というよりプログラマーに近いが、「職業研究者がやらないことを在野でやるから意味がある」ということで意識が全然違う。
海外と日本で環境は相当異なるけど、そんな人から見て、在野研究はどう捉えられているのか、とても興味がある。きっと日本の感覚とは違うカルチャーショックもあると思うし、共通点もありそう。
— T. KUMAZAWA (@K_Tatz) January 2, 2020
あとこの本の登場人物には女性科学者が多い。これも『在野研究ビギナーズ』の弱点を補える点といえる。
この本ほんと面白くて、それこそホットドッグ売る屋台みたいな感覚でDNA検査を商売にする人たちが紹介されてるんですよね。
— 吉良貴之|T. Kira🗼 (@tkira26) January 2, 2020
マーカス・ウォールセン(矢野真千子訳)『バイオパンク』(NHK出版, 2012年)
◆出版社:https://t.co/hvyEXGzOPshttps://t.co/tYax4TJhlu#2019_bookfair #調べながら考える
築地書館
ISBN 978-4-9910427-0-6
2006年 |
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みんなのデータサイト出版
ISBN 978-4-9910427-0-6
2018年 |
|
講談社
ISBN 978-4-06-292228-9
2014年 |
|
イースト・プレス
ISBN 978-4-7816-0995-9
2013年 |
|
NHK出版
ISBN 978-4-14-081576-2
2012年 |
在野研究者の貢献が、いま、サイエンスの世界で大きな注目を集めている。市民が科学研究の一翼を担う「シチズンサイエンス(市民科学)」である。
シチズンサイエンスの代表的なプロジェクトの一つが、オンラインゲームを活用してゲーム愛好家たちがたんぱく質の構造予測を行う「フォールド・イット」である。そこでは専門の科学者たちを悩ましてきた問題が、アマチュア科学者たちの手で次から次へと解決されていく。なぜそのようなことが可能なのか。開く/閉じるシチズンサイエンスのもつポテンシャルを理解するには、集合知のダイナミズムが科学のルールを大きく変えつつあることを指摘する『オープンサイエンス革命』がよい出発点となろう。
シチズンサイエンスがもっとも活発なのが、環境や生態系の分野である。『森の健康診断』は、愛知県の矢作川流域で、プロの科学者と市民参加者たちが協働して取り組んだ人工林調査の事例の報告である。プロの研究者だけでは不可能な膨大なデータ収集が、多数のアマチュア科学者たちの手で可能になるのも、シチズンサイエンスの強みである。
東日本大震災を契機とした福島原発事故では、放射能汚染が問題になった。日本各地で「市民放射能測定室」が立ち上がり、多くの市民が自分たちの手で放射能測定を行ってきた。その集大成が『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』である。同書がその特徴として掲げる「自分たちが測定したいものを測定し、測定したい精度まで細かく測定できる」とはどういうことか。国の行う調査とはなにが違うのか。大学での研究職を辞し、反原発の運動に生涯を捧げた高木仁三郎は『市民の科学』で、オルターナティブとしての「市民の科学」について論じているが、シチズンサイエンスの意義を考える際に避けて通れない論点だろう。
以上で見てきた通り、シチズンサイエンスはかなり多様な実践である。しかしなかでも異色なのが、自宅や街角の実験室でバイオテクノロジーの実験を行う「DIYバイオ」だろう。実験キットが安価で手に入るようになり、自宅に実験機材一式を揃えて遺伝子改変実験を行う人たちが増えている。『バイオパンク』は、DIYバイオについて幅広く紹介するだけでなく、DIYバイオがどのようにして誕生してきたか、その思想的背景にも迫る好著である。DIYバイオに対しては、各種規制のもとにある大学の外部で行われることに伴う倫理的な問題や危険性がよく指摘されるが、本書を読めばそのような表層的な次元で対応すべき問題ではないことに気付くだろう。
シチズンサイエンスは、サイエンスとはなにか、また、その担い手であるアカデミアとはなにかについて、多くの問題を提起している。ユーザー参加型学会「ニコニコ学会β」は、従来の学会のありかたに対して問題提起を行い、アカデミアの進化を独自の仕方で模索してきた。そのことを関係者たちの証言から浮き彫りにするのが『進化するアカデミア』である。また、『MAKERS』が描くように、3Dプリンターの登場に後押しされて、アマチュアの活動はものづくりの世界にも大きな地殻変動をもたらしている。欧米ではサイエンスとテクノロジーはしばしば切り離して捉えられるが、シチズンサイエンスの今後を考えるうえで無視できない動きだろう。(中村征樹)
科学のルールが、いま大きく変わりつつあります。
数学の未解決問題や宇宙の謎が、集合知のダイナミズムにより解明されていく。
どの事例もおもしろく、多くの可能性を実感させてくれる一冊です。
中村征樹
遺伝子改変などの実験を、自宅のキッチンでも行うことができる現代。
そのようなDIYバイオの広がりとその思想を描くのが本書です。
科学を専門家や企業の手から解き放ち、市民や途上国の人々へと届けようとするバイオハッカーたちの物語は、実に魅力的です。
中村征樹
まず選書した14冊がどういう意図を持った組み合わせなのか、図示しました。四つの小テーマに対して<(ビジネスのひとに薦める)アカデミア本>と<(アカデミアのひとに薦める)ビジネス本>を選びました。『在野』本担当章でも述べたように両者を行き来する読書体験になればと思います。#2019_bookfair pic.twitter.com/PVYTglwsb2
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
①→②→③の順で専門的になる(≒数式が増える)ので、店頭で手に取っていただいて自分に合いそうな一冊を選んでもらえればと思います。ちなみに②③(の原著)を最初に推薦してくれたのは、『在野』本担当章に登場する「ボス」でして、どちらも原著の時点で世界的に定評のある本で待望の邦訳です。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
ハッキング『確率の出現』が打ち出した「17世紀に<確率>概念は突如生じた」という魅力的ストーリーと、それを覆す古代からの蓋然性への対応を記述する『「蓋然性」の探求』を読み比べ、「確率」をめぐる哲学的議論の端緒をうかがえる『科学と証拠』まで読むと、蘊蓄を超えた知の営みに誘われるのでは。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
売上動向からするとビジネスの方が買われてそうです。そんな方にはぜひ「05調べる(話を聴きに行く)」カテゴリの質的調査に関わる各書籍(『最強の社会調査入門』等)をお手にとってくださると「差がつく」のではないかと思います。私見では、ここから十年は質的調査への着目がより加熱すると思います。 pic.twitter.com/BZFJJXA2ow
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
『さよなら、インターネット』は、デジタルビジネスの今日(2018年のGDPR制定あたりまで)に至る盛衰史とともに、このビジネスがいかに<思想的>であったのかがよく理解できる一冊です。ソフトなパッケージングですが、参照や文献なども充実しているので、これを読めばまず見通しが効きやすいかと。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
日本での(哲学)アカデミアからデータビジネスへの関与はこれからですが、まず参照すべき一冊が『情報倫理』でしょう。重厚なタイトルですが、もとは雑誌連載(2009-2017)なので、当時の時事ネタを思い出しながら読めます。ここでの論点から、現在リアルタイムで起こる問題を考えられる一冊です。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
また「そもそもビジネスに倫理って…」という(「倫理的であることは競争力である」時代なので、up to dateとは言い難い)方には『ビジネス倫理学読本』を手に取ってみていただくのがよいかと。同書での議論からデータビジネスの倫理を検討するのは、わたし自身も参画していきたいプロジェクトです。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
その一事例として、『人権について』を考えてみることができるかもしれません。これは1993年、セルビア内戦(コソボ紛争)を背景に、ロールズ、ローティ、マッキノンら当代きっての「リベラル」哲学者たちが登壇し、「人権」概念を論じたオックスフォード・アムネスティ連続講義の書籍化です。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
⑩『戦争広告代理店』
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
他方『人権について』は、じつのところボスニア側が仕掛けた「PR戦略」の大きな<成果>で"も"あるといえます。その舞台裏を明らかにしたドキュメントが『戦争広告代理店』です。まさに「民族浄化」といった概念が、いかに巧みに練られ、意図して流通したのかが克明に描かれます。 pic.twitter.com/O1u8ayHdTP
こうした(広く社会で起きている)「概念工学」的実践の担い手たちのなかで、哲学者は何をどのようにできるというのでしょうか。それはわたし自身も考えたいと思ってますが、やはり『人権について』のような本にはそのヒントと哲学からの貢献があると思っています。
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
以上14冊でした。 #2019_bookfair
末尾にもう一度、14冊全体のマッピングを貼っておきます。紀伊国屋書店新宿本店、ジュンク堂書店池袋店ほか、各地で拡大開催中です。開催地は下記URLご参照ください。充実のブックガイドも、ぜひ店頭でお手に取ってみてご検討ください!(各種POPも出てます)https://t.co/9rFoUPfEsR #2019_bookfair pic.twitter.com/SUHL9ApKos
— heechulju (@hee_verm) January 15, 2020
朝日新聞出版
ISBN 978-4-02-331649-2
2018年 |
|
有斐閣
ISBN 978-4-641-16520-5
2018年 |
|
インプレス
ISBN 978-4-295-00474-5
2018年 |
|
慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2103-3
2013年 |
|
名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0712-2
2012年 |
|
ダイヤモンド社
ISBN 978-4-478-10584-9
2018年 |
|
翔泳社
ISBN 978-4-7981-6007-8
2019年 |
|
名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0941-6
2019年 |
|
みすず書房
ISBN 978-4-622-03667-8
1998年 |
|
みすず書房
ISBN 978-4-622-08562-1
2017年 |
|
新曜社
ISBN 978-4-7885-1522-2
2017年 |
|
晃洋書房
ISBN 978-4-7710-2330-7
2012年 |
世の少なからぬひとはビジネスに携わり、広くマーケティングに従事する。消費者としての関与まで含めれば、その営みと無関係なひとはいない。他方、学術コミュニティから見ると、そうした営みは真正の研究からは程遠いものと映りがちだろう。
例えば『ブランディングの科学』は近年ビジネス界を席巻する「エビデンスに基づくマーケティング・サイエンス」の普及版と言える一冊で、マーケターであれば読んでおきたいが、研究者からは上述の印象を裏切るものではないかもしれない。他方、ようやく訳された同分野の古典的著作『マーケティング効果の測定と実践』に対しては、もう少し居住まいを正させられるのではないか。さらに最新の動向を伝える『AIアルゴリズムマーケティング』に手を伸ばしてもらえば、同分野がすでに学際的な総合領域である実態が見えるだろう。 開く/閉じる逆にデータを扱うマーケターにとって、自身の武器がどこから来たのかを知るのは気の利いた蘊蓄以上の価値がある。『確率の出現』は、データを用いた推論がいつ・どうやって誕生したのかを名手ハッキングらしい鮮やかさで紹介する。こうした概念の歴史と地続きに自身の営みがあることに知的興奮を覚えたならば、さらにその前史をも射程に収めた『「蓋然性」の探究』も間違いなく楽しめる。両書の端々に伺える確率や統計をめぐる哲学的な考察は、「統計の哲学」として営まれる分野である。『科学と証拠』は、同分野を知るうえで格好の一冊である。
次は現在と未来に目を転じてみよう。データビジネスの今後は、欧州のGDPRなど行政動向と不可分である。『さよなら、インターネット』からは、欧米におけるデータ行政がどれだけ人文社会的な理念に駆動されているか知ることができる。たとえばGDPR制定にも関わったEU倫理委員会のメンバーには情報倫理学者のフロリディがいる。
さて、差別化戦略は世の常、マーケティングの次なる潮流は定性的なものへと移ろいつつある。目端の利いたマーケターが『実践顧客起点マーケティング』が謳うn=1の声を聴こうとするとき、本ガイド5節で扱う社会科学分野で育まれた質的調査の方法論が具体的な手引きとなるだろう。
もっとも『〈概念工学〉宣言!』が宣言するように、哲学分野さえ実践における有用性を標榜する時代に、冒頭の対立構図は過去の遺物かもしれない。しかし、「概念工学」を謳うのであればこそ、まさしくマーケティングやPRといったビジネスで育まれてきた技法こそが、その典型であるという事実にも目を向けてみるべきだ。
『戦争広告代理店』は、1990年代初頭のボスニア紛争において、PRのプロたちによる「概念工学」とも呼びうる営みがいかに効果を発揮したのかを克明に描いたドキュメントである。同書を念頭に、ボスニア紛争へのリアクションとして開催された1993年のアムネスティ講義を書籍化した『人権について』を読む。そのとき、ロールズやローティらリベラルを体現する哲学者たちは、PR戦略に乗せられて世論形成に一役買った傀儡とさえ映るかもしれない。しかし、だとしてもなお同書に掲載された論考には価値があるのではないか。そうした問いを問うとき、私たちはビジネスと地続きにあるアカデミアが固有に持ちうる役割について考えることができるのである。(朱喜哲)
在野の「野」って、分野の「野」と違うのか?
本書を通読すれば、「学際」とは、それぞれの専門分野が対峙する問いの仄かな重なりを結節点として広がる学知の「野」に「在」り思考するということ(=在
野の思考)だとわかるだろう。
そんな信頼できる一冊を片手に、たまには「野」に出て学問的「おひとりさま」をやめてみるのも楽しいよ。
奥田太郎(倫理学)
一冊の背後には多数の書物が存在し、その一冊一冊の背後にもまた数多の書物が控えている。そのことを自覚した書物、書き手自らがその事実に傅く書物が好きだ。その「扉」をいくつも、いつまでも開いて行きたくなる。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 23, 2020
まとめるならタイトルそのとおりに『知識の社会史』と呼ぶしかない。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 23, 2020
何しろ副題として邦訳につけられた「知と情報はいかにして商品化したか」というのも、本書が取り扱うトピックのほんの一つ(第7章が「知識を売る」と題される)にすぎない。
だがこの書物が一冊のものとして存在した意義は、思想の、科学の、大学の、産業の、 行政管理の、教会の、 出版の、図書 館の、読書の、それぞれの歴史として書かれてきた知見を、「知識」の名のもとに出会わせ、束ねたことにある。
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 23, 2020
さて本書には続編がある。『知識の社会史2』には「百科全書からウィキペディアまで」という原著に充実な副題が添えられる。そこにはこのような知識の全てを見渡す書物を、何故そしてどのようにして書いたのかが記される。 pic.twitter.com/pZXbnClQOW
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 23, 2020
E・M・フォスターの助言「ただ結びつけよ」を念頭におきつつ、諸知識の多重奏的歴史を、多元的視点から眺めた歴史を書きたいという希望から、アビイ・ワールブルクが知的な「国境警察」と呼んだものの網をかいくぐろうと思う。」
— 読書猿『問題解決大全』『アイデア大全』 (@kurubushi_rm) January 23, 2020
ご紹介ありがとうございます。こころよりお礼申し上げます。今朝の注文で、通常のひと月分ぐらいの注文が来ているので、何事かと思っておりました。(N https://t.co/hqi4xPcffa
— 新曜社 (@shin_yo_sha) January 27, 2020
勁草書房
ISBN 978-4-326-14828-8
2015年 |
|
筑摩書房
ISBN 978-4-480-09883-2
2018年 |
|
みすず書房
ISBN 978-4-622-07781-7
2013年 |
|
中央公論新社
ISBN 978-4-12-102097-0
2011年 |
|
平凡社
ISBN 978-4-582-76871-8
2018年 |
|
勉誠出版
ISBN 978-4-585-22099-2
2014年 |
|
岩波書店
ISBN 978-4-00-381504-5
2017年 |
|
河出書房新社
ISBN 978-4-309-41294-8
2014年 |
|
思想の科学社
ISBN 978-4-7836-0099-2
2005年 |
|
新曜社
ISBN 978-4-7885-1433-1
2015年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-005110-4
2018年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-420249-3
1983年 |
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講談社
ISBN 978-4-06-159843-0
2007年 |
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中央公論新社
ISBN 978-4-12-003618-7
2005年 |
ここでは大学以外での研究活動にかんする文献をご紹介しよう。
1:社会のなかの学術
そのつもりで歴史を眺めると、現在私たちが知っている大学が現れる以前から、研究といえそうな活動が行われてきたことが分かる。その長い歴史の一端を垣間見させてくれる本としてピーター・バーク『知識の社会史』がある。同書ではヨーロッパで活版印刷術が実用化された15世紀から18世紀において知識がどのように生産・流通していたかを検討している。続篇もある。 開く/閉じる
現代における学術の基礎は、古代ギリシアやローマからイスラーム世界での翻訳と保存を経てヨーロッパで発展したものだった。その大きな流れに触れた本として、人文学についてはアンソニー・グラフトン『テクストの擁護者たち』を、自然科学については古川安『科学の社会史』を挙げたい。
セオドア・M・ポーター『数値と客観性』は、19から20世紀の欧米における保険数理士、技術官僚、陸軍など、社会において科学的思考がどのように扱われたかを描き出している。『在野研究ビギナーズ』では大きくとりあげられなかった知識生産の場として、同書が扱う企業、役所、軍の役割は重要である。ことに近代以降の社会を特徴づける数字の洪水は、これらの組織とそこに属する「在野研究者」たちによって日々生み出されているのである。
2:日本の場合―江戸から明治へ
西洋流の学術制度を移入する以前の日本では、江戸幕府や各藩、あるいは私塾を舞台に知識の探究が行われていた。田尻祐一郞『江戸の思想史』でその多様性を、前田勉『江戸の読書会』では集団による検討の様子を知ることができる。
江戸の蘭学から明治期の欧米を手本とした学術制度確立に至る過程では、日本における従来の知と西洋流の知のあいだにさまざまな対立や折衷が生じた。井田太郎+藤巻和宏編『近代学問の起源と編成』は、人文社会科学を中心として各分野の事例を検討している。
3:在野のケーススタディ
在野での研究活動のケーススタディとして4冊を選んだ。河野有理『明六雑誌の政治思想』は、森有礼、福沢諭吉、西周といった明治の啓蒙知識人たちが集った明六社の活動を扱う。時枝誠記『国語学史』は、中世の歌学から江戸の国学、そして明治以降の言語学を踏まえた国語学という大きな流れを追った労作。宮田親平『「科学者の楽園」をつくった男』は、理化学研究所の創設前後(1917)から敗戦までの経緯を、関係者の証言や資料から浮かび上がらせている。戦後の例として、思想の科学研究会の活動を振り返って位置づけた鶴見俊輔編『『思想の科学』五十年 源流から未来へ』がある。同会が半世紀にわたって刊行した『思想の雑誌』(1946-1996)は、アカデミアでは研究対象とならなかった民衆の思考様式にも目を向けていた。(山本貴光・吉川浩満)
閉塞感に悩む人に。
日本の諸学はどこから来て、どこへ行くのか─。学問を取り巻き、規定してきた要素は、時の移ろいで忘却されるが、理系でさえ無縁でない。時代や環境、制度や人に注目し、総合的な眼を備えた書物は、いまだ少ない。本書は全領域をカバーするものではないが、“現代”の位置を考えるため、設計された。
井田太郎(日本文学研究)
国のかたちもアカデミアも定かならぬ明治のはじめ
江戸の知的遺産と西洋の衝撃をともに承け
侃侃諤諤、知的討議を戦わせた雑誌があった
この『明六雑誌』を舞台に、並みいる洋学者の中
奮闘した儒学者阪谷素に焦点を当てて講究する好著
山本貴光
本ブックフェア:「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」ですが、開催してくださる書店も増え、webも着々と更新されております。https://t.co/AmD1a1lZid
— 141 (@m1s4m1) January 12, 2020
私は「社会のなかの知識:大学」という項目を担当しています。
関連分野では、佐藤郁哉『大学改革の迷走』(ちくま新書)が大変好調なようですが、残念ながらフェアの準備段階では出版されていなかったので、リストに加えることはできませんでした。これを機にぜひ一緒にご覧になっていただければと思います。
— 141 (@m1s4m1) January 12, 2020
さらに、都市と地方の問題もそこでは忘れられがちです。今回の選書で、より広い視点から大学や学問について考えるきっかけになればと思っています。
— 141 (@m1s4m1) January 12, 2020
(続)
— 141 (@m1s4m1) January 12, 2020
河野有理『明六雑誌の政治思想』
前田勉『江戸の読書会』
田尻祐一郎『江戸の思想史』
隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』
なぜこの段になって追加かというと、ブックフェアの準備段階ではまだ出版されておらず、小冊子にも載せることができなかったからというのが理由です。
— 141 (@m1s4m1) February 3, 2020
本書は478頁というかなりの大部ですが、それだけに日本の大学の現状や大学行政の問題点を信頼できるデータとともに総覧できる1冊となっています。
いわゆる「大学改革」は、様々な立場から議論がなされています。著者の立場にも異論はあるかもしれませんが、本書は研究者の目線から、研究者らしく(エビデンスベースで)「大学改革」問題に切り込んだもので、この領域では基本書の1つになるでしょう。
— 141 (@m1s4m1) February 3, 2020
星海社
ISBN 978-4-06-512384-3
2018年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-270938-3
2016年 |
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集英社
ISBN 978-4-08-720823-8
2016年 |
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法政大学出版局
ISBN 978-4-588-14051-8
2018年 |
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岩波書店
ISBN 978-4-00-022793-3
2013年 |
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東洋経済新報社
ISBN 978-4-492-22389-5
2019年 |
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大月書店
ISBN 978-4-272-41222-8
2014年 |
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公人の友社
ISBN 978-4-87555-683-1
2016年 |
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日本経済評論社
ISBN 978-4-8188-2092-0
2010年 |
古来より洋の東西を問わず、学問は共同体のなかで育まれてきたと言ってよい。プラトンのアカデメイアであれ、漢の太学であれ、同じ志をもった者たちがともに競い合って勉学や探究に努めたことだろう。とはいえ、現在に通じる大学の起源は、中世ヨーロッパに求められる。度重なる制度改革を経て、現在に至るまで高等教育・研究機関として続いている大学の歴史を一望する際には、クリストフ・シャルル、ジャック・ヴェルジェ『大学の歴史』が要を得た見取り図を提示してくれる。 開く/閉じる
1.大学と学問の来歴
その後学問の細分化が進み、人文科学・社会科学・自然科学といった学問区分が広く受け入れられ、とりわけ文系と理系という区別は今では馴染みのものになっているだろう。そのような学問分類がなぜ、どのような仕方で生じていったのか。不毛な水掛け論に陥らないためにも、隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』から得るものは多い。
2.「大学改革」とはなにか?
1990年代から現在に至るまで、大学院重点化計画や国立大学の法人化、運営交付金から競争的資金への転換、地域貢献への要請、文系学部の縮小など、一連の「大学改革」が急速に進められ、大学のあり方が大きく変わろうとしている。しかしながら、その過程で様々な歪みや問題が生まれていることも指摘されている。そんな「大学改革」の問題点を簡潔にまとめているのが、広田照幸・石川健治・橋本伸也・山口二郎『学問の自由と大学の危機』である。なかでも、2015年に文科省が通知した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」は、「文系学部不要論」として大きな衝撃とともに受け取られた。この騒動については、吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』が冷静な整理と文系への擁護を提示している。
市場原理を内面化した大学改革やそれに伴う文系学問の危機は、日本に特有のものではない。1996年に公刊されたビル・レディングズ『廃墟のなかの大学(新装改訂版)』は、国民国家の衰退とグローバル化に巻き込まれた大学の変容を文化という観点から読み解き、現代の大学が消費者主義に侵されている様を鮮やかに描き出している。こうした大学に市場原理や競争原理の適用を求める流れを目の前にして、経済的価値以外の価値に人文学の貢献を見出す快著が、マーサ・C. ヌスバウム『経済成長がすべてか?』である。
とはいえ、いわゆる文系学問だけが大学改革の被害者というわけではない。豊田長康『科学立国の危機』は、日本の科学技術研究の失速と過度な「選択と集中」という国の政策の関係を詳細なデータの分析とともに示している。
3.若手研究者の現状
大学改革の犠牲者は大学教員だけでなく、大学院生をはじめとした若手研究者も含まれる。ここでは、文系の大学院生やポスドクの就職事情について、具体的なデータを中心にまとめた佐藤裕・三浦美樹・青木深・一橋大学学生支援センター編著『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く』を推したい。
4.地方と大学
文部科学省の有識者会議における「G型大学、L型大学」提言は、大学研究者から多くの批判を巻き起こしたものの、地方創生は国の重要な政策課題であると見做されており、地方国公立大学では「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」を中心に着々とL型大学化を突き進んでいるのが現状ではないだろうか。そんな地方創生と大学改革について、政府の意図を知る上でも、内閣府経済社会総合研究所編著『地方創生と大学』が基本書となる。
なお、そのような地方創生ブームに先駆け、上からの命令とは別に、地域における教育・研究拠点としてのあり方を真摯に問うている貴重な一冊として、高崎経済大学附属産業研究所編『地方公立大学の未来』を挙げておきたい。(石井雅巳)
近代日本における西洋諸学の受容に多大な貢献をし、「日本における哲学の父」とも称される西周(にしあまね)。翻訳論、日本語論、軍事論を取り上げ、現代では忘れられつつある知の百面相の魅力に迫る初の入門書。
石井雅巳
名前の肩に*が付いている方はブックフェアの選書も担当しています。
第一章 |
1984 年生まれ。政治学。名古屋大学大学院法学研究科博士前期課程修了。 業績
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第二章 |
1985 年生まれ。PHP 総研主任研究員。専門は情報法政策。上智大学大学院法学研究科修了(J.D.)。現在、東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員、一般社団法人日本ディープラーニング協会有識者会員等も務める。 @inflorescencia 業績
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第三章 |
1964 年生まれ、会社員。専門は批評理論、視覚文化論。英国ノッティンガム大学修士。 業績
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第四章 |
1988 年生まれ。神戸大学大学院理学研究科生物学専攻修了(理学修士)。大阪市立自然史博物館外来研究員。『ニッチェ・ライフ』編集委員。2児の父。学生時代は植物生態学を研究、現在の専門は昆虫学。会社員として仕事をしながら、余暇を使って研究活動を行っている。主にアシナガバエ科(双翅目)の分類研究に取り組む他、ハエやアブといった双翅目の認知度やイメージを向上させるべく、ウェブサイト「知られざる双翅目のために」などで情報発信を行っている。@K_Tatz 業績
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第五章 |
1966 年生まれ。近代日本語活字史研究。 業績
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第六章 |
1971 年生まれ。文筆家・ゲーム作家。専門は学術史。@yakumoizuru 業績
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第六章 |
1972 年生まれ。文筆業。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、現職。関心領域は哲学・科学・芸術、犬・猫・鳥、卓球、単車、デジタルガジェットなど。@clnmn 業績
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第七章 |
怪異妖怪愛好家・作家。1990 年、北海道に生まれる。2014 年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。 業績
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第八章 |
高校教員(比較文学、近代文学)。茨城大学教育学部卒業、放送大学大学院文化科学研究科修了。 業績
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第九章 |
1982 年生まれ。研究者、プロ家庭教師。創価大学大学院文学研究科人文学専攻博士前期課程修了。法華仏教研究会発起人。主な関心は、近現代における日蓮観。研究誌『法華仏教研究』で、書評コラムを中心に執筆している。 業績
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第一〇章 ※編者 |
1987 年東京生まれ。在野研究者(専門は有島武郎)。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。2015 年、第59 回群像新人評論優秀賞を受賞。 業績
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第一一章 |
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程中退。音楽制作会社を経て現在は金融系企業のシステム部に所属。 ルーマン・フォーラム管理人(socio-logic.jp)。関心事は道徳科学、社会科学、行動科学の歴史。@contractio 業績
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第一二章 |
1978 年生まれ。福岡県在住。学術運動家(「文芸共和国の会」主宰)/野良研究者(専門はダナ・ハラウェイ)。 業績
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第一三章 |
1990 年生まれ。島根県津和野町役場町長付(地域おこし協力隊)を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍。NPO 法人bootopia 副代表理事。専門は哲学(レヴィナス、西周)。 業績
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第一四章 |
1985 年大阪生まれ。大阪大学大学院文学研究科招へい研究員、広告代理店主任研究員。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門はネオプラグマティズムおよび言語哲学。 @hee_verm 業績
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大久保ゆうさんは、『在野研究ビギナーズ』にインタビューが掲載されています。
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1984年生まれ。京都大学大学院文学研究科社会学専修研究指導認定退学。神戸大学大学院国際文化学研究科講師。出入国管理制度とオーラルヒストリーに関心があります。 業績
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1980年生まれ。京都大学大学院文学研究科社会学専修研究指導認定退学。博士(文学)。明治学院大学社会学部教員。専門は社会学。食や農の研究をしています。 業績
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1985年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士後期課程(満期取得退学)大阪経済大学人間科学部講師。専門は社会学。 業績
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フィロロギスト(好学者)。ペンネームの由来は「読書家、読書人を名乗る方々に遠く及ばない浅学の身」であることから。ブログ:読書猿Classic: between / beyond readers(readingmonkey.blog.fc2.com)。@kurubushi_rm 業績
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1982年生まれ。フリーランス翻訳家、青空文庫の書守。研究者(大久保友博)としては、翻訳論・翻訳文化史。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、博士(人間・環境学)。京都橘大学助教。 業績
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1982年生まれ。埼玉大学大学院理工学研究科理工学専攻博士後期課程修了。博士(学術)。山口大学国際総合科学部教員。専門は社会学。 業績
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1974年生まれ。大阪大学全学教育推進機構教員。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(学術)。文部科学省科学技術政策研究所研究官等を経て現職。専門は科学技術社会論・科学技術史。 業績
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名前の肩に*が付いているのは『在野研究ビギナーズ』著者です。
@Bst_BSL ⭐︎『在野研究ビギナーズ―勝手にはじめる研究生活』刊行記念トークイベント 荒木優太×田村義也 南方熊楠に学ぶ、勝手にはじめる研究生活。https://t.co/Y91wZ09zWm
— 本屋しゃん (@honyashan) January 13, 2020
時を遡ること明治時代。生物学者で民族学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)。熊楠の好奇心と研究領域は、変形菌、きのこ、密教、セクソロジー・・・と無限大。そんな熊楠も、実は生涯、組織に属さず無位無冠、独学を貫き、研究/調査に没頭する人生を歩みました。在野研究者の先駆的存在かもしれません。
— 本屋しゃん (@honyashan) January 13, 2020
歩く好奇心と呼ばれる南方熊楠の生き方が、在野研究をされている方や在野研究に興味がある方はもちろん、自分の生き方や働き方を見つめなおしたい方のヒントに繋がることを願っています。https://t.co/Y91wZ09zWm pic.twitter.com/qr1IpCVLBf
— 本屋しゃん (@honyashan) January 13, 2020
[趣旨文より] 近年、文科省の大学改革の圧力は年々強まっているように思われますが、それらは、大学の教育力および研究力の強化という異論の起こりにくい抽象的目的を掲げながら、場当たり的な弥縫策に終始し、今回の新テストの民間試験導入とその延期に見られるように、むしろ多くの混乱を生み出しているように思えます。特に、大学の研究力強化という目的に関しては、実態として若手研究者の研究環境がますます不安定化してきているように思えます。今回のミニ・シンポでは提起されて久しいポスドク問題の現状について、二つの報告を踏まえ意見交換を行いたいと思います。
[趣旨ツイートより] 『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』(荒木 優太 著) の第11章「〈思想の管理 〉の部分課題としての研究支援」(酒井泰斗 著)を足がかり、手がかりに勉強会=「土曜の会」のマネジメントについてみなさんと考えられたらと思います。
大学を卒業・修了しても勉学を続けたいひと必携の好著だ。
在野研究者たちの多彩な活動は、研究や学会の意味の問い直しを迫る。
記号論や法学からアシナガハエを研究する生物学者(第四章)までを網羅した本書のメンバーのそろえ方はアカデミアでも真似しがたいだろう。
京大の書評誌『綴葉』最新号にて『在野研究ビギナーズ』を取り上げていただきました。特に荒木に対して批判的な評で、当然私は説得されないのですが、取り上げていただいたことは嬉しく思います。ありがとうございます。https://t.co/uZ2ozrVIUN pic.twitter.com/tnCuPBg5nP
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
では、なにをしたら「貢献」になるのでしょう? お金をくれれば、私だって人々のために働いてもいいですよ。でも、くれないんじゃないでしょうか? なにを期待されているのかよく分かりません。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
この世界には大学教授が積極的に取り上げないけどもちゃんと続いている小規模サークルや査読なしの調べもの文章があります。そしてこれは文系不要論の歴史などよりもずっと古いものです。自分たちが慣れ親しんだ「学問」とかけ離れているという理由で、それらを無視することは傲慢だと私は思います。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
私は所謂批評の世界に比較的近い方だと思いますが、現在の近代文学研究は、曖昧模糊な批評からの脱却、その洗練によって価値づけられることがあります。けれども、柄谷行人の『日本近代文学の起源』がなければ、反発も含めて現在のいくつかの重要な研究成果はなかったでしょう。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
学問も制度である。然り。しかし、それは一つの制度ではなく、複数の制度で成り立っているのです。一つの制度を手当てすればことが解決すると考えるのは私からみると短見に見えるわけです。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
ほかの分野がどうなのかは知りませんが、現在の妖怪研究に関して言えば、アカデミアの研究者が在野研究者や妖怪オタクの研究成果に対して可能なかぎり注目し、敬意を払っているというのが、中にいる人間としての認識です
— ῥ(rh) (@ryhrt) March 3, 2020
それは良いことですね。妖怪研究はアカデミズムとよい循環ができているようで羨ましいです。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
在野は弟子が育てられないからダメ論もたまに頂戴するけど、「じゃあ勝手に荒木学校を開設して青少年を勝手に教育します」っていうふうになって欲しいんですかね。私の感覚だと非常に危険な感じがするんですが。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
私は従わないと思うんですよね。で、人々もそれを分かってる、と思っている。にも拘らず、擁護論を求められるのは、やりたいことに対する実際的な手当てではなく、感情的補填が目指されてるからなのかな、と邪推しちゃうわけですね。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
不安なのは分かるけど、不安の解消自体を目標に設定するのは悪手なのでは。不安はシグナルでしかないわけだから。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
というわけで、長々反応しているわけだが、でも繰り返しておくと、書評書いてくれたことはとても嬉しいぜ。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
反論書いてて思ったけど、私は社会主義国における国立大学の実際ってほとんど知らないな。勉強してみたい。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
さっきの反論で忘れてていた論点を思い出したのだが(まだやってるのか!)、既成の学問にどう貢献するかというとき、在野在朝関らず、研究者が新しい学問・新しい対象を切り拓こうとするとき、評者からすると彼らもまた「フリーライダー」なんだろうか。やはり不思議なロジックだなと思った。
— 荒木優太 (@arishima_takeo) March 3, 2020
[『在野研究ビギナーズ』]からは本当に学問が好きだからこそ、続けることの楽しさや苦労が生き生きと伝わってくる。
まるで万能酸のようにキケンきわまりないガイドブック。※三中さんのブログ leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek でも公開されています。
この書物は、研究というものを再起動させるために編まれているのだ。
手放しで「好き」といえる研究対象を死ぬまでに見つけられるか、と自問せずにはおれなくなる。
動機や研究方法は楽しく、たくましい。研究とは何かを問いかけてくる。[…] 何かに挑戦したくなった。
研究は知識人や大学の独占物ではない、人々が「勝手にはじめる」ことのできるものなのだという本書のテーマは、「善導」を試みる知識人の傲慢を撃つものとしても読むことができるだろう
この調子だと大学勤めの学者のほうが、自らの存在意義を社会に向けて訴える『在官研究ビギナーズ』を出す日も遠くないだろう。
大学が揺れ動いている時代に、好きなことを自由に研究して いいものを書き残したい。書くことは希望なのだ。
大学の外にあって、せいいっぱい研究者人生をおくろうとする。そんな営みを知り、大学批判に急な自分を反省させられもした。