酒井泰斗プロデュース「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」(2019.12)『在野研究ビギナーズ』刊行記念ブックフェア - socio-logic

 このページは、論集 『在野研究ビギナーズ』 の刊行を記念して開催するブックフェア 「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」 をご紹介するために、WEBサイト socio-logic.jp の中に開設するものです。
 本ブックフェアは、明石書店の協力を得て、紀伊國屋書店くまざわ書店ジュンク堂書店 をはじめとする全国の書店にて開催を予定しています。
 フェア開催中、店舗では 選書者たちによる解説を掲載した36頁のパンフレットを配布しますが、このWEBページでも その内容を随時公開していきます。またこのページには、そのほか『在野研究ビギナーズ』 に関連する情報(執筆陣が登壇するイベントや執筆物、書評情報など)もご紹介します。
 なお、2014~2018年にも、本フェアと同様の趣旨を持つブックフェアを開催しました。そちらもご覧いただければ幸いです:

 またプロデューサーは別ですが、こちらも御覧ください:

更新情報
2020.05.05
「書評」欄に下記二件を登録しました。
  • 「本の紹介」(正木伸城)『法華仏教研究』第29号
  • 「多様な広がり自体が面白い」(阿部嘉昭)朝日新聞 2020年5月2日
2020.05.01
「04 調べる(出かける)」(熊澤辰徳 選)の解説文を掲載しました。
2020.04.23
「09 翻訳する」(大久保ゆう 選)の解説文を掲載しました。
2020.04.09
「15 社会のなかの知識:大学」(石井雅巳 選)の解説文を掲載しました。あわせてPOP一つを公開しました。
2020.04.02
2020.03.27
「14 社会のなかの知識:知識の社会史」(山本貴光・吉川浩満 選)の解説文を掲載しました。
2020.03.24
「10 集まる」(逆卷しとね 選)の解説文を掲載しました。
2020.03.12
「書評」欄に信濃毎日新聞書評欄における内田麻理香さんの書評を掲載しました。
  • 「閉塞感あるアカデミアに新風」(内田麻理香)信濃毎日新聞 2020年3月8日
2020.03.10
1月5日に開催した「『在野研究ビギナーズ』公式読書会」の記録が明石書店のWEBサイト「Webあかし」にて公開されました。「催し」欄に記事へのリンクをつけました。
  • 「『在野研究ビギナーズ』から考える 公式読書会」の記録@WEBあかし(明石書店)
2020.03.04
「フェア会場」に 一挙に6店舗を追加しました。
  • 丸善&ジュンク堂書店 梅田店  3/1~3/末
  • ジュンク堂書店 仙台TR店  3/6~5/10
  • 丸善&ジュンク堂書店 渋谷店  3/1~3/末
  • 丸善 広島店  3月~
  • 未来屋書店 岡山店  3月~
  • 紀伊國屋書店 横浜店  2/中~
2020.03.03
京都大学生活協同組合の書評誌『綴葉』にて『在野研究ビギナーズ』を取り上げていただきました。「書評」欄に書誌と編著者(荒木優太)からのリプライを掲載しました。
  • 話題の本棚「野に在るは賢者か フリーライダーか」(書評者:とうこ)、書評誌『綴葉』2020年3月号(No.385号)
2020.02.26
「07 読みながら考える」(読書猿 選)の解説文を掲載しました。
2020.02.21
「13 ビジネスとマーケティング」(朱 喜哲 選)の解説文を掲載しました。
2020.02.18
「14 社会のなかの知識:知識の社会史」(山本貴光・吉川浩満 選)の選書リストを掲載しました。
2020.02.14
「8 論文を書く」項目所収の『アカデミック・スキルズ』、第3版が刊行されたとのこと。
2020.02.13
『できる研究者の論文生産術』、重版出来とのこと。
2020.02.10
「5 調べる(はなしを聴きに行く)」(朴沙羅・安井大輔・團康晃 選)の選書リストを掲載しました。
2020.02.06
「15 社会のなかの知識:大学」(石井雅巳 選)の選書リストを掲載しました。あわせて3つのPOPを公開しました。
2020.02.05
開催会場が新たに二店舗増えました。「フェア会場」に追加しました。
  • ジュンク堂書店 三宮店(2月10日から)
  • ジュンク堂書店 吉祥寺店(2月1日から)
2020.02.04
「催し」欄に下記情報を追加しました。
  • 荒木優太*×河野真太郎「研究の場-在野とアカデミアとこれから」『在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活』(明石書店)刊行記念@本屋B&B
2020.02.03
週刊新潮 1月30日号掲載記事がWEB公開されました。「インタビュー」欄も更新しておきました。
  • 倉本さおり「ベストセラー街道をゆく!:「学ぶ」の意味を改めて捉え直す在野研究者たちの生活と実践」ブックバン
選書作業終了後に出版された関連書二冊をリストに追加しました。
2020.02.01
紀伊國屋書店新宿本店での開催は昨日(1/31)で終わってしまいましたが、本日から、紀伊國屋書店全国店舗にて「紀伊國屋 じんぶん大賞 2020 記念ブックフェア」がスタートしました。じんぶん大賞第三位を受賞した『在野研究ビギナーズ』も並べていただいています。
2020.01.31
紀伊國屋書店新宿本店でのフェア開催が終了しました。12/14から一月半ほどの間にほんとうに沢山の方にご訪問いただき、フェアを契機に複数の書籍が重版されるという前代未聞の怒涛の展開となりました。ご訪問、ご購入いただいた皆さんに、あらためまして深く御礼申し上げます。
2020.01.27
「03 在野のための推薦本」所収の 安酸敏眞『人文学概論』、増刷が確定したとこのことです(2月7日出来予定)。このフェアをきっかけとした増刷は、これで四冊目となりました。
2020.01.25
「12 シチズンサイエンス(市民科学)」(中村征樹 選)の解説文を公開しました。また本項目所収の二冊に対する選者POPを掲載しました。
「インタビュー」欄を更新しました。
  • 担当編集者インタビュー「ベストセラー街道をゆく!」(インタビュアー 倉本さおり) - 週刊新潮 1月30日号
2020.01.24
「12 シチズンサイエンス(市民科学)」(中村征樹 選)の選書リストを公開しました。また本項目所収の二冊に対する選者POPを掲載しました。
  • マイケル・ニールセン『オープンサイエンス革命』
  • マーカス・ウォールセン『バイオパンク』
2020.01.21
「フェア会場」記載の情報を更新しました。
  • 新規参加: ジュンク堂京都店
  • 開催期間の確定: 紀伊國屋書店新宿本店 1月末まで
  • 開催期間の確定: ジュンク堂書店池袋本店 2月末まで
「6 調べる(行政文書を読む)」(酒井大輔 選)の選書リストを掲載しました。
2020.01.17
「第2回本が好き!レビュー大賞」、応募は本日までです。
以下のPOPを公開しました。
2020.01.14

2020.01.14
「催し物」欄に2020年02月07日(金)に下北沢で開催される下記イベントを掲載しました。
  • 荒木優太×田村義也「南方熊楠に学ぶ、勝手にはじめる研究生活」
「13 ビジネスとマーケティング」(朱 喜哲 選)の解説文を掲載しました。
2020.01.11
当フェアがきっかけとなって二つの本の重刷が決まったとのことです。おめでとうございます。 このうち『民法研究ハンドブック』は、1/10に紀伊国屋書店新宿本店に5冊入荷しましたが、即日完売してしまいました。連休明けにはさらに数冊入荷するとのことですので、しばらくお待ちください。『できる研究者の論文生産術』の方は、大量の在庫で皆さんのご来店をお待ちしています。
2020.01.10
本日 10日から、ジュンク堂書店池袋本店でもフェアが始まります。かなり大規模な展開になると伺っています。「フェア会場」欄を更新しました。
2020.01.10
「11 仕事場を振り返る」(酒井泰斗・秋谷直矩 選)の解説文を掲載しました。
2020.01.07
紀伊國屋書店 新宿本店につづき、くまざわ書店 山形店・武蔵小金井北口店でもフェアが始まりました。このあと、さらに全国の他の書店でも開催される予定です。「フェア会場」欄を設置しました。
2020.01.07
「08 論文を書く」(工藤郁子 選)の解説文を掲載しました。
2020.01.06
「インタビュー」欄に下記記事を登録しました。
  • 熊澤辰徳インタビュー「学は野に咲く(中) アマチュア生物学者」 京都新聞 2020年1月5日
2020.01.05
『ビギナーズ』公式読書会、盛況のうちに終了しました。ご参加いただいた皆さま、どうもありがとうございました。
2020.01.04
『在野研究ビギナーズ』が、書評でつながる読書サイト「本が好き!」によるレビュー大賞の対象書籍にノミネートされました。250~300字の未発表書評が選考対象です。締め切りは2020年1月17日です。
2020.01.03
「1『ビギナーズ』執筆者たちの在野な成果」の選書リストを掲載しました。
2020.01.01
「10 集まる」(逆巻しとね 選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.31
「04 調べる(出かける)」(熊澤辰徳 選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.28
朝日新聞12月28日朝刊にて黒沢大陸さんに「書評委員が選ぶ「今年の3点」」の一冊に選んでいただきました。「ご紹介」欄に掲載しました。
2019.12.27
「07 読みながら考える」(読書猿 選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.26
『在野研究ビギナーズ』が「紀伊國屋じんぶん大賞2020 読者と選ぶ人文書ベスト30」第三位を受賞しました。投票していただいた皆さん、ありがとうございました。これにあわせて増刷(第三刷)も決定しました。
選書者たちによる書籍紹介ツイートをトゥギャッターにまとめています。フェアパンフレットと併せて御覧ください。 各書籍タイトル横のアイコン からも紹介ツイートに飛べるようにしておきました。
2019.12.25
12月21日発売の『ビジネス・ロー・ジャーナル』にて大屋雄裕さんにブックガイド「ポピュリズムと交通整理」の一冊に選んでいただきました。「ご紹介」欄に掲載しました。
2019.12.20
「9 翻訳する」(大久保ゆう選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.17
「8 論文を書く」(工藤郁子選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.14
12月13日発売の『週刊読書人』にて與那覇潤さんに『在野研究ビギナーズ』を今年の三冊のうちの一つに選んでいただきました(WEBでも公開されています)。「ご紹介」欄に掲載しました。
2019.12.14
いよいよ本日14日からブックフェアスタートです(すでに昨日中に書籍の配架は完了しています)。フェア期間はおよそ一ヶ月。ぜひ期間中にフェア会場をご訪問ください。
フェア紹介ページのほうは 「02 伝説の在野人たち」(荒木優太選)の解説文を掲載しました。
2019.12.13
「02 伝説の在野人たち」(荒木優太選)の選書リストを掲載しました。
2019.12.12
いよいよ今週末14日から紀伊國屋書店新宿本店にてブックフェア「調べ・考え・書き・伝え・集まるための書棚散策」 が始まります。このページも、先頭の画像をフェア仕様に変更したほか、「03 在野のための推薦本」の選書リストを掲載しました。
2019.12.10
「催し物」欄に下記イベントの情報を掲載しました。
  • (1/28)荒木優太*×小林えみ(編集者)「在野研究ビギナーズが出版するには」
2019.12.10
「各地の催し」項を作成し、下記イベントを掲載しました。
  • (12/14)第37回「土曜の会」(関西の言語教師の勉強会)
  • (12/21)名古屋哲学研究会12月例会:ミニ・シンポジウム「ポスドク・ 非常勤問題の現状と課題」
2019.12.09
読売新聞朝刊(12/1)に掲載された三中信宏さん(進化生物学)の書評がWEBでも公開されました。「書評、ご紹介」欄にリンクを掲載しました。
2019.12.08
「催し物」欄に2019年1月5日に開催する「公開読書会」の情報を掲載しました。
  • 荒木優太(司会)×工藤郁子×星野健一×酒井泰斗「『在野研究ビギナーズ』公式読書会」
2019.12.08
「執筆物」「書評、ご紹介」欄に書評とインタビューをリストしました。
  • Close up TOKYO「在野研究の成果:石井雅巳『西周と「哲学」の誕生』堀之内出版」(五十嵐太郎)『東京人』2020年1月号、都市出版
  • kotobaの森:著者インタビュー「知る喜び、考える楽しみを実現する実例集」(インタビュアー 広坂朋信)『kotoba』2020年冬号、集英社
2019.12.05
代官山人文カフェの刊行イベント、いよいよ今週末です。お申し込みお忘れなく。
2019.12.03
朝日新聞のウェブサイト「好書好日」で、荒木優太インタビューが公開されました。インタビュアーは篠原諄也さんです。「執筆物、催し」欄にリンクを掲載しました。
  • 「大学にいなくても学問はできる! 「在野研究ビギナーズ」荒木優太さんインタビュー」 朝日新聞社「好書好日」
2019.12.01
「書評、ご紹介」欄に下記記事を登録しました。
  • 読売新聞 朝刊(2019年12月1日、三中信宏)
2019.11.30
『在野研究ビギナーズ』が大阪大学生協で1位とのこと。
  • Book Best 10 2019年10月 - 全国10生協の書籍部で、今売れている本のベストテンを紹介します - 全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
2019.11.22
「書評、ご紹介」欄に下記記事を登録しました。
  • 『望星』2019年12月号(pp. 102-103、沢渡 曜)
  • 本の要約サイト flier(石田 翼)
  • 『週刊読書人』 2019年11月22日号(6面、長瀬海)
2019.11.21
「執筆物、催し」欄に下記記事を登録しました。
  • プラスインタビュー「なぜいま「在野研究者」なのか:『在野研究ビギナーズ』編著者・荒木優太氏インタビュー」集英社新書プラス
2019.11.19

2019.11.13
「催し」欄を更新しました。ただいま、下記日程で本書関連書店イベントを準備中です。
  • 2月7日 東京 19:30~21:00
  • 3月4日 東京 20:00~22:00
2019.11.05
12月7日に代官山蔦屋書店にて鼎談イベントが開催されます。 「催し」欄に催事情報を記載しました。
2019.11.03
『AERA』11月11日号(No.51)の「アエラ読書部」(p.66)のコーナーに、石飛伽能さんの書評が載りました。「書評」欄にリストしました。
2019.11.01
今年も「紀伊國屋じんぶん大賞2020──読者と選ぶ人文書ベスト30」の読者投票が始まりました。ぜひ『在野研究ビギナーズ』への投票をお願いします。
2019.11.01
10月30日発売の 週刊新潮2019年11月7日号 「十行本棚」にて『在野研究ビギナーズ』を取り上げていただきました。「ご紹介」欄にリストしました。
2019.10.31

2019.10.23
株式会社ABEJAのWEB誌「Torus(トーラス)」に荒木優太インタビューが掲載されました。 「執筆物」欄にリストしておきました。
2019.10.21
ただいま発売中の「週刊ポスト」11/1号(10月21日発売))で 井上章一さんに『在野研究ビギナーズ』をご紹介いただきました。
  • 井上章一「『大学制度』の外で小さな輝きを放つ現役学者による寄稿集」
「ご紹介」欄にリストしておきました。
2019.10.17
来週10月25日(金)に、『在野研究ビギナーズ』執筆陣のうち二人(工藤・朱)が登壇するイベント「ロケーションベースドマーケティングカンファレンス Japan2019」が開催されるとのことです。
2019.10.16
9月に八重洲ブックセンター本店で行なわれたイベントの模様が明石書店のWEBサイトにアップされました。 「催し>終了した催し物」欄からもリンクを張っておきました。
2019.09.29
「書評、ご紹介」欄に 日本経済新聞 朝刊(2019/9/28)での紹介記事を掲載しました。
2019.09.26
おかげさまで発売後数日で増刷が決まった『在野研究ビギナーズ』ですが、そろそろ一部書店に第二刷が並び始めたようです。
2019.09.25
「執筆陣からの応答」欄を作成し、 を掲載しました。
2019.09.17
現代ビジネス、工藤寄稿記事への反応まとめへのリンクを「執筆物」掲載しました。
『在野研究ビギナーズ』、一週間たっても勢いが落ちません。昨日くらいから Amazonの「哲学」分野売れ筋ランキングで2位にランクアップしていました。記念にキャプチャをとっておきました。
2019.09.16
講談社「現代ビジネス」に掲載された
  • 工藤郁子「「推し研究者」「推し学者」をつくったら、人生がときめいた話」
「執筆物」に掲載しました。
2019.09.13

2019.09.11
なんと、発売数日で重版が決まりました。おそろしい...
2019.09.11
『在野研究ビギナーズ』、おかげさまで昨日より Amazonの「日本の思想」ランキングで一位 (「哲学」 で3位、 「思想」 で7位)になっています。 瞬間的なものかとは思いますが、記念にキャプチャしておきました。

2019.09.10
「版元ドットコム」のページで荒木優太さんによる序文「あさっての方へ」の一部が読めるようになっていました。
2019.09.09
講談社「現代ビジネス」に掲載された
  • 荒木優太「「在野研究」はいまなぜブームなのか? 大学の外から学問する面白さ」
「執筆物」に掲載しました。
あわせて、内容的に関連する学会報告へのリンクを掲載しました。
  • 荒木優太「在野研究はサークルイズムか?」(日本近代文学会2019年度春季大会報告)
2019.09.07
書籍紹介ページを公開しました。
2019.09.06
発売日となりました。情報の掲載を開始しました。
『在野研究ビギナーズ』、Kindle版も発売されました。
2019.08.30
ジュンク堂書店池袋本店一階に『在野研究ビギナーズ』ウォールが登場したようです。
2019.08.29
ページ制作を開始しました。
 - はてなブックマーク数

趣旨:はじめに

 このブックフェアは、荒木優太編著『在野研究ビギナーズ』の刊行を記念して開催するものです。
 本書は、研究教育機関に所属せずに研究を続けている者を中心とする書き手15人が、自らの生活と研究との関わりを振り返って記した論集です。それはまずは、「大学を卒業した後でも学問を続けたい」といった意向を持つ読者へむけた実例集として企画されたものでした。しかし本書はそうした当初の想定以上の支持(と反発)を受け、私たち執筆陣は、目下驚きをもってこの事態を受け止めています。
 これは、「在野研究」というキーワードが、自分で研究したいわけではない方にも、しかし自分に関係のあるものとして受け止められた ということなのでしょうが、それが どのようなことであるのか 私たちにもまだよく分かっていません。ともあれこの事態を踏まえ、このブックフェアでは、「在野研究」という鍵語から出発しつつも、それを超えて、かならずしも研究を指向してはいない書籍遊猟者たちにも向けて企画することにしました。具体的には「研究」という活動のなかから――調べ・考え・書き・集まり・伝えるといった――いくつかの契機を抜き出すとともに、そうした知的営みの環境のあり方への反省に資する諸分野の良書を紹介することを狙っています。
 いつも立ち寄る書棚の中でリストの広がりを確かめたり、いつもは立ち寄らない本棚の前で立ち止まってみたり。そんなふうに、書棚をふだんと違った眼で眺めるためにこのブックリストを利用していただけたら幸いです。(酒井泰斗)

書籍リストの構成と担当者

在野研究ビギナーズ
    • 序 あさっての方へ/荒木優太
  • 第一部 働きながら論文を書く
    • 第一章 職業としない学問/酒井大輔
    • 第二章 趣味の研究/工藤郁子
    • 第三章 四〇歳から「週末学者」になる/伊藤未明
    • インタビュー1 図書館の不真面目な使い方 小林昌樹に聞く
    • 第四章 エメラルド色のハエを追って/熊澤辰徳
    • 第五章 点をつなごうとする話/内田明
  • 第二部 学問的なものの周辺
    • 第六章 新たな方法序説へ向けて/山本貴光+吉川浩満
    • 第七章 好きなものに取り憑かれて/朝里樹
    • 第八章 市井の人物の聞き取り調査/内田真木
    • 第九章 センセーは、独りでガクモンする/星野健一
    • 第一〇章 貧しい出版私史/荒木優太
    • インタビュー2 学校化批判の過去と現在 山本哲士に聞く
  • 第三部 新しいコミュニティと大学の再利用
    • 第一一章 〈思想の管理マネジメント〉の部分課題としての研究支援/酒井泰斗
    • 第一二章 彷徨うコレクティヴ/逆卷しとね
    • 第一三章 地域おこしと人文学研究/石井雅巳
    • インタビュー3 ゼロから始める翻訳術 大久保ゆうに聞く
    • 第一四章 アカデミアと地続きにあるビジネス/朱喜哲
  • 在野のための推薦本

“共に希望を語ること”
への手がかりが
ここに在る

熊野純彦(倫理学)

ブックフェア会場

2020年02月~[終了]

2020年03月~

2020年03月~

2020年03月01日(月)~3月末

2020年03月06日(金)~05月10日(日)

2020年03月01日(月)~3月末

2020年02月10日(月)~03月15日(日)

2020年02月01日(金)~[終了]

2020年01月17日(金)~02月29日

2020年01月10日(金)~2月29日(土)

2020年12月~[終了]

2019年12月末~[終了]

紀伊國屋書店 新宿本店 三階(カウンター前

2019年12月14日(土)~2020年1月31日(金)

書籍リスト

が付された書籍は、解説文では触れなかったもののトピックに関連するものとして選者が挙げたものです。
をクリックすると書籍の紹介文が開きます。

1『ビギナーズ』執筆者たちの在野な成果 (荒木優太)

貧しい出版者
貧しい出版者政治と文学と紙の屑
荒木優太
ISBN 978-4-8459-1705-1
2017年
信頼を考える
信頼を考えるリヴァイアサンから人工知能まで
小山虎 編
ISBN 978-4-326-10270-9
2018年
日本政治学会 編
木鐸社
ISBN 978-4-8332-2518-2
2017年
弥永真生、宍戸常寿 編著
ロボット・AIと法
有斐閣
ISBN 978-4-641-12596-4
2018年
日本記号学会 編
ハイブリッド・リーディング新しい読書と文字学
新曜社
ISBN 978-4-7885-1486-7
2016年
熊澤辰徳
趣味からはじめる昆虫学
オーム社
ISBN 978-4-274-50583-6
2016年
アイデア編集部 編
文字とタイポグラフィの地平
誠文堂新光社
ISBN 978-4-416-11548-0
2015年
山本貴光
投壜通信
本の雑誌社
ISBN 978-4-86011-418-3
2018年
吉川浩満
人間の解剖はサルの解剖のための鍵である
河出書房新社
ISBN 978-4-309-02708-1
2018年
朝里樹
日本現代怪異事典副読本
笠間書院
ISBN 978-4-305-70878-6
2019年
酒井泰斗 ほか 編
概念分析の社会学2実践の社会的論理
ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1014-4
2016年
奥野克巳ほか著
たぐい 第一号
亜紀書房
ISBN 978-4-7505-1579-3
2019年
石井雅巳
西周と「哲学」の誕生
堀之内出版
ISBN 978-4-909237-41-5
2019年
小山虎 編
信頼を考えるリヴァイアサンから人工知能まで
勁草書房
ISBN 978-4-326-10270-9
2018年
柳与志夫ほか 編
公共図書館の冒険
みすず書房
ISBN 978-4-622-08682-6
2018年
山本哲士
イバン・イリイチ
文化科学高等研究院出版局
ISBN 978-4-938710-56-9
2009年
スコット・М・モンゴメリ 著 大久保友博 訳
翻訳のダイナミズム時代と文化を貫く知の運動
白水社
ISBN 978-4-641-12596-4
2019

 編著には単著にはない魅力がある。現役で活動している在野研究者たちの知的生活のノウハウを書いてもらった『ビギナーズ』は編著によって、言い換えれば、複数の著者によって構築されている。具体的には14の論考にくわえ、3人のインタビューからなる。政治学、法学、哲学、文学、宗教学、昆虫研究、活字研究、妖怪研究など、様々な分野の研究者を呼びつつ、国会図書館司書、学校化批判論者、翻訳研究者のインタビューを収めた本書最大の達成は、一人の研究者の視角からは見えてこない多様な研究スタイル、そして在野観が生き生きと披露されているところにあるだろう。開く/閉じる

 一口に研究といっても、一方には学術論文、さらには英語の査読論文を通す奴もいれば、他方には商業媒体で調べものの成果を世に問うたり、インターネットを駆使しながら知的発信をおこたらない奴もいる。そもそも専門領域の違いに応じて、個々人に課されるミッションはまるで異なる。いささか胡散臭い「在野」―とりあえずは大学に所属をもたないの意―についても同様だ。8時間労働×週5日の忙しさのなかで時間をなんとか捻出する働き者もいれば、ニートすれすれの人生博打感はなはだしいマイペース者もいる。同じ無所属だったとしても、当然、家族構成や性差、健康状態などで学知の見え方はずいぶん変わってくる。

 本書が編著であるということは、言い換えれば、学問に対する様々な見え方、その先にある様々なアクセスを決して切り捨てることなく、その多様性自体を大きな財産として捉えようとする企図を意味している。多様だからなんだってんだ、そんなのただ拡散しているだけだ? そうではない。「色々ある」ということを知ること自体が、ややもすれば硬直的になりがちな学問との付き合い方に、柔軟な姿勢とほんの少しだけ豊かな選択肢を与える。

 本書はだから、きれいに整理された一つのマニュアルよりもずっと実践的な、研究者サバイバルキットなのである。もしも鍛えられた読み方で全論考に目を通すのならば、生活習慣や思想がまるで違う執筆者のあいだに、いくつもの連絡線が引かれていることに読者は気づくはずだ。たとえば、矢印という表象文化の研究に取り組む伊藤未明と文学者と縁故のあった市井の人物の聞き取り調査をした内田真木は、ともに肩書きのおぼつかなさに頭を悩ませている。また、熊澤辰徳の昆虫研究と朝里樹の妖怪譚研究のあいだには一見なんの共通性もないようにみえるが、蒐集(コレクション)が大きな意味を持つという意味で、司書・小林昌樹がいう研究者とコレクターの近さへと読む者を導く。さらに、研究成果ではなく研究過程に目を向け、学会とは異なる集合を企図する酒井泰斗と逆卷しとねのあいだには、順接的な読み方だけでなく、東京と地方という地理的条件の差、持続的な学的共同体を目指すのか、それとも瞬間的な出会いに賭けるのか、といった目的意識と方法の違いがある。この論点は、後続する論考、地方の学的リソースを翻訳してアカデミズムの活性化を図ろうとする石井雅巳や、ビジネスとの連接によってアカデミズムの持続可能性を維持しようとする朱喜哲によってより深められる。

 学問はもっと自由なものでいい。しかし、手放しの自由はあまりに漠然としすぎていて、しばしば人を混乱させる。意図せぬ仕方で「トンデモ」におちいってしまうことも珍しくない。本書で登場する諸々の活動記録は、直接の模範とするというよりも、実例を介して読者が己の知的生活をチューンアップするための一個の目安となるだろう。在野研究者は、なろうと思えば誰にでもなれる。最初は勝手に自称しているだけなのだから。そこからどんな道を歩くのかは各人が決めることだ。ようこそ、『ビギナーズ』の世界へ!(荒木優太)

柳与志夫ほか編『公共図書館の冒険』

図書館は無料貸本屋?! 初期の図書館に小説本はなかった? 出版業界とは仲が悪いの? 今とは違う、別の選択肢が図書館にありえたのではないか。150 年の歴史に、これからの図書館を考えるヒントを探る。
小林昌樹

柳与志夫ほか編『公共図書館の冒険』

はじめて書かれた
カウンターの外にいる
わたしたちのための図書館史
読書猿

吉川浩満『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

人間がどうなっているか

人間はどうあるべきか
の間で問い続ける
Dainわたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

2伝説の在野人たち (荒木優太)

これからのエリック・ホッファーのために
これからのエリック・ホッファーのために在野研究者の生と心得
荒木優太
東京書籍
ISBN 978-4-487-80975-2
2016年
エリック・ホッファー自伝
エリック・ホッファー自伝構想された真実
エリック・ホッファー著中本義彦 訳
作品社
ISBN 978-4-87893-473-5
2002年
作品社編集部 編
作品社
ISBN 978-4-87893-577-0
2003年
三浦つとむ
国文社
1973年
原田大六
学生社
ISBN 978-4-311-20216-2
1998年
藤田中
西日本新聞社
ISBN 978-4-8167-0810-7
2010年
高群逸枝
日本図書センター
ISBN 978-4-8205-5775-3
1999年
『ビオストーリー』編集委員会
生き物文化誌学会
ISBN 978-4-8122-0540-2
2004年
谷川健一
晶文社
ISBN 978-4-7949-6278-2
1996年
河出書房新社 編
河出書房新社
ISBN 978-4-309-74052-2
2014年
南方熊楠
筑摩書房
ISBN 978-4-480-08110-0
1994年
水木しげる
KADOKAWA
ISBN 978-4-04-192907-0
1996年
赤松啓介
筑摩書房
ISBN 978-4-480-08999-1
2006年
赤松啓介
筑摩書房
ISBN 978-4-480-08894-9
2005年
相沢忠洋
講談社
ISBN 978-4-06-134022-0
1973年
片野ゆか
小学館
ISBN 978-4-09-389703-7
2006年
小阪修平
筑摩書房
ISBN 978-4-480-06315-1
2006年
小阪修平
宝島社
ISBN 978-4-8002-9692-4
2019年
村上篤直
ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-08384-8
2018年
村上篤直
ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-08385-5
2018年
宮台真司 ほか 著
ミネルヴァ書房
ISBN 978-4-623-06703-9
2013年

『ビギナーズ』は拙著『これからのエリック・ホッファーのために』の事実上の続篇となっている。通称『これエリ』は、かつて日本で活躍してきた在野研究者たちの人生と業績をコンパクトに紹介し、彼らのテクストから、いまなお示唆に富む「在野研究の心得」40項目を抽出した一書だ。開く/閉じる

 在野研究の花形、エリック・ホッファーはその自伝のなかで、充実した研究生活のためには一日6時間×週5日以上働いてはならないという独自の労働法をあみだし、言語学者の三浦つとむは『文学・哲学・言語』のなかで、労働者哲学者ディーツゲンを引合いに出しながら、半日はガリ版印刷の仕事で生活費を稼ぎつつもう半日は研究に当てるという、(現代でいうところの)ワーク・ライフ・バランスを調整していた。在野研究者にとって結婚するかどうか、子供をもうけるかどうか、といった家族の問題もひときわ大きい。ホッファーは生涯独身を貫いたが、たとえば平山遺跡を発掘した考古学者の原田大六は、妻であるイトノに経済的に依存していた。反対に、女性史学を立ち上げた高群逸枝は、大恋愛をへて結婚した橋本憲三というパートナーのケアのなかでその仕事を完成させた。『火の国の女の日記』では「K」と表記されている。在野の困難もさることながら、女性であることから生じる様々な社会的障壁は、『ビオストーリー』第四号の民俗学者・吉野裕子へのインタビューにて語られた大器晩成型学問道が多くを物語っている。

 人文知の一つの特徴は、現在のはやりすたりに安易に流されることなく過去に学んで未来に活かす時代横断的な足腰の強さにあろうが、このように具体的な研究人生を捉え直してみる大きなメリットは、私たちが抱く悩みにはかなり普遍性があり、一〇年、五〇年、一〇〇年単位ではあまり変わり映えしない点に自覚的になれるということだ。効用は二つある。一つは、いま抱いているかもしれない不満や焦燥感は決して個人的なものではなく過去の在野研究者の多くも感じていたものであり、孤独感をこじらせることなく自分の研究ペースに向き合えるということ。もう一つは、障壁のミクロな次元での突破という方向もふくめた在野研究の戦略を、精緻に練れることだ。在野ならではの障壁を解消するには、ミクロ(個人的工夫)とマクロ(社会政策)、そのあいだに広がるグラデーションを正確に見極めなければならず、これに失敗してしまうと、本来はマクロで取り組むべきものをミクロ問題に還元してしまったり、ミクロにできることがあるにもかかわらずマクロ的対応策の展望が暗いために無能感にひたったりする。

 編集者から民俗学者に転身した谷川健一は『独学のすすめ』のなかで、巨人・南方熊楠を筆頭に偉大な民俗学者を紹介しているが、考古学にならびに郷土史をふくめた民俗学において在野の学者が数多く活躍してきた歴史のなかには戦略のための大きなヒントがあるだろう。専門を異にしても、民俗学的アプローチという仕方で活かせる場面は意外に多い。赤松啓介は柳田国男の「常民」(一般大衆のようなもの)を批判して『非常民の民俗文化』のなかでそのカテゴリーから外れる「非常民」の概念を提出したが、生々しい差別や性を前提とする研究的姿勢は、アカデミズムの追従にならない在野ならではの独自なアングルに資するかもしれない。

 また、大学危機によってギスギスしているからこそ研究者同士の互助会的な試みは再評価されて然るべきだ。そのとき、廣松渉の寺子屋塾の門を敲き、その延長線上で自身も団地の集会室で勉強会を開催していた小阪修平の『思想としての全共闘世代』や、私塾・小室ゼミにて数多くの有能な学者を輩出した小室直樹の伝記などは、直接の参考になるに違いない。過去は生半可な現在よりもずっとアクチュアルなのである。(荒木優太)

3在野のための推薦本 (『在野研究ビギナーズ』巻末より)

人文学概論
人文学概論
安酸敏眞
ISBN 978-4-86285-192-5
2014年
できる研究者の論文生産術
できる研究者の論文生産術どうすれば「たくさん」書けるのか
ポール・J・シルヴィア 著高橋さきの 訳
ISBN 978-4-06-153153-6
2015年
アイデア大全
アイデア大全創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
読書猿
フォレスト出版
ISBN 978-4-89451-745-5
2017年
コンサルタントの秘密
コンサルタントの秘密技術アドバイスの人間学
G・M・ワインバーグ
共立出版
ISBN 978-4-32002537-0
1990年
中根美知代 ほか 著
ベレ出版
ISBN 978-4-86064-236-5
2009年
隠岐さや香
科学アカデミーと「有用な科学」フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ
名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0661-3
2011年
丸山宏
企業の研究者をめざす皆さんへResearch that matters
近代科学社
ISBN 978-4-7649-0382-1
2009年
Kate L. Turabian
A Manual for Writers of Research Papers, Theses, and Dissertations: Ninth Edition.
University of Chicago Press
ISBN 978-0-226-43057-7
2018
木下是雄
理科系の作文技術
中央公論新社
ISBN 978-4-12-100624-0
1981年
濱尾章二
フィールドの観察から論文を書く方法観察事例の報告から研究論文まで
文一総合出版
ISBN 978-4-8299-1177-8
2010年
礫川全次
独学で歴史家になる方法
日本実業出版社
ISBN 978-4-534-05647-4
2018年
水木しげる
水木サンの幸福論
KADOKAWA
ISBN 978-4-04-192919-3
2007年
永幡嘉之
無明舎出版
ISBN 978-4-89544-467-5
2007年
山本義隆
駿台文庫
ISBN 978-4-7961-1618-3
2004年
ヘンリー・D・ソロー 著佐渡谷重信 訳
森の生活ウォールデン
講談社
ISBN 978-4-06-158961-2
1991年
竹内洋
中央公論新社
ISBN 978-4-12-101820-5
2005年
福井憲彦 編
勉誠出版
ISBN 978-4-585-23061-8
2018年
高美淑、高秉權、李珍景 ほか
インパクト出版会
ISBN 978-4-7554-0179-4
2008年
道場親信
みすず書房
ISBN 978-4-622-08559-1
2016年
伊藤邦武
プラグマティズム入門
筑摩書房
ISBN 978-4-480-06870-5
2016年
シェリル・ミサック著加藤隆文 訳
プラグマティズムの歩き方21世紀のためのアメリカ哲学案内 上
勁草書房
ISBN:978-4-326-19978-5
2019年
シェリル・ミサック著加藤隆文 訳
プラグマティズムの歩き方21世紀のためのアメリカ哲学案内 下
勁草書房
ISBN:978-4-326-19979-2
2019年
谷沢永一
PHP研究所
ISBN 978-4-569-62162-3
2002年
道場親信『下丸子文化集団とその時代』

読み書くことは
止まらない。
1950年代に活動した
すごい人たちを知ってください。
読書猿

4 調べる(出かける) (熊澤辰徳)

裏山の奇人
裏山の奇人野にたゆたう博物学(フィールドの生物学)
小松 貴
ISBN 978-4-486-01994-7
2014年
路上観察学入門
路上観察学入門
赤瀬川原平ほか 編
ISBN 978-4-480-02818-1
1993年
クリフォード・ドーベル著天児和暢訳
レーベンフックの手紙
ISBN 978-4-87378-807-4
2003年
中島 淳
湿地帯中毒身近な魚の自然史研究
ISBN 978-4-486-01999-2
2015年
ティモシー・フェリス著桃井緑美子訳 渡部潤一監修
スターゲイザーアマチュア天体観測家が拓く宇宙
ISBN 978-4-622-07757-2
2013年
沢田佳久
アストラ
ISBN 978-4-901203-50-0
2012年
山下泰平
「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本
ISBN 978-4-7601-5007-6
2019年
日本自然科学写真協会監修
超拡大で虫と植物と鉱物を撮る超拡大撮影の魅力と深度合成のテクニック
ISBN 978-4-8299-7217-5
2017年
鈴木文二、洞口俊博編
あなたもできるデジカメ天文学“マカリ”パーフェクト・マニュアル
ISBN 978-4-7699-1575-1
2015年
大阪市立自然史博物館編
標本の作り方自然を記録に残そう
ISBN 978-4-486-01769-1
2007年
京都大学フィールド情報学研究会編
フィールド情報学入門自然観察,社会参加,イノベーションのための情報学
ISBN 978-4-320-12234-5
2009年

 どこかに出かけて「何か」を見て集めるというのは、知的好奇心をくすぐる楽しみだ。時には、個人的な興味からの観察や収集がきっかけで学問がはじまることもある。

 特に生物学は観察から始まった学問といえる。クリフォード・ドーベル『レーベンフックの手紙』を読むと、一人の織物商人が自作の顕微鏡で観察した記録を手紙に書いたことから微生物学がはじまったことがわかる。今から約300年前の話だ。開く/閉じる

また中島淳『湿地帯中毒』、小松貴『裏山の奇人』は、どちらも野に出てまだ見ぬ生き物を追う研究者の自伝だ。対象とするフィールドや活動スタイルは異なるが、生き物を見つけて観察・採集する魅力が伝わってくると同時に、そこから研究者となるまでの道のりを辿れる。地道な観察や採集に支えられている基礎生物学の世界に触れて、身近な自然を見る眼が変わる二冊だ。

 もう一つ、観察からはじまった重要な分野に天文学がある。ティモシー・フェリス『スターゲイザー』は、宇宙の魅力にとりつかれて天体観測をする人々を描いたドキュメンタリー。アマチュアすごい、という話だけでなく、プロとの軋轢も含めた天文愛好家の姿が描かれた力作。やや専門的だが、読み物として長い夜のお伴にも。

 世にある多様な事物は何でも観察対象になる。誰も見ていない対象を違った視点でアプローチすると、新たな発見が生まれることにつながる。赤瀬川原平他『路上観察学入門』では、考古学に対して、現代の事物を対象にした「考現学」という思想を踏まえ、街中の少し変なものを集めて人間活動のミクロな痕跡をたどる。また沢田佳久『醤油鯛』は、パック寿司に入っている醤油入れを集めて分類し、魚類図鑑を模してまとめた一冊。研究か否かという線引きを考えるより、純粋に面白がることが大切と感じられる一冊だ。さらに山下泰平『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』では、ネットの海で大量に公開された歴史的資料を読んで「遊んでいる」うちに発見した「明治娯楽小説」という忘れられた文学ジャンルを面白おかしく紹介している。ネット時代の新しい古書蒐集の形だが、決して研究書ではなく、あくまで明治のエンタメ小説の紹介本だという。それにしては内容が濃い。

 さていよいよ出かけよう、というその前に、「道具」を携えておくと観察や収集の深みが増す。特にカメラは記録にも観察にも役立つので、ノートと合わせて持っておくべきだ。さらに少しの工夫を凝らすと、日本自然科学写真協会『超拡大で虫と植物と鉱物を撮る』のように「見えない小さな世界」を写すこともできれば、鈴木文二他『あなたもできるデジカメ天文学』にある天文観察のツールにもなる。また発見の宝庫である生き物や岩石などの自然史標本の集め方、活用法をやさしく解説した本として、大阪市立自然史博物館『標本の作り方』がある。さらに京都大学フィールド情報学研究会『フィールド情報学入門』は、自然科学や人文科学の本格的なフィールドワークの様々な手法を紹介している。研究を志す人はもちろん、個人的に観察や採集を楽しむ人も、プロの技術を知ることでものごとの着眼点が変わり、観察の仕方や収集物の活用の幅が広がるだろう。

 街中にも森林にも驚くほど沢山の観察対象がある。子どものように石をめくれば違う世界が見える。自分だけの「眼」をもって野に出て、気になるものに光を当てれば、身の周りの見えかたはガラッと変わるはずだ。(熊澤辰徳)

熊澤辰徳著『趣味からはじめる昆虫学』

SNSに投稿された虫の写真から新種が見つかるくらい、まだまだ謎多き昆虫の世界。観察や採集をとおして昆虫を見る「目」が変われば、きっと新発見につながります。
写真家による美しい虫の拡大写真も満載。
熊澤辰徳

5 調べる(はなしを聴きに行く) (朴沙羅・安井大輔・團康晃)

エスノグラフィー・ガイドブック
松田素二ほか編
嵯峨野書院
ISBN 978-4-7823-0347-4
2002年
オーラルヒストリーとは何か
オーラルヒストリーとは何か
アレッサンドロ・ポルテッリ 著 朴沙羅 訳
水声社
ISBN 978-4-8010-0148-0
2016年
山崎朋子
サンダカン八番娼館
文藝春秋
ISBN 978-4-16-714708-2
2008年
藤本和子
塩を食う女たち聞書・北米の黒人女性
岩波書店
ISBN 978-4-00-602303-4
2018年
永野三智
みな、やっとの思いで坂をのぼる水俣病患者相談のいま 特装版
ころから
ISBN 978-4-907239-33-6
2018年
青木 深
めぐりあうものたちの群像戦後日本の米軍基地と音楽1945-1958
大月書店
ISBN 978-4-272-52086-2
2013年
ポール・E・ウィリス著 熊沢誠 ほか 訳
ハマータウンの野郎ども
筑摩書房
ISBN 978-4-480-08296-1
1996年
ジェイ・マクラウド 著 南保輔 訳
ぼくにだってできるさアメリカ低収入地区の社会不平等の再生産
北大路書房
ISBN 978-4-7628-2561-3
2007年
鶴田幸恵
性同一性障害のエスノグラフィ性現象の社会学
ハーベスト社
ISBN 978-4-86339-015-7
2009年
六車由実
驚きの介護民俗学
医学書院
ISBN 978-4-260-01549-3
2012年
前田拓也 ほか 編
最強の社会調査入門これから質的調査をはじめる人のために
ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1079-3
2016年
前田拓也ほか編『最強の社会調査入門──これから質的調査をはじめる人のために』

誰かに話を聴きたいとき、誰に、どういうふうに話を聞けば良いのか。聞いた話をどうやってまとめていけばいいのか。調査をしてから論文執筆を行うまでの研究者の苦労や工夫が具体的なエピソードと共に紹介されている社会調査の入門書です。指定の論文と合わせて読むことで、論文の執筆過程を追体験できます。
團 康晃

6 調べる(行政文書を読む) (酒井大輔)

会議の政治学
会議の政治学
森田 朗
慈学社出版
ISBN 978-4-903425-09-2
2006年
番号を創る権力
番号を創る権力日本における番号制度の成立と展開
羅 芝賢
ISBN 978-4-13-036271-9
2019年
瀬畑 源
公文書をつかう公文書管理制度と歴史研究
青弓社
ISBN 978-4-7872-3332-5
2011年
林 修三
法令用語の常識
日本評論社
ISBN 978-4-535-00404-7
1975年
法制執務研究会 編
新訂 ワークブック法制執務 第2版
ぎょうせい
ISBN 978-4-324-10388-3
2018年
礒崎陽輔
分かりやすい法律・条例の書き方 改訂版
ぎょうせい
ISBN 978-4-324-09195-1
2011年
阪田雅裕
政府の憲法解釈
有斐閣
ISBN 978-4-641-13148-4
2013年
飯尾 潤
日本の統治構造官僚内閣制から議院内閣制へ
中央公論新社
ISBN 978-4-12-101905-9
2007年
大山礼子
日本の国会審議する立法府へ
岩波書店
ISBN 978-4-00-431288-8
2011年
浅野一郎、河野久 編
新・国会事典 第3版
有斐閣
ISBN 978-4-641-13169-9
2014年
若林 悠
日本気象行政史の研究天気予報における官僚制と社会
東京大学出版会
ISBN 978-4-13-036272-6
2019年

 ああ、国や自治体の作成した文書を読むことになった―。読書や調査研究を進める中で、そういう場面に出会うこともあるかもしれない。もし、読者が行政文書に目を通すのが好きでたまらない「通」だというなら、以下のブックガイドは不要だろう。だが、カタいお役所言葉で書かれた文章は、普通はとっつきにくい印象を与えるものだ。―というより私自身、この種のものは仕事の外ではできれば避けたい。なにより読書として楽しくはない。楽しくないテキストにつきあう時こそ、手引となるガイドが必要だ。 開く/閉じる

 まずは手始めに、文書の入手から。瀬畑源『公文書をつかう』は、行政文書を「つかう」歴史研究者の立場から、公文書管理制度を検討した本だ。実務者向けとは一味違う視角から、公文書管理の歴史と現在について見取り図を提供する。

 次に、行政文書の読み方について。これは一筋縄にいかない。第一に、多くは法令上の用語・テクニックの体系に統制されて記述されている。表現のわずかな差によって、権力の発動たる行政活動が可能になったり、ならなかったりする。この「霞が関文学」に習熟するために、新米の法制官僚が脇において読む体系書がある。語彙については林修三『法令用語の常識』、文法については法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務 第2版』と礒崎陽輔『分かりやすい法律・条例の書き方 改訂版』が手堅い。これらはいわば「霞が関の隠れたベストセラー」だ。
 第二に、行政文書は当然ながら、政府の法解釈に基づき議論が展開される。この法解釈は、法令のほか通知、閣議決定、答申、報告書などの各種リソースに事実上支えられている。個別法については(しばしば所管省庁が刊行する)逐条解説書があるので、ここは阪田雅裕『政府の憲法解釈』のみ挙げよう。
 第三に、行政文書は政治過程の中で生まれる。審議会の報告書がどのように生まれるかは、森田朗『会議の政治学』で追体験できる。同書は政府の審議会に多数参加してきた、著者ならではの審議会運営の記述的分析だ。また、国会・政党と行政の関係(政官関係という。)の全体像を把握するには飯尾潤『日本の統治構造』、国会については大山礼子『日本の国会』がいまだ基本書だ。意外に知られていない国会制度については、浅野一郎・河野久編『新・国会事典 第3版』があると心強い。
 最後に、行政文書を利用した最近の好著を紹介しよう。羅芝賢『番号を創る権力』は日本のマンナンバー制度を始めとした、番号制度の重厚な比較歴史分析である。医療保険の被保険者記号番号の付番方法といった、ミクロな行政活動への解像度の高さに読者は舌を巻くはずだ。天気予報の行政史を扱った若林悠『日本気象行政史の研究』も印象深い。気象行政というテーマの興味深さに加えて、セオドア・ポーター『数値と客観性』の枠組を援用した同書の分析は、科学史・科学社会学的な関心をひく面白さがある。いずれの本も、随所に資料入手の苦労がにじみ出ている。
 これらを通して、行政文書の山がそれなりに秩序立って見えてきたとすれば、その魅力にはまる第一歩だ。(酒井大輔)

森田 朗『会議の政治学』

政府の審議会では、ものごとがどのように決定されるのか?
政治学で定評のある「会議の回し方」の研究。
座長・委員・事務局必携の定番書。
酒井大輔

7 読みながら考える (読書猿)

情報爆発
情報爆発初期近代ヨーロッパの情報管理術
アン・ブレア 著住本規子 ほか 訳
中央公論新社
ISBN 978-4-12-005110-4
2018年
形象の力
形象の力
エルネスト・グラッシ著原 研二訳
ISBN 978-4-560-08308-6
2016年
本居宣長 著白石良夫 全訳注
本居宣長「うひ山ぶみ」全訳注
講談社
ISBN 978-4-06-291943-2
2009年
読書猿
独学大全
ダイヤモンド社
2020年刊行予定
M.J. アドラー、C.V. ドーレン 著外山滋比古 ほか 訳
本を読む本
講談社
ISBN 978-4-06-159299-5
1997年
読書猿
問題解決大全
フォレスト出版
ISBN 978-4-89451-780-6
2017年
E. S. ファーガソン 著藤原良樹 ほか 訳
技術屋 エンジニア の心眼
平凡社
ISBN 978-4-582-76667-7
2009年
E. R. クルツィウス著
ISBN 978-4-622-00716-6
1971年
桑木野幸司
記憶術全史―ムネモシュネの饗宴
ISBN 978-4-06-514026-0
2018年
チャールズ・A・レイブ、 ジェームズ・G・マーチ 著佐藤嘉倫 ほか 訳
社会科学のためのモデル入門
ハーベスト社
ISBN 978-4-938551-18-6
1991年
こころざす

 生きることや考えることと違って「研究」はそう思い定めて開始される。本居宣長『うひ山ぶみ』は、学問の道に分け入ろうとする初学者に本居宣長が与えた「物まなび」のあり方と心構えを記したもの。
 「独学」という語は「研究」より広く、教師なしの自習から独立研究家の営為まで含んでいる。読書猿『独学大全』は、条件も準備も整わないうちに「物まなび」の中に飛び込んだ、あらゆる種類の独学者を支援する書。開く/閉じる

あつめる

 学ぶにしろ考えるにしろ、ある段階を過ぎれば、誰かに教えられた一冊に対して行う「点の読書」では足りなくなる。アドラー『本を読む本』は読者が自分のテーマに基づき複数の書物を読み合わせるシントピカル読書を到達点とする。
 思考の材料は自己の外にのみ求められるのではない。自分の内からそれらを引き出す発見=発想の技法を古今東西の知的営為から集成した読書猿『アイデア大全』『問題解決大全』は元は一冊として構想されたもの。

むすびつける

 我々の思考は真空で行われるのでない。例えばファーガソン『技術屋の心眼』は、エンジニアの問題解決が機構や形状といった形で古来から綿々と受け継がれた共通資産を組み合わせることと、現場の経験による不断の修正の往復で支えられていることを明らかにする。
 クルティウス『ヨーロッパ文学とラテン中世』は同じことを文学・芸術の分野で実証する。さまざまなトポス(定番の言い回しやイメージ)が、どのように受け継がれていったか具体的な作品・箇所を示しつつ、幾筋ものトポスの継承の糸がヨーロッパという文化共同体を編み上げていくさまを示して見せる。

せいりする

 覚えたいものをあらかじめ用意した 記憶の場所 ロクス に結び付けることを核とする記億術は、新世界と古典の発見や印刷術等によって生じた大量の知識を扱う技術として流通し出したルネサンス期に流行した。桑木野幸司『記憶術全史─ムネモシュネの饗宴』はこの時期の記億術を紹介した決定版ともいえるもの。
 ブレア『情報爆発』は、書き込みや抜き書き、書物のノンブル、目次、索引、そして事典といった情報技術が同じ情報爆発に対処するために導入された経緯を明らかにし、知的営為の技術の連続性を明らかにしてくれる。

みたてる

 研究は妄想ではない。アカデミアに承認されるためには、研究の意義と正当性を論証し、同業者のレビューに耐えなくてはならない。しかし論証の域内で知的営為が止むわけではなく、ヒトはその外側でも学び考えることを続けている。グラッシ『形象の力』は古代レトリックから受け継がれる論証知以外の知的伝統を擁護し、その再統合を意図したもの。
 レトリックは強力だが危うい。対象のある側面に光を当てるがそれ以外の部分を退かせ見えにくくする。しかし同じことは理論モデルにも言える。モデルから様々な推論を導き出せ我々の認識を拡大し得るのは、モデルが元の現象から多くを取り落としている故だ。レイブ&マーチ『社会科学のためのモデル入門』は、複雑な社会現象を相手に、そんなモデルとうまく付き合うための汎用の取説である。(読書猿)

8 論文を書く (工藤郁子)

民法研究ハンドブック
大村敦志ほか
ISBN 978-4-641-13234-4
2000年
法を学ぶ人のための文章作法 第2版
井田 良、佐渡島紗織、山野目章夫
ISBN 978-4-641-12612-1
2019年
伊丹敬之
有斐閣
ISBN 978-4-641-07649-5
2001年
森博嗣
講談社
ISBN 978-4-06-216636-2
2010年
河野哲也
慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2527-7
2018年
慶應義塾大学教養研究センター 監修 慶應義塾大学日吉キャンパス学習相談員 著
慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2177-4
2014年
日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会 編
丸善出版
ISBN 978-4-621-08914-9
2015年
木下是雄
中央公論新社
ISBN 978-4-12-100624-0
1981年
結城浩
筑摩書房
ISBN 978-4-480-09526-8
2014年
野矢茂樹
産業図書
ISBN 978-4-7828-0211-3
2006年
佐藤望 編著 湯川武、横山千晶、近藤明彦 著
慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-1960-3
2012年
田髙寛貴、原田昌和、秋山靖浩
有斐閣
ISBN 978-4-641-12611-4
2019年
指宿信、齊藤正彰 監修 いしかわまりこ、藤井康子、村井のり子 著
日本評論社
ISBN 978-4-535-52162-9
2016年
林紘一郎、名和小太郎
勁草書房
ISBN 978-4-326-00033-3
2009年
黒木登志夫
中央公論新社
ISBN 978-4-12-102373-5
2016年
岩淵悦太郎
日本評論社
ISBN 978-4-535-57475-5
1979年
清水幾太郎
岩波書店
ISBN 978-4-00-415092-3
1959年

 論文を読むことが巨人の肩の上にのって彼方を見渡すことだとすると、論文を書くことは、巨人の一部になって誰かをその肩の上にのせることだ。

ルールとフィクション

 研究は、新規性を含む正しい主張を、他者も検討できるような仕方で提示し防御せよとの規範のもとで行われるゲームである『在野研究ビギナーズ』205頁)。新規性や正当性は、研究者共同体の知的蓄積に照らして判断される。その意味で、論文執筆は個人的であると同時に協働的な営為を伴う。開く/閉じる

 大村敦志ほか『民法研究ハンドブック』は、論文執筆のモデルとして、研究者個人と学界の相互作用を示す。そして、執筆前の構想段階と公表後の反響(が芳しくないこと)を受け止める段階において、共同体への貢献という視座が大切だと教えてくれる。民法学という領域の特殊性があってもなお参照する価値がある書籍だ。伊丹敬之『創造的論文の書き方』も、読み手を意識することの重要性を様々なアナロジーを用いて語る。また、深遠で大きな研究課題を一人で一度に解く必要がないことも示唆されており、少し肩の力を抜くことができる。

躓きの石と妨げの岩

 論文は、今はまだない新しい知見を読者に伝えるために書く。だから「光り輝くゴールなんてもちろんない。周囲はどの方向も真っ暗闇で、自分が辿ってきた道以外になにも見えない。たとえ飛躍的に進むことができて、なにかの手応えを感じても、そこには『これが正しい』という証明書は用意されていない。それが正しいことは、自分で確かめ、自分に対して説得する以外にない」(森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』)。
 この道筋を探索する手引きとして、河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』が好適だ。ポール・J・シルヴィア『できる研究者の論文生産術』は、闇に飲み込まれないよう、執筆サポートグループを作って精神的負荷を緩和すべきと提案する。これは、誤った前提や危険な飛躍に気付き改訂する契機としても機能するだろう。加えて、慶應義塾大学教養研究センター『学生による学生のためのダメレポート脱出法』は、陥穽を具体的に展開しており必読である。
 そして、研究対象の権利への配慮、著作権、オーサーシップ等の研究(者)倫理に関しては、日本学術振興会『科学の健全な発展のために』でおさえたい。

月下の門とマイスタージンガー

 読者が必要とする情報を過不足なく示し、説得的にわかりやすく書くには、スタイルとテクニックを知っておくと有益だ。木下是雄『理科系の作文技術』は定番である。結城 浩『数学文章作法 推敲編』も、充実した各論とチェックリストを備え実践に役立つ。また、論証の明晰化のために、野矢茂樹『新版 論理トレーニング』で鍛えてもよいだろう。
 ただ、平易さと緻密さがトレードオフになる場合もあり、悩ましい。井田良ほか『法を学ぶ人のための文章作法』は、術語と独自文法によって曖昧さや多義性を排そうとする法学の研究者と、誰にでも了解可能な表現を目指す文章指導の専門家による稀有な共著であり、豊富な添削例を示してくれる。
 巨人を倒そうと外から一石を投じるのは愉しい。同時に、巨人の一部となって共同体の知見を着実に更新するのも面白い。巨人から学び、さらに先へと進めていく。それは、矮人が巨人を内側から倒す方法であり、広い意味での学恩に報いる過程である。(工藤郁子)

岩淵悦太郎『悪文』

1960年の初版刊行以来60刷以上を重ねるライティング指南書の定番。
編著者岩淵悦太郎が投げかける総論「悪文のいろいろ」に対し、若手(当時)7人が「どうすればよいか」をテーマごとに説明する。巻末の「悪文をさけるための五十か条」は、そのまま壁に貼っておきたい。戦後国語改革の勢いが感じられる好著。
高橋さきの(翻訳家)

岩淵悦太郎『悪文』

わたしもこれで書いてます。
(できない間は書けません....)

吉川浩満

9 翻訳する (大久保ゆう)

トランスレーティッド
トランスレーティッド高山宏の解題新書
高山宏
青土社
ISBN 978-4-7917-7233-9
2019年
翻訳権の戦後史
翻訳権の戦後史
宮田 昇
ISBN 978-4-622-03668-5
1999年
野村喜和夫
二十一世紀ポエジー計画
思潮社
ISBN 978-4-7837-1602-0
2001年
酒井直樹
日本思想という問題翻訳と主体
岩波書店
ISBN 978-4-00-028552-0
2012年
宮田昇
翻訳権の戦後史
みすず書房
ISBN 978-4-622-03668-5
1999年
篠原有子
映画字幕の翻訳学 日本映画と英語字幕
晃洋書房
ISBN 978-4-7710-3102-9
2018年
村上春樹 原作 NHK出版 編
村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解
NHK出版
ISBN 978-4-14-035127-7
2014年
柴田元幸
翻訳教室
朝日新聞出版
ISBN 978-4-02-264664-4
2013年
高橋源一郎、柴田元幸
小説の読み方、書き方、訳し方
河出書房新社
ISBN 978-4-309-41215-3
2013年
小澤 勉
情報・技術・科学系分野のための翻訳の基礎技法
シーエーピー出版
ISBN 978-4-916092-76-2
2007年
マシュー・レイノルズ 著秋草俊一郎 訳
翻訳 訳すことのストラテジー
白水社
ISBN 978-4-560-09685-7
2019年
実川元子
翻訳というおしごと
アルク
ISBN 978-4-7574-2860-7
2016年

 ひとえに「翻訳する」といっても翻訳行為そのものが多様なのだが、なぜか翻訳関連書籍というと本邦では翻訳のコツや軽い裏話に終始しがちだ。
 しかし本質的な論点を扱った「翻訳論」を取り上げるなら、詩人・野村喜和夫による『二十一世紀ポエジー計画』所収「ベンヤミンのひそみにならって」で語られた言語間・テクスト間の「間白の距離」を見出すあり方は、唯一無二と言っていい重要性があり、凡百の翻訳等価論を一蹴する(初出『現代詩手帖』一九九六年七月号を読んだときの衝撃たるや!)。さらに言語措定の恣意性を指摘する酒井直樹『日本思想という問題』が、翻訳者の「間白」を創り出す能力理解への有益な補助線となるだろう。開く/閉じる

 さらに翻訳論は(ベンヤミンを俟つまでもなく)訳者のあとがきや解題で多く現出するが、言ってみれば翻訳の「あとがきを書く」ことの成否が訳書の出来に相関する(ことがよくある)。高山宏『トランスレーティッド』は、かつて『ユリイカ』二〇〇五年一月号で紹介された幻の案がようやく成った新刊だが、のち一書一作になるもの書けずして何が人文書のあとがきか、とも思わせてくれる。
 翻訳の実作業に関わる学究的文章は無類に面白く、「実務家の翻訳研究」なら、著作権エージェントとしての多年の活躍をもとにした宮田昇『翻訳権の戦後史』や、字幕翻訳者としてのキャリアのあと大学院博士課程で堅実な勉強と研究を重ねて生まれた篠原有子『映画字幕の翻訳学』は、一種の重厚なあとがきとして読み応え抜群である。
 訳者あとがきはテクスト往還後の考察に耐えうるもの、衝撃を与えるものであってもよく、たとえば『村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解』と柴田元幸『翻訳教室』を合わせ読むと、一テクストの「原文→英訳→再翻訳」の行き来から「翻訳の間白」が楽しめる。また無数の注で「完全読解」したはずの前書が、後書ゲストの英訳者ジェイ・ルービンの(文学好きなら気づいて当然の)一言で冒頭から粉砕されるのにも気づけよう。
 そもそも訳すなら対象の内容だけでなく、書き方やレトリック・技巧などの初歩の理解が(うまく出来ないまでも)ほしい。人文書を訳す一学者に執筆経験がない、という事態はまずないと思うが、小説や記事の場合はままあったりする。高橋源一郎・柴田元幸『小説の読み方、書き方、訳し方』はその書く・読む・訳すのせめぎ合いが対談のかたちで覗けるし、小澤 勉『情報・技術・科学系分野のための翻訳の基礎技法』では「訳す前に書けるかどうか」が大きなテーマとして提示されている。
 つまり翻訳行為を始めるには意識的になることが肝要で、むろん翻訳事象自体の様々なスタイルや戦略性を理解しておけるとなおいい。マシュー・レイノルズ/秋草俊一郎訳『翻訳』は最新の翻訳研究が反映された良質の入門書であるし、もし訳すに当たって翻訳業界のことを把握しておきたいのなら、実川元子『翻訳というおしごと』がよくまとまってわかりやすい。両書ともそのあと読める参考図書リストつきで、「ふつうの入口」としては絶好の書物だ。(大久保ゆう)

10 集まる (逆卷しとね)

出逢いのあわい
出逢いのあわい九鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理
宮野真生子
ISBN 978-4-909237-42-2
2019年
批評キーワード辞典
批評キーワード辞典文化と社会を読む
大貫隆ほか編著
ISBN 978-4-7674-3472-8
2013年
平倉 圭
かたちは思考する芸術制作の分析
東京大学出版会
ISBN 978-4-13-010143-1
2019年
スコット・F. ギルバート、デイビッド イーペル 著正木進三 ほか 訳
生態進化発生学エコ‐エボ‐デボの夜明け
東海大学出版部
ISBN 978-4-486-01859-9
2012年
大園享司
生き物はどのように土にかえるのか動植物の死骸をめぐる分解の生物学
ベレ出版
ISBN 978-4-86064-533-5
2018年
倉谷滋
進化する形進化発生学入門
講談社
ISBN 978-4-06-515112-9
2019年
中谷礼仁
セヴェラルネス( プラス ) 事物連鎖と都市・建築・人間
鹿島出版会
ISBN 978-4-306-04552-1
2011年
ティム・インゴルド+石倉敏明+今井朋他
表現の生態系世界との関係をつくりかえる
左右社
ISBN 978-4-86528-249-8
2019年
マリリン・ストラザーン 著大杉高司 ほか 訳
部分的つながり
水声社
ISBN 978-4-8010-0135-0
2015年
アナ・チン 著赤嶺 淳 訳
マツタケ
みすず書房
ISBN 978-4-622-08831-8
2019年
川上弘美
大きな鳥にさらわられないよう
講談社
ISBN 978-4-06-517446-3
2019年
ジュディス・バトラー著佐藤嘉幸、清水知子訳
青土社
ISBN 978-4-7917-7045-8
2018年
Manuel Delanda
Edinburgh University Press
ISBN 978-1-4744-1363-3
2016年
Donna J. Haraway
Duke University Press
ISBN 978-0-8223-6224-1
2016年

 集まることは簡単だ。しかし集まりは人を縛る。集まりは解散されることなく継続し、形骸化する。役割の固定や集まりの自己目的化に難しさを感じたなら、立ち止まってみるのも悪くない。
 偶然、集まる。宮野『出逢いのあわい』は九鬼周造が説く日常的な偶然性の様相をハードに哲学する。集まるの始まりは偶然だ。どんなに長く続いているわたしも、瞬間ごとにたまたま始まっている一期一会の集積である。開く/閉じる

 集まるは巻きこまれ。平倉『かたちは思考する』は作品と共に平倉自身がつくりなおされていくプロセスの記述である。テクストは身体を欠いた記号として作品を遠くから説明するのではなく、作品と平倉が癒着する接触領域の形象として生成する。
 わたしは集まる。ギルバート+ イーペル『生態進化発生学』は、生態学と発生学、進化論の知見を集めて生命の単位を再考する。わたしは、それぞれ異質な細胞、遺伝子のモジュール、細菌、食べものとなる生物、天候の絡みあいとしてある。
 集まるは分解する。大園『生き物はどのように土にかえるのか』は、動物の死骸の周囲に一時的に現れる生態系を紹介する。つかの間の集まりが連続する土には、生産/消費の資本主義的ロジックではなく、合成/分解の終わりなき生成プロセスがある。
 集まるは進化する。倉谷『進化する形 進化発生学入門』は発生のプロセスから進化を問い直す。異種間に共通の遺伝情報でも、その機能は遺伝子モジュールの集まり方によって変わる。わたしたちは集まり方の進化の過程を体現している。
 集まるは転用する。中谷『セヴェラルネス ( プラス ) は、ある事物が、本来期待されていた機能とは異なる「いくつかの」機能を発揮する可能性を語る。どの集まりも、事物の別様なつなぎに転用される、ささやかな可能性を秘めている。
 集まるは集まるを誘う。大貫+河野+川端編『文化と社会を読む批評キーワード辞典』は従来の孤独な知性による批評を、協働研究という集まりへと転換し、蛍の発光のごとくさらなる批評の凝集を誘う。
 集まるは収まらない。インゴルド他『表現の生態系』は群馬と呼ばれる行政区とは一致しない生態系を生成するアート実践の記録である。差異は断絶の谷ではなく、集まるのために開いたエッジである。
 集まるはつながる。ストラザーン『部分的つながり』は自己/他者の倫理に依存しない、異なるつながりかたを模索する。完全に辿りなおすことのできない半端なつながりが世界を新たに構築し、内省は別様の集まりへと開かれる。
 キノコに集まる。チン『マツタケ』は決して無垢ではない、害を含む多種の 動的な編成 ( アセンブリッジ ) を物語る。どんな研究も協働研究であることは、世界の果てに生きる協働研究者、マツタケが教えてくれる。
 外で集まる。川上『大きな鳥にさらわれないよう』は交流の途絶えた共同体が点在する架空の未来を語る。ヒトは同じものの再生産をいくら心がけても、いつのまにか未知との出逢いを希うようになる。
 集まるをはじめるのに勇気はいらない。集まるはもうはじまっているから、いつも途中参加になってしまうけれども、あなたが参加したときにはどんな集まりも原理上集まりなおされることになる。(逆卷しとね)

河野真太郎ほか編著『批評キーワード辞典──文化と社会を読む

学問の「用語」と私たちの使う「ことば」を架橋する。
それは同時に私たちの「ことば」と「社会」を架橋することでもあり、「社会」を想像しなおすことでもあります。
河野真太郎(英文学・文化研究)

11 仕事場を振り返る (酒井泰斗・秋谷直矩)

ワークプレイス・スタディーズ
ワークプレイス・スタディーズはたらくことのエスノメソドロジー
秋谷直矩 ほか 編
ハーベスト社
ISBN 978-4-86339-083-6
2017年
ソーシャル・マジョリティ研究
ソーシャル・マジョリティ研究コミュニケーション学の共同創造
綾屋紗月 編
金子書房
ISBN 978-4-7608-2668-1
2018年
ワークプレイス・スタディーズ
Doing Design Ethnography
Crabtree A. ほか 編
Springer
ISBN 978-1-4471-6160-8
2012年
細馬宏通
介護するからだ
医学書院
ISBN 978-4-260-02802-8
2016年
戸江哲理
和みを紡ぐ子育てひろばの会話分析
勁草書房
ISBN 978-4-326-60303-9
2018年
前田泰樹、西村ユミ
遺伝学の知識と病いの語り遺伝性疾患をこえて生きる
ナカニシヤ出版
ISBN 978-4-7795-1291-9
2018年
樫田美雄 ほか 編
医療者教育のビデオ・エスノグラフィー
晃洋書房
ISBN 978-4-7710-2957-6
2018年
高梨克也 編
多職種チームで展示をつくる日本科学未来館「アナグラのうた」ができるまで
ひつじ書房
ISBN 978-4-89476-731-7
2018年
三島聡 編
裁判員裁判の評議デザイン市民の知が活きる裁判をめざして
日本評論社
ISBN 978-4-535-52115-5
2015年
加藤浩、有元典文 編
認知的道具のデザイン
金子書房
ISBN 978-4-7608-9282-2
2001年
筒井淳也、前田泰樹
社会学入門社会とのかかわり方
有斐閣
ISBN 978-4-641-15046-1
2017年
前田泰樹 ほか 編
ワードマップ エスノメソドロジー人びとの実践から学ぶ
新曜社
ISBN 978-4-7885-1062-3
2007年
前田泰樹、西村ユミ 編
協働する看護急性期病院のエスノグラフィー(仮)
新曜社
-
2020年刊行予定
五十嵐素子 ほか 編
子どもの豊かな学びの世界をみとるこれからの授業分析の可能性(仮)
新曜社
-
2020年刊行予定

 作業フォーマットとトレーニング抜きに研究は成り立たない。しかし研究のあり方について語られるとき、そのスタイルが実はかなり多様であることはあまり強調されることがない(おそらく多くの専門的研究者は一分野でのみ訓練を受けるからだろう)。この項では、そうした多様性のひとつの極ともいえるエスノメソドロジー(以下EMと略)を中心に、主として様々な仕事場に録画機材を持ち込んで行われる、働き方に関する研究を紹介したい。開く/閉じる

 EM研究は〈ある場で何が行われているのか〉そして〈それはどのようにして可能になっているのか〉を、人びとが実際にやっていることに即して記述的に解明しようとするものである。こうした研究にとって、安価な録音機器の登場は重要な画期となった。それによって、実際に行われていることを記録し、繰り返し聴いて確認することが可能になったからである。この研究スタイル─繰り返し聴いて - 言葉を与えること─は素朴なものであり、仮説演繹法、モデル・ビルディング、データのコード化(~分類)といった標準的な研究の訓練を受けた人なら強烈な違和感を覚えるかもしれない。しかしそうであるが故に、EMを知ることには幾つかの利得がある。仕事場における人々のありふれた(しかし多くは言葉で表しにくい)ふるまいに言語的表現を与える作業はそれ自体が面白く、そうした素朴なやり方でも研究が成り立つことを知れば、研究にアクセスするハードルが下がる─より柔軟にアクセスできるようになる─人もいるだろうからだ。
 近年ではこの領域でも邦語文献が増えてきたため、まず紹介したいのは秋谷ほか編『ワークプレイス・スタディーズ』である。同書は仕事場に録画機材を持ち込んだEM研究の来し方を概観するブックガイド的な性格をもっており、古典から最近の業績まで基本文献が網羅的に紹介されている。本書から自分の関心にかなう書籍を探すことから始めるのがよいだろう。同書以降に出版された好著としては、介護現場における実践を細やかに分析した細馬『介護するからだ』や、子育て広場に集う人びとの会話分析研究である戸江『和みを紡ぐ』などがある。
 EM研究者は、他分野の研究者、さらには研究対象となる現場の人々と協働した研究を盛んにおこなってきた。たとえば、看護学・現象学との協働事例である前田・西村『遺伝学の語りと病い』や、発達障害者の側から社会の多数派のルールを研究する綾屋編『ソーシャル・マジョリティ研究』などがその例である。録画機材の導入はこうした協働的研究をさらに加速した感がある。複数人による協働的な分析や、さらに、分析結果をベースとした応用的展開まで見越した研究プロジェクトを組織することが容易になったからである。たとえば樫田他『医療者教育のビデオ・エスノグラフィー』は非定型発達の学生を現代的な医学教育プログラムにどのように包摂していくかを、医療者教育に携わる人びとらとの映像データの共有と分析を通して考えるものである。また科学未来館における多職種チームによる展示の経緯を追った高梨編『多職種チームで展示をつくる』、裁判員裁判における市民参加のデザインを法曹関係者とともに考える三島編『裁判員裁判の評議デザイン』などもある(後者は専門家チームの協働事例である)。人びとの活動を支援する情報機器の開発という応用的利用例としては加藤・有元編『認知的道具のデザイン』がわかりやすい。こうした協働と応用の展開は約30年の蓄積があり、教科書もいくつか出版されている。Crabtreeほか編 Doing Design Ethnography は現時点でもっともまとまった教科書である。
 先に述べたように、EMは通常の科学的研究作法に従っていない。それが通常の作法とどのような関係にあるのかを教えてくれるのが筒井・前田『社会学入門』である。同書は、無作為化比較対照試験からEMまでにわたる極めて多様な研究潮流をコード化を軸として位置づけつつ、多数の研究事例とともに紹介したものである。さらにEMそのものについて詳しく知りたい読者は、この分野の教科書である前田ほか編『ワードマップ エスノメソドロジー』を─特に事例と分析を紹介している第Ⅲ部から─読んでみて欲しい。(酒井泰斗・秋谷直矩)

概念分析の社会学2
酒井泰斗ほか編『概念分析の社会学2』

実践において人びとがそのさなかに用いている“概念”=実践を組織する“方法”
これが本書の公式である。 では、“概念=方法”の分析とは何をすることなのか。
障害や医療、司法、ソーシャルワーク、教育、ビジネス、スポーツ、観光。 この中の一つにでも関心をもったら、是非、手に取ってみて欲しい。 1つの主題を読むことで“概念が分析できる”よう、設計されている。
「なるほど」と思ったら、すでに本書の虜だ。
西村ユミ(看護学)

12 シチズンサイエンス(市民科学) (中村征樹)

オープンサイエンス革命
オープンサイエンス革命
ミカエル・A.ニールセン 著高橋洋 訳
紀伊国屋書店
ISBN 978-4-314-01104-4
2013年
バイオパンク
バイオパンクDIY科学者たちのDNAハック!
マーカス・ウォールセン著矢野真千子訳
NHK出版
ISBN 978-4-14-081532-8
2012年
蔵治光一郎、洲崎燈子、丹羽健司
森の健康診断100円グッズで始める市民と研究者の愉快な森林調査
築地書館
ISBN 978-4-9910427-0-6
2006年
みんなのデータサイトマップ集編集チーム
図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集
みんなのデータサイト出版
ISBN 978-4-9910427-0-6
2018年
高木仁三郎
市民の科学
講談社
ISBN 978-4-06-292228-9
2014年
江渡浩一郎
進化するアカデミア「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来
イースト・プレス
ISBN 978-4-7816-0995-9
2013年
クリス・アンダーソン 著関美和 訳
MAKERS21世紀の産業革命が始まる
NHK出版
ISBN 978-4-14-081576-2
2012年

 在野研究者の貢献が、いま、サイエンスの世界で大きな注目を集めている。市民が科学研究の一翼を担う「シチズンサイエンス(市民科学)」である。
 シチズンサイエンスの代表的なプロジェクトの一つが、オンラインゲームを活用してゲーム愛好家たちがたんぱく質の構造予測を行う「フォールド・イット」である。そこでは専門の科学者たちを悩ましてきた問題が、アマチュア科学者たちの手で次から次へと解決されていく。なぜそのようなことが可能なのか。開く/閉じる

シチズンサイエンスのもつポテンシャルを理解するには、集合知のダイナミズムが科学のルールを大きく変えつつあることを指摘する『オープンサイエンス革命』がよい出発点となろう。
 シチズンサイエンスがもっとも活発なのが、環境や生態系の分野である。『森の健康診断』は、愛知県の矢作川流域で、プロの科学者と市民参加者たちが協働して取り組んだ人工林調査の事例の報告である。プロの研究者だけでは不可能な膨大なデータ収集が、多数のアマチュア科学者たちの手で可能になるのも、シチズンサイエンスの強みである。
 東日本大震災を契機とした福島原発事故では、放射能汚染が問題になった。日本各地で「市民放射能測定室」が立ち上がり、多くの市民が自分たちの手で放射能測定を行ってきた。その集大成が『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』である。同書がその特徴として掲げる「自分たちが測定したいものを測定し、測定したい精度まで細かく測定できる」とはどういうことか。国の行う調査とはなにが違うのか。大学での研究職を辞し、反原発の運動に生涯を捧げた高木仁三郎は『市民の科学』で、オルターナティブとしての「市民の科学」について論じているが、シチズンサイエンスの意義を考える際に避けて通れない論点だろう。
 以上で見てきた通り、シチズンサイエンスはかなり多様な実践である。しかしなかでも異色なのが、自宅や街角の実験室でバイオテクノロジーの実験を行う「DIYバイオ」だろう。実験キットが安価で手に入るようになり、自宅に実験機材一式を揃えて遺伝子改変実験を行う人たちが増えている。『バイオパンク』は、DIYバイオについて幅広く紹介するだけでなく、DIYバイオがどのようにして誕生してきたか、その思想的背景にも迫る好著である。DIYバイオに対しては、各種規制のもとにある大学の外部で行われることに伴う倫理的な問題や危険性がよく指摘されるが、本書を読めばそのような表層的な次元で対応すべき問題ではないことに気付くだろう。
 シチズンサイエンスは、サイエンスとはなにか、また、その担い手であるアカデミアとはなにかについて、多くの問題を提起している。ユーザー参加型学会「ニコニコ学会β」は、従来の学会のありかたに対して問題提起を行い、アカデミアの進化を独自の仕方で模索してきた。そのことを関係者たちの証言から浮き彫りにするのが『進化するアカデミア』である。また、『MAKERS』が描くように、3Dプリンターの登場に後押しされて、アマチュアの活動はものづくりの世界にも大きな地殻変動をもたらしている。欧米ではサイエンスとテクノロジーはしばしば切り離して捉えられるが、シチズンサイエンスの今後を考えるうえで無視できない動きだろう。(中村征樹)


マイケル・ニールセン『オープンサイエンス革命』

科学のルールが、いま大きく変わりつつあります。
数学の未解決問題や宇宙の謎が、集合知のダイナミズムにより解明されていく。
どの事例もおもしろく、多くの可能性を実感させてくれる一冊です。
中村征樹

マーカス・ウォールセン『バイオパンク』

遺伝子改変などの実験を、自宅のキッチンでも行うことができる現代。
そのようなDIYバイオの広がりとその思想を描くのが本書です。
科学を専門家や企業の手から解き放ち、市民や途上国の人々へと届けようとするバイオハッカーたちの物語は、実に魅力的です。
中村征樹

13 ビジネスとマーケティング (朱 喜哲)

戦争広告代理店
戦争広告代理店情報操作とボスニア紛争
高木徹 著
講談社
ISBN 978-4-06-275096-7
2005年
「蓋然性」の探究
「蓋然性」の探究古代の推論術から確率論の誕生まで
ジェームズ・フランクリン 著南條郁子 訳
みすず書房
ISBN 978-4-622-08687-1
2018年
バイロン・シャープ 著前平謙二 訳 加藤巧 監訳
ブランディングの科学誰も知らないマーケティングの法則11
朝日新聞出版
ISBN 978-4-02-331649-2
2018年
D. M. ハンセン、L. J. パーソンズ、R. L. シュルツ 著阿部誠 監訳 パワーズ恵子 訳
マーケティング効果の測定と実践計量経済モデリング・アプローチ
有斐閣
ISBN 978-4-641-16520-5
2018年
Ilya Katsov著株式会社クイープ 訳
AIアルゴリズムマーケティング自動化のための機械学習/経済モデル、ベストプラクティス、アーキテクチャ
インプレス
ISBN 978-4-295-00474-5
2018年
イアン・ハッキング 著広田すみれ、森元良太 訳
確率の出現
慶應義塾大学出版会
ISBN 978-4-7664-2103-3
2013年
エリオット・ソーバー 著松王政浩 訳
科学と証拠
名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0712-2
2012年
武邑光裕
さよなら、インターネットGDPRはネットとデータをどう変えるのか
ダイヤモンド社
ISBN 978-4-478-10584-9
2018年
西口一希
実践 顧客起点マーケティングたった一人の分析から事業は成長する
翔泳社
ISBN 978-4-7981-6007-8
2019年
戸田山和久、唐沢かおり 編
〈概念工学〉宣言!哲学×心理学による知のエンジニアリング
名古屋大学出版会
ISBN 978-4-8158-0941-6
2019年
ジョン・ロールズ ほか 著中島吉弘、松田まゆみ 訳
人権についてオックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ
みすず書房
ISBN 978-4-622-03667-8
1998年
大谷卓史
情報倫理技術・プライバシー・著作権
みすず書房
ISBN 978-4-622-08562-1
2017年
L.フロリディ 著春木良且、犬束敦史 監訳 先端社会科学技術研究所 訳
第四の革命情報圏(インフォスフィア)が現実をつくりかえる
新曜社
ISBN 978-4-7885-1522-2
2017年
中谷常二 編
ビジネス倫理学読本
晃洋書房
ISBN 978-4-7710-2330-7
2012年

 世の少なからぬひとはビジネスに携わり、広くマーケティングに従事する。消費者としての関与まで含めれば、その営みと無関係なひとはいない。他方、学術コミュニティから見ると、そうした営みは真正の研究からは程遠いものと映りがちだろう。
 例えば『ブランディングの科学』は近年ビジネス界を席巻する「エビデンスに基づくマーケティング・サイエンス」の普及版と言える一冊で、マーケターであれば読んでおきたいが、研究者からは上述の印象を裏切るものではないかもしれない。他方、ようやく訳された同分野の古典的著作『マーケティング効果の測定と実践』に対しては、もう少し居住まいを正させられるのではないか。さらに最新の動向を伝える『AIアルゴリズムマーケティング』に手を伸ばしてもらえば、同分野がすでに学際的な総合領域である実態が見えるだろう。 開く/閉じる

 逆にデータを扱うマーケターにとって、自身の武器がどこから来たのかを知るのは気の利いた蘊蓄以上の価値がある。『確率の出現』は、データを用いた推論がいつ・どうやって誕生したのかを名手ハッキングらしい鮮やかさで紹介する。こうした概念の歴史と地続きに自身の営みがあることに知的興奮を覚えたならば、さらにその前史をも射程に収めた『「蓋然性」の探究』も間違いなく楽しめる。両書の端々に伺える確率や統計をめぐる哲学的な考察は、「統計の哲学」として営まれる分野である。『科学と証拠』は、同分野を知るうえで格好の一冊である。
 次は現在と未来に目を転じてみよう。データビジネスの今後は、欧州のGDPRなど行政動向と不可分である。『さよなら、インターネット』からは、欧米におけるデータ行政がどれだけ人文社会的な理念に駆動されているか知ることができる。たとえばGDPR制定にも関わったEU倫理委員会のメンバーには情報倫理学者のフロリディがいる。
 さて、差別化戦略は世の常、マーケティングの次なる潮流は定性的なものへと移ろいつつある。目端の利いたマーケターが『実践顧客起点マーケティング』が謳うn=1の声を聴こうとするとき、本ガイド5節で扱う社会科学分野で育まれた質的調査の方法論が具体的な手引きとなるだろう。
 もっとも『〈概念工学〉宣言!』が宣言するように、哲学分野さえ実践における有用性を標榜する時代に、冒頭の対立構図は過去の遺物かもしれない。しかし、「概念工学」を謳うのであればこそ、まさしくマーケティングやPRといったビジネスで育まれてきた技法こそが、その典型であるという事実にも目を向けてみるべきだ。
『戦争広告代理店』は、1990年代初頭のボスニア紛争において、PRのプロたちによる「概念工学」とも呼びうる営みがいかに効果を発揮したのかを克明に描いたドキュメントである。同書を念頭に、ボスニア紛争へのリアクションとして開催された1993年のアムネスティ講義を書籍化した『人権について』を読む。そのとき、ロールズやローティらリベラルを体現する哲学者たちは、PR戦略に乗せられて世論形成に一役買った傀儡とさえ映るかもしれない。しかし、だとしてもなお同書に掲載された論考には価値があるのではないか。そうした問いを問うとき、私たちはビジネスと地続きにあるアカデミアが固有に持ちうる役割について考えることができるのである。(朱喜哲)

小山虎編著『信頼を考える』

在野の「野」って、分野の「野」と違うのか?
本書を通読すれば、「学際」とは、それぞれの専門分野が対峙する問いの仄かな重なりを結節点として広がる学知の「野」に「在」り思考するということ(=在 野の思考)だとわかるだろう。
そんな信頼できる一冊を片手に、たまには「野」に出て学問的「おひとりさま」をやめてみるのも楽しいよ。
奥田太郎(倫理学)

14 社会のなかの知識:知識の社会史 (山本貴光・吉川浩満)

明六雑誌の政治思想
明六雑誌の政治思想阪谷素と「道理」の挑戦
河野有理
ISBN 978-4-13-036240-5
2011年
知識の社会史
知識の社会史知と情報はいかにして商品化したか
ピーター・バーク 著井山弘幸、城戸淳 訳
ISBN 978-4-7885-0910-8
2004年
アンソニー・グラフトン 著 ヒロ・ヒライ 監訳 福西亮輔 訳
テクストの擁護者たち―近代ヨーロッパにおける人文学の誕生
勁草書房
ISBN 978-4-326-14828-8
2015年
古川 安
科学の社会史―ルネサンスから20世紀まで
筑摩書房
ISBN 978-4-480-09883-2
2018年
セオドア・M・ポーター 著 藤垣裕子 訳
数値と客観性―科学と社会における信頼の獲得
みすず書房
ISBN 978-4-622-07781-7
2013年
田尻祐一郞
江戸の思想史―人物・方法・連環
中央公論新社
ISBN 978-4-12-102097-0
2011年
前田 勉
江戸の読書会―会読の思想史
平凡社
ISBN 978-4-582-76871-8
2018年
井田太郎、巻和宏 編
近代学問の起源と編成
勉誠出版
ISBN 978-4-585-22099-2
2014年
時枝誠記
国語学史
岩波書店
ISBN 978-4-00-381504-5
2017年
宮田親平
「科学者の楽園」をつくった男―大河内正敏と理化学研究所
河出書房新社
ISBN 978-4-309-41294-8
2014年
鶴見俊輔 編 『思想の科学』五十年史の会
源流から未来へ―『思想の科学』五十年
思想の科学社
ISBN 978-4-7836-0099-2
2005年
ピーター・バーク 著 井山弘幸 訳
知識の社会史2―百科全書からウィキペディアまで
新曜社
ISBN 978-4-7885-1433-1
2015年
アン・ブレア 著 住本規子、廣田篤彦、正岡和恵 訳
情報爆発―初期近代ヨーロッパの情報管理術
中央公論新社
ISBN 978-4-12-005110-4
2018年
鹿野政直
近代日本の民間学
岩波書店
ISBN 978-4-00-420249-3
1983年
大久保利謙
明六社
講談社
ISBN 978-4-06-159843-0
2007年
金子 務
オルデンバーグ―十七世紀科学情報革命の演出者
中央公論新社
ISBN 978-4-12-003618-7
2005年

 ここでは大学以外での研究活動にかんする文献をご紹介しよう。

1:社会のなかの学術

 そのつもりで歴史を眺めると、現在私たちが知っている大学が現れる以前から、研究といえそうな活動が行われてきたことが分かる。その長い歴史の一端を垣間見させてくれる本としてピーター・バーク『知識の社会史』がある。同書ではヨーロッパで活版印刷術が実用化された15世紀から18世紀において知識がどのように生産・流通していたかを検討している。続篇もある。 開く/閉じる

 現代における学術の基礎は、古代ギリシアやローマからイスラーム世界での翻訳と保存を経てヨーロッパで発展したものだった。その大きな流れに触れた本として、人文学についてはアンソニー・グラフトン『テクストの擁護者たち』を、自然科学については古川安『科学の社会史』を挙げたい。

 セオドア・M・ポーター『数値と客観性』は、19から20世紀の欧米における保険数理士、技術官僚、陸軍など、社会において科学的思考がどのように扱われたかを描き出している。『在野研究ビギナーズ』では大きくとりあげられなかった知識生産の場として、同書が扱う企業、役所、軍の役割は重要である。ことに近代以降の社会を特徴づける数字の洪水は、これらの組織とそこに属する「在野研究者」たちによって日々生み出されているのである。

2:日本の場合―江戸から明治へ

 西洋流の学術制度を移入する以前の日本では、江戸幕府や各藩、あるいは私塾を舞台に知識の探究が行われていた。田尻祐一郞『江戸の思想史』でその多様性を、前田勉『江戸の読書会』では集団による検討の様子を知ることができる。

 江戸の蘭学から明治期の欧米を手本とした学術制度確立に至る過程では、日本における従来の知と西洋流の知のあいだにさまざまな対立や折衷が生じた。井田太郎+藤巻和宏編『近代学問の起源と編成』は、人文社会科学を中心として各分野の事例を検討している。

3:在野のケーススタディ

 在野での研究活動のケーススタディとして4冊を選んだ。河野有理『明六雑誌の政治思想』は、森有礼、福沢諭吉、西周といった明治の啓蒙知識人たちが集った明六社の活動を扱う。時枝誠記『国語学史』は、中世の歌学から江戸の国学、そして明治以降の言語学を踏まえた国語学という大きな流れを追った労作。宮田親平『「科学者の楽園」をつくった男』は、理化学研究所の創設前後(1917)から敗戦までの経緯を、関係者の証言や資料から浮かび上がらせている。戦後の例として、思想の科学研究会の活動を振り返って位置づけた鶴見俊輔編『『思想の科学』五十年 源流から未来へ』がある。同会が半世紀にわたって刊行した『思想の雑誌』(1946-1996)は、アカデミアでは研究対象とならなかった民衆の思考様式にも目を向けていた。(山本貴光・吉川浩満)

井田太郎・巻和宏 編『近代学問の起源と編成』

閉塞感に悩む人に。
日本の諸学はどこから来て、どこへ行くのか─。学問を取り巻き、規定してきた要素は、時の移ろいで忘却されるが、理系でさえ無縁でない。時代や環境、制度や人に注目し、総合的な眼を備えた書物は、いまだ少ない。本書は全領域をカバーするものではないが、“現代”の位置を考えるため、設計された。
井田太郎(日本文学研究)

河野有理『明六雑誌の政治思想――阪谷素と「道理」の挑戦』

国のかたちもアカデミアも定かならぬ明治のはじめ
江戸の知的遺産と西洋の衝撃をともに承け
侃侃諤諤、知的討議を戦わせた雑誌があった
この『明六雑誌』を舞台に、並みいる洋学者の中
奮闘した儒学者阪谷素に焦点を当てて講究する好著
山本貴光

15 社会のなかの知識:大学 (石井雅巳)

大学の歴史
大学の歴史
クリストフ・シャルル、ジャック・ヴェルジェ 著岡山茂、谷口清彦 訳
白水社
ISBN 978-4-560-50940-1
2009年
大学改革の迷走
大学改革の迷走
佐藤郁哉
ISBN 978-4-480-07263-4
2019年
隠岐さや香
文系と理系はなぜ分かれたのか
星海社
ISBN 978-4-06-512384-3
2018年
広田照幸、石川健治、橋本伸也、山口二郎
学問の自由と大学の危機
岩波書店
ISBN 978-4-00-270938-3
2016年
吉見俊哉
「文系学部廃止」の衝撃
集英社
ISBN 978-4-08-720823-8
2016年
ビル・レディングズ 著 青木健、斎藤信平 訳
廃墟のなかの大学(新装改訂版)
法政大学出版局
ISBN 978-4-588-14051-8
2018年
マーサ・C. ヌスバウム 著 小沢自然、小野正嗣 訳
経済成長がすべてか?デモクラシーが人文学を必要とする理由
岩波書店
ISBN 978-4-00-022793-3
2013年
豊田長康
科学立国の危機失速する日本の研究力
東洋経済新報社
ISBN 978-4-492-22389-5
2019年
佐藤裕、三浦美樹、青木深、一橋大学学生支援センター 編著
人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く〈研究と就職〉をつなぐ実践
大月書店
ISBN 978-4-272-41222-8
2014年
内閣府経済社会総合研究所 編著
地方創生と大学
公人の友社
ISBN 978-4-87555-683-1
2016年
高崎経済大学附属産業研究所 編
地方公立大学の未来
日本経済評論社
ISBN 978-4-8188-2092-0
2010年

 古来より洋の東西を問わず、学問は共同体のなかで育まれてきたと言ってよい。プラトンのアカデメイアであれ、漢の太学であれ、同じ志をもった者たちがともに競い合って勉学や探究に努めたことだろう。とはいえ、現在に通じる大学の起源は、中世ヨーロッパに求められる。度重なる制度改革を経て、現在に至るまで高等教育・研究機関として続いている大学の歴史を一望する際には、クリストフ・シャルル、ジャック・ヴェルジェ『大学の歴史』が要を得た見取り図を提示してくれる。 開く/閉じる

1.大学と学問の来歴

 その後学問の細分化が進み、人文科学・社会科学・自然科学といった学問区分が広く受け入れられ、とりわけ文系と理系という区別は今では馴染みのものになっているだろう。そのような学問分類がなぜ、どのような仕方で生じていったのか。不毛な水掛け論に陥らないためにも、隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』から得るものは多い。

2.「大学改革」とはなにか?

 1990年代から現在に至るまで、大学院重点化計画や国立大学の法人化、運営交付金から競争的資金への転換、地域貢献への要請、文系学部の縮小など、一連の「大学改革」が急速に進められ、大学のあり方が大きく変わろうとしている。しかしながら、その過程で様々な歪みや問題が生まれていることも指摘されている。そんな「大学改革」の問題点を簡潔にまとめているのが、広田照幸・石川健治・橋本伸也・山口二郎『学問の自由と大学の危機』である。なかでも、2015年に文科省が通知した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」は、「文系学部不要論」として大きな衝撃とともに受け取られた。この騒動については、吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』が冷静な整理と文系への擁護を提示している。

 市場原理を内面化した大学改革やそれに伴う文系学問の危機は、日本に特有のものではない。1996年に公刊されたビル・レディングズ『廃墟のなかの大学(新装改訂版)』は、国民国家の衰退とグローバル化に巻き込まれた大学の変容を文化という観点から読み解き、現代の大学が消費者主義に侵されている様を鮮やかに描き出している。こうした大学に市場原理や競争原理の適用を求める流れを目の前にして、経済的価値以外の価値に人文学の貢献を見出す快著が、マーサ・C. ヌスバウム『経済成長がすべてか?』である。

 とはいえ、いわゆる文系学問だけが大学改革の被害者というわけではない。豊田長康『科学立国の危機』は、日本の科学技術研究の失速と過度な「選択と集中」という国の政策の関係を詳細なデータの分析とともに示している。

3.若手研究者の現状

 大学改革の犠牲者は大学教員だけでなく、大学院生をはじめとした若手研究者も含まれる。ここでは、文系の大学院生やポスドクの就職事情について、具体的なデータを中心にまとめた佐藤裕・三浦美樹・青木深・一橋大学学生支援センター編著『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く』を推したい。

4.地方と大学

 文部科学省の有識者会議における「G型大学、L型大学」提言は、大学研究者から多くの批判を巻き起こしたものの、地方創生は国の重要な政策課題であると見做されており、地方国公立大学では「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」を中心に着々とL型大学化を突き進んでいるのが現状ではないだろうか。そんな地方創生と大学改革について、政府の意図を知る上でも、内閣府経済社会総合研究所編著『地方創生と大学』が基本書となる。

 なお、そのような地方創生ブームに先駆け、上からの命令とは別に、地域における教育・研究拠点としてのあり方を真摯に問うている貴重な一冊として、高崎経済大学附属産業研究所編『地方公立大学の未来』を挙げておきたい。(石井雅巳)

近代日本における西洋諸学の受容に多大な貢献をし、「日本における哲学の父」とも称される西周(にしあまね)。翻訳論、日本語論、軍事論を取り上げ、現代では忘れられつつある知の百面相の魅力に迫る初の入門書。
石井雅巳

『在野研究ビギナーズ』著者、ブックフェア選者の紹介

名前の肩に*が付いている方はブックフェアの選書も担当しています。

酒井大輔*(さかい・だいすけ)
第一章

1984 年生まれ。政治学。名古屋大学大学院法学研究科博士前期課程修了。 業績
  • 論文に「多元主義からイデオロギー対立へ─大嶽秀夫の政治学とその変容」(『年報政治学』2016-I)、「日本政治学史の二つの転換─政治学教科書の引用分析の試み」(同2017-II)などがある。学術誌の査読制度を分析した “Who is Peer Reviewed?” を近く海外誌に掲載予定。

工藤郁子*(くどう・ふみこ)
第二章

1985 年生まれ。PHP 総研主任研究員。専門は情報法政策。上智大学大学院法学研究科修了(J.D.)。現在、東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員、一般社団法人日本ディープラーニング協会有識者会員等も務める。 業績

伊藤未明(いとう・みめい)
第三章

1964 年生まれ、会社員。専門は批評理論、視覚文化論。英国ノッティンガム大学修士。 業績

熊澤辰徳*(くまざわ・たつのり)
第四章

1988 年生まれ。神戸大学大学院理学研究科生物学専攻修了(理学修士)。大阪市立自然史博物館外来研究員。『ニッチェ・ライフ』編集委員。2児の父。学生時代は植物生態学を研究、現在の専門は昆虫学。会社員として仕事をしながら、余暇を使って研究活動を行っている。主にアシナガバエ科(双翅目)の分類研究に取り組む他、ハエやアブといった双翅目の認知度やイメージを向上させるべく、ウェブサイト「知られざる双翅目のために」などで情報発信を行っている。 業績

内田明(うちだ・あきら)
第五章

1966 年生まれ。近代日本語活字史研究。 業績

山本貴光*(やまもと・たかみつ)
第六章

1971 年生まれ。文筆家・ゲーム作家。専門は学術史。 業績

吉川浩満*(よしかわ・ひろみつ)
第六章

1972 年生まれ。文筆業。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、現職。関心領域は哲学・科学・芸術、犬・猫・鳥、卓球、単車、デジタルガジェットなど。 業績

朝里 樹(あさざと・いつき)
第七章

怪異妖怪愛好家・作家。1990 年、北海道に生まれる。2014 年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。 業績

内田真木(うちだ・まさき)
第八章

高校教員(比較文学、近代文学)。茨城大学教育学部卒業、放送大学大学院文化科学研究科修了。 業績

星野健一(ほしの・けんいち)
第九章

1982 年生まれ。研究者、プロ家庭教師。創価大学大学院文学研究科人文学専攻博士前期課程修了。法華仏教研究会発起人。主な関心は、近現代における日蓮観。研究誌『法華仏教研究』で、書評コラムを中心に執筆している。 業績

荒木優太*(あらき・ゆうた)
第一〇章 ※編者

1987 年東京生まれ。在野研究者(専門は有島武郎)。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。2015 年、第59 回群像新人評論優秀賞を受賞。 業績

酒井泰斗*(さかい・たいと)
第一一章

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程中退。音楽制作会社を経て現在は金融系企業のシステム部に所属。 ルーマン・フォーラム管理人(socio-logic.jp)。関心事は道徳科学、社会科学、行動科学の歴史。 業績

逆卷しとね*(さかまき・しとね)
第一二章

1978 年生まれ。福岡県在住。学術運動家(「文芸共和国の会」主宰)/野良研究者(専門はダナ・ハラウェイ)。 業績
  • 論稿に「喰らって喰らわれて消化不良のままの『わたしたち』」(『たぐい vol.1』所収、亜紀書房、2019 年)他、『現代思想』『ユリイカ』『アーギュメンツ#3』に寄稿・参加。翻訳にダナ・ハラウェイのインタヴュー(HAGAZINE)。

石井雅巳*(いしい・まさみ)
第一三章

1990 年生まれ。島根県津和野町役場町長付(地域おこし協力隊)を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍。NPO 法人bootopia 副代表理事。専門は哲学(レヴィナス、西周)。 業績

朱喜哲*(ちゅ・ひちょる)
第一四章

1985 年大阪生まれ。大阪大学大学院文学研究科招へい研究員、広告代理店主任研究員。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門はネオプラグマティズムおよび言語哲学。 業績

ブックフェア選者(『ビギナーズ』章執筆者以外)

大久保ゆうさんは、『在野研究ビギナーズ』にインタビューが掲載されています。

朴 沙羅(ぱく・ さら)

1984年生まれ。京都大学大学院文学研究科社会学専修研究指導認定退学。神戸大学大学院国際文化学研究科講師。出入国管理制度とオーラルヒストリーに関心があります。 業績

安井大輔(やすい・だいすけ)

1980年生まれ。京都大学大学院文学研究科社会学専修研究指導認定退学。博士(文学)。明治学院大学社会学部教員。専門は社会学。食や農の研究をしています。 業績

團 康晃(だん・やすあき)

1985年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士後期課程(満期取得退学)大阪経済大学人間科学部講師。専門は社会学。 業績

読書猿(どくしょざる)

フィロロギスト(好学者)。ペンネームの由来は「読書家、読書人を名乗る方々に遠く及ばない浅学の身」であることから。ブログ:読書猿Classic: between / beyond readers(readingmonkey.blog.fc2.com)。 業績

大久保ゆう(おおくぼ・ゆう)

1982年生まれ。フリーランス翻訳家、青空文庫の書守。研究者(大久保友博)としては、翻訳論・翻訳文化史。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、博士(人間・環境学)。京都橘大学助教。 業績
  • 論文に「亡霊は二度死ぬ――マシュー・プライアによる翻案批判とアフラ・ベーンの翻訳論――」(『十七世紀英文学における生と死』金星堂、2019年)、論説に「パブリックドメイン・レジスタンスと文化共有の未来」(『月刊パテント』2019年8月号)、寄稿に「ずかんの〈譜〉を鑑る愉しみ――図譜の/から逸脱してゆく詩情」(『ユリイカ』2018年10月号)、訳書にスコット・L・モンゴメリ『翻訳のダイナミズム――時代と文化を貫く知の運動』(白水社、2016年)などがある。

秋谷直矩(あきや・なおのり)

1982年生まれ。埼玉大学大学院理工学研究科理工学専攻博士後期課程修了。博士(学術)。山口大学国際総合科学部教員。専門は社会学。 業績

中村 征樹(なかむら・まさき)

1974年生まれ。大阪大学全学教育推進機構教員。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(学術)。文部科学省科学技術政策研究所研究官等を経て現職。専門は科学技術社会論・科学技術史。 業績

写真集

2020年02月

2020年01月

2019年12月

2019年8月-11月

催し

名前の肩に*が付いているのは『在野研究ビギナーズ』著者です。

2020年03月04日(水) 20:00~22:00

2020年02月07日(金) 19:30~21:00

2020年01月28日(火)

2020年01月05日(日) 14:30~18:00

2019年12月07日(土)

2019年10月29日(火)

2019年10月6日(日)

2019年09月13日(金)

各地の催し

終了した各地の催し

開/閉

2019年12月21日(土)

  • 名古屋哲学研究会12月例会:ミニ・シンポジウム「ポスドク・ 非常勤問題の現状と課題」
    • 2019年12月21日(土) 14:00~18:00
    • 名古屋市立大学(滝子キャンパス)1号館(人文社会学部棟)6F 現代社会学科会議室
    • 告知ページ
    [趣旨文より] 近年、文科省の大学改革の圧力は年々強まっているように思われますが、それらは、大学の教育力および研究力の強化という異論の起こりにくい抽象的目的を掲げながら、場当たり的な弥縫策に終始し、今回の新テストの民間試験導入とその延期に見られるように、むしろ多くの混乱を生み出しているように思えます。特に、大学の研究力強化という目的に関しては、実態として若手研究者の研究環境がますます不安定化してきているように思えます。今回のミニ・シンポでは提起されて久しいポスドク問題の現状について、二つの報告を踏まえ意見交換を行いたいと思います。

2019年12月14日(土)

  • 第37回「土曜の会」(関西の言語教師の勉強会@doyounokaidesu)
    [趣旨ツイートより] 『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』(荒木 優太 著) の第11章「〈思想の管理マネジメント〉の部分課題としての研究支援」(酒井泰斗 著)を足がかり、手がかりに勉強会=「土曜の会」のマネジメントについてみなさんと考えられたらと思います。

執筆物・インタビューなど

2020年01月23日(月)

2020年01月06日(月)

2019年12月06日(金)

2019年12月03日(火)

2019年11月21日(木)

2019年10月23日(水)

2019年09月16日(月)

2019年09月09日(月)

書評、ご紹介など

書評

2020年05月02日

2020年04月06日

2020年03月08日

2020年03月03日

2019年12月03日

2019年12月01日

2019年11月22日

2019年11月02日

ご紹介

2019年12月28日

2019年12月21日

2019年12月13日

2019年11月21日

2019年11月15日

2019年11月01日

2019年10月21日

2019年09月28日

2019年09月07日


『在野研究ビギナーズ』執筆陣からの応答

工藤郁子「「推し研究者」記事(2019年9月16日)について」

(工藤)が執筆した「『推し研究者』『推し学者』をつくったら、人生がときめいた話」(現代ビジネス)に数多くのご意見ご質問を頂戴しました。まとめてという形ではありますが、応答したいと思います。
なお、まとめの方針については、末尾「まとめの方針について」をご参照ください。(公開 20190925/最終更新 20190925) 開/閉

  • 研究者を推すということは、盲信や思考停止につながり、批判精神がなくなって、研究活動を阻害してしまうのでは?
  • 推しは、科学を楽しむアイディアとして悪くはないと思うが、研究者同士の不断の相互批判や反証を妨げやしないか
  • 「推す」ことと「正しさを批判的に検討する」ことは矛盾せず両立するというのが私見です
  • 例えば、熱心なカンティアン(カント主義者/カント研究者)が、しばしばもっとも先鋭的なカント批判を繰り広げるようなものです
  • 法(哲)学界隈では、上記のような姿勢が通常で、自明の前提となっていたため、寄稿では説明不足だったかもしれません
  • なお、共著『在野研究ビギナーズ』の拙稿(p.36)には、以下のような記載があります
    ところで、法哲学では、師匠の学説を超える「親殺し」をしないと、一人前とみなされないそうである。今をときめく某憲法学者も「常に『お前ら全員殺す』と思いながら、研究をしている」旨の供述をしていた。完全にサツバツだ。しかし同時に、健全でもある。吟味と批判と淘汰によって、学問の品質や正当性が、分野全体として担保されている。
  • ここでも、師として仰ぐほど尊敬し目標としてその議論を追うことと、その学説を批判することの両立が前提にされています
  • ちなみに、酒井泰斗さんが担当した第11章では、研究を「闘争」「競争」のアナロジーで捉えることに対して分析がされています(p.206)
  • 論文や研究を批判的に見ることとそれを書いた研究者を推すことってのは両立できることじゃないの?
  • いつも見てるからこそ「今日の大鵬の取り口はおかしい、大鵬らしくない」と苦言を呈するのが贔屓
  • 同意します
  • 研究会の場では厳しい論争をしつつ、終わった後の懇親会では和気藹々と交流するといったモードの切分けなどを体験してきました
  • 他の事例として、指定討論者を任されたシニア研究者が、初対面のジュニア研究者の報告に対して非常に辛辣な批判を展開したものの、その後、自分が編者になっている共著の企画に当該報告者を招き盛り立てていくケースなども該当するでしょう
  • なお、これは後で応えるように「推し」「ファン」という語から喚起されるイメージの違いに起因して、賛否が分かれた可能性があると思います
  • 「推し研究者」の話、元になった本では、「推し」を屠りたいという隠さない野心が一番面白いのにその話がウェブにないのは残念
  • 共著までご覧いただきありがとうございます
  • 共著の拙稿は、研究者であることを諦めそうになっている人たちが主たるターゲットなので「野心」の話もしました
  • 他方、ウェブ記事のターゲット層は、(自分で研究するつもりはないが)研究に触れていたい人たちでした。そのため、「研究成果の享受だけでも社会的意義がある」と主張し、〈専門性 vs 民主性〉の緊張関係を背景に、お金と共同体の話をしました
  • なお、共著で登場した先生方には、プライバシーなどに配慮して事前に原稿チェックをしてもらいましたが、「興味深い」「工藤さんの稼業がわかった」くらいのぬるい反応しか返ってこなかったので、殺気を真剣に受け止めてもらえるくらいの研究力を身に付けるべく精進したいです
  • 研究対象を批判できないから、オタクは学問には向かない
  • オタクもさまざまで、研究対象を批判できるタイプのオタクもいます
  • 「対象を批判できない人」を「オタク」と定義しているのだとすると、それは私の用語法とは違うので、イメージを確認しておきたいです
  • 著書でしか知らない先生に国際学会で会ったりすると、テンションがあがってしまう
  • 何これすごいって思えた瞬間やその対象になった研究や研究者のことは、心折れそうになった時に思い返すと気力が湧く
  • とても共感します
  • 共著でも書きましたが、私にとって論文執筆は苦痛なため、心の支えになる存在がいることで曲がりなりにも何とかなっています
  • もっとも、心の支えとする研究者であっても批判の対象となることは前述のとおりです
  • つい先日も、敬慕する先生と議論した際に「自分が全く理解できていなかったことがわかった」「もはや逃避はできないと納得させられた」等のコメントをいただき、私の専門領域だったとはいえ、さすがにやりすぎたと反省しています
  • 研究に、ときめきなどいらない
  • 必要ない人と、あった方が研究が捗る人がいます
  • 後者は、規範的にただちに否定されるわけではないと考えます
  • 「推し」などのファンダム語彙、文脈依存性が高いだけに個々人の語感の問題が大きい気がします
  • 仰るとおりですね
  • 私は「推し」に盲信するイメージを持っていませんでした。そのため、寄稿では、多義的な言葉であることへの配慮が不足していたかもしれません
  • 「推し研究者」について、アイドルとファンの比喩で捉えるのではなく、二次創作の作家と読者の比喩で捉えたら、しっくりくる
  • たしかに、そちらの方がメタファーとしてより適切だったかもしれません
  • 情報法や法哲学が専門なら、ファン文化というより闘技系のノリのはず。「プロレス」や「格闘技」に喩えた方がよかったのでは?
  • そうですね。しかし残念ながら、私はプロレスや格闘技に不案内なので、書けませんでした
  • そもそもどうしてこのアナロジー/類比を使ったのですか?
  • ウェブ記事のターゲット層は、(自分で研究するつもりはないが)研究に触れていたい人たちと設定しており、その人たちに類似する存在がファンではないかと考えたからです
  • また、〈特権性 vs 平等性〉の緊張関係や、お金と共同体の話などもテーマですが、それらとも接合しやすいイメージではないかと思いました
  • 推しとかファンになるほど研究者そのものを好きになれるのか、ピンとこなかった
  • 「推し論文」があるだけで、研究者がどんなライフスタイルを送っているかには、まったく興味がない
  • 興味がないことを否定はしません
  • 論文ではなく研究者に興味を持つのは、例えば以下のようなケースです:
    • ある論文が面白いと、その論文を執筆した研究者の別の論文を連鎖的に読み進め、「この人ならこの問題にどういうアプローチをするだろう」と想像したりすることがあります
    • こうして特定の研究者の論文を追いかけていくと、論文間の見解の相違、主張の変遷、関心の移行などに気づくことがありますが(有名な例では、哲学者ウィトゲンシュタインの論考について前期と後期に大別するなど)、なぜそのような変化が起きたのか、論文だけを読んでいるとわからないこともあります
    • こうした変化は、研究者間の交流・論争、就職・異動・留学・亡命、家庭環境の変化、健康状態の移り変わり、政局や世論の動向、政治活動へのコミットメントなどを補助線に引くと理解しやすくなるときがあり、(論文本体に書かれていない)論文の前提や背景がわかって、批判や評価の手がかりになる場合があります
    • なお、研究者を対象とした人物史・個人史もまた研究となりえます
  • 享受した作品から作者自身に関心を抱いても、知的に興味があるだけで自分を相手に認知させたいとは思わないし、だから会いに行かない
  • 私も認知されたいとは思わないです
  • 会いに行かなくても応援は可能ですし、それも意味のあることです
  • ただ、私が研究者と会って話すのは、学部生の頃に以下のような経験をしたことが影響していると思います
    • 刑法の講義中、担当教員の説明に違和感を覚えました。ある事件の事実認定に係る情報技術の理解が間違っていると感じました。その先生は、常に明晰な法解釈を展開していたこともあり、「玉に瑕」で惜しいという気持ちになりました
    • そこで、その情報技術を概説するレポート(A4で7枚くらい)を作成し、匿名で先生のポストに投函しました
    • 翌週、講義の冒頭で先生からレポートの紹介があり「指摘されたことが正しいとしても、結論に影響しないと私は考えるが、意見を聞きたいので名乗り出てほしい」と呼びかけられました
    • 100人以上いる大教室で目立ちたくなく、気後れして名乗り出ませんでしたが、その後、失礼で不誠実な態度だったと反省しました
  • 研究者というヒトに着目したのは、研究(モノ)だと既存のものしか存在しないから?
  • はい、そういう面があります
  • 最終成果物としての論文でなく、それを作り出す人や過程に着目した方が、将来に向けて「これからの学術環境をどうしたいのか」との構想を論じやすいです
  • 研究成果を属人的に判断するのは良いことではない
  • 「論文執筆者名だけをみて、盲信したり、全否定したりするのは、規範的によろしくない」というご意見であるなら、上記ですでに回答したとおりです
  • ところで、論文の査読では匿名性を担保しつつ、掲載時には著者名が公表されます。これはどうしてだと思いますか?
  • 研究者の属人的評価について、「業績」というコンセプトがあります。これは、研究で得られた成果は公のものだ、または、研究内容のみを見て判断すべき、という建前と、しかし研究者個人を評価しなければならない場合があるとの要請が働くために生じたものではないでしょうか
  • つまり、研究成果を属人的に判断して良いかどうかは、場合によると思います
  • 研究者というより、「推し研究テーマ」「推し分野」なら納得
  • 共著(p.35)では、以下のように「箱推し」のアナロジーを用いて、推し分野の話もしていました
    一般に、イチオシのアイドル個人を応援することを「単推し」、アイドルグループ全体を応援することを「箱推し」と呼ぶそうだが、「憲法学推し」など学術分野に対する応援もありえよう。
  • 「推しのいる人生は楽しい」には同意しかないけど「他人から推される人生は楽しい」とは思わない
  • とりわけ女性の研究者にとって、迷惑のほうが多いのでは?
  • アウトリーチを行うほど距離感のおかしい聴衆からの被害にさらされる可能性は増えるので、無責任に「推し活」を勧めないでほしい
  • ご指摘ありがとうございます。たしかに私の示した構想ですと、研究のオープンさに伴う弊害を助長しかねないおそれがあるかと思います
  • また、被害は現に発生していますから、(私の構想の賛否/採否は別としても)対策は必須と考えます
  • 対策案としては、以下などが考えられるでしょう
    • 迷惑の掛からない推し方や節度ある行動という推す側のマナーの探求
    • 組織的な取組みの検討と実施
      • 司会や指定討論者をおく
      • 質問票形式にする
      • 1対1を避け、第三者を介入させる仕組みを作る
    • ベスト・プラクティスの共有
      • 困っていそうな報告者の見つけ方
      • 困った人への声のかけ方
  • ただ、(クローズドな方がよい場面もあるのは前提として)学術研究のオープンさとトレードオフの関係に立っており、悩ましいところです
  • また、アイドルの場合は、このような危険性が広く認知されており、それを回避する仕組みも整備されていますが、研究機関や学会・研究会などに同じレベルを求めるのは難しいとの直観もあります
  • クローズドにすべき場合もあるが、基本的にオープンな場では出来るだけ多くの人に触れて貰いたい気持ちはある。ただし、セキュリティ意識が必要
  • 同意します
  • リスクを重くみて小規模なコミュニティを選び、公共性・公開性を捨てる選択をする分野もいずれ増えそう
  • 私の構想とは異なりますが、そのような構想もありうると思います(場合によってはその選択が適切なこともあるでしょう)
  • ただ、知の探究よりも社交・交際を重視するという意味でのディレッタンティズムに陥らないように、様々な工夫が必要になってくると思います
  • また、研究費をどうやって(安定的に)調達するかという課題も生じるでしょう
  • さらに、小規模でクローズドだからこそ生じやすくなるハラスメントの類型もあり、その対策も必要だと思います
  • それらを含めて検討した構想を、ぜひ読んでみたいです
  • 裾野を広げることで生じる弊害があるからと、活動自体を否定する議論をしてしまうのは、「自動車事故が起こる以上は自動車の運転自体を全て止めるべきである」と同じくらい変ではないか
  • 概ね同意します
  • 制度論としては、施策全体としての利害得失を考えるべきなので、仰る通りです
  • 他方、弊害への対策や個別事案への救済が必要なことも、ご賛同いただけると思います
  • そうすると、「弊害」に接してしまった個人の体験や気持ちを尊重することも意味はあると考えます
  • ファン文化に迎合すると、自分が研究したいものではなく、他者が望むものを研究することになるのではないか
  • 推してくる人の要求や意図が、研究に及ぼす影響について、やや無邪気では
  • 現在、研究者が、他者の(ひいては社会の)望むものとは独立に、自分が本当に研究したいことに専念できているようには見えません
  • それはゆえのないことではなく、多くの研究に公的資金が投入されており、納税者に対するアカウンタビリティが発生しているからではないでしょうか
  • 熱心な読者による応援やクラウド・ファンディングはよくないが、国の研究助成はよい、という主張をどう正当化できるかを考えていた
  • 私もその点を考えてみましたが、よくわかりませんでした
  • コメントをされた方たちから、さらなる応答があることを期待したいと思います
  • 学術的にはダメな研究者なんだけど、特定思想の資産家や権力者に「推された」結果、メディア露出してアカデミアや社会全体に害悪をもたらす「推され研究者」を生み出しかねない
  • 外部のアクターが、思惑や意図をもって、研究や研究者を利用するのは、(善い悪いは別として)いまも常に起こっていることではないでしょうか
  • 私見では、研究者倫理/研究倫理や研究者自身のためのロビーイングなどとして捉える方が、課題設定として適切ではないかと思います
  • アカデミアにふさわしくない人物が影響力を持つことに対する対処法は、妥当な人物が影響力を持つことだ
  • 同意します
  • 推し研究者に批判的な人が多いようだが、研究者以外にも学会誌を読んだり発表聞くだけのファン層も増やさないと資金的に厳しいのではと思う
  • 推し研究者の記事を読んだ一部学者の反応を見ると暗澹たる気持ちになる。危機感がなさすぎ。学問をすることの自明性自体が問われて、もう一度合意を形成しなくちゃいけない時なのに
  • 同じ問題意識を持っています
  • そのため、寄稿では「良い観客」「良い消費者」「良い納税者」を増やすことを処方箋のひとつとして提案しました
  • 「なぜ研究費を税金で賄うのか」という疑問に答える話は、興味がある。もっとも、記事のようにポジティブなトーンではなく、かなりネガティブ寄りだが
  • 日本の学術環境はかなり厳しい状況におかれているという現状認識なので、ネガティブだと思います
  • 寄稿では、「これからの学術環境をどうしたいのか」という構想を展開したので、ポジティブに見えた可能性があります
  • つまり「縮小均衡の施策に終始するのではない道」を無理矢理にでも考えたことによる違いです
  • 記事で紹介されていた、各国の大学設立の経緯が面白かった。特に、アメリカの有名大学は民間団体のような雰囲気があるが、そこには歴史的背景があることがわかった
  • 本文4頁目までご高覧いただきありがとうございます。寄稿中の以下の部分ですね
    封建制・身分制から距離をとったアメリカでは、民間有志が法人を設立する形で大学ができ、経営陣としての理事会と教授団が並立する大学組織が発展した
  • なお、字数の関係で最終的に削除しましたが、ホーフスタッターのいうアメリカの反知性主義(anti-intellectualism)への言及も草稿には含まれていました(リチャード・ホーフスタッター著、田村哲夫訳『アメリカの反知性主義』みすず書房、2013年)
  • 反知性主義は、高慢で軟弱な高等教育機関などで余計な知識など身につけない方が、本質的な知恵を体得できるという立場です。言い換えれば、大学にこもる経済学者よりも新進気鋭の起業家の発言を重視するような姿勢や、机上の空論より実践を通じた実学や技術が重要という発想です
  • 科学の普及、発展という目的を考えた場合、マネージメント系の人に経営権がある大学よりは、教授陣による自治の方が本来は望ましい形だと思う
  • 記事中でイギリス型やドイツ型として紹介した類型ですね
    封建的な社会構造を温存したイギリスでは、大学は社団の一種として扱われ、教師と学生の共同体になった。
    フランスとイギリスの中間的な姿になったのがドイツであり、国家によって大学が設立・維持・管理されるものの、一定の自治を享受し、教授会が大学の諸権限の中心的担い手となった
  • ただ、記事でも指摘した通り、研究者による自治・自律は、オープンでないとかエリートの既得権益として批判されており、民主性や平等性と緊張関係に立っています
  • また、学問の自由を保障する必要性から大学という制度ができたのではなく、大学という組織を母体として学問の自由が意識化されたという歴史的経緯にも注意を払う必要があるように思われます
  • 寄稿ではうまく伝えきれなかった面がありますが、構想としては以下のとおりです
    • 意思と能力がある人が、一般に訴求する形でマネタイズできるようになるのは、資金調達の選択肢が増えるという意味で望ましい
    • 他方で、一般訴求に適さない分野や研究者にも研究費が必要であり、現状では税金で賄われていることが多い
    • しかし、それが特権や既得権益ではないかとの批判・疑念は、古くからある
    • また、公費である以上は何らかのアカウンタビリティは必要と考える
    • 現在は数値的な評価指標によってアカウンタビリティを担保しようとしているが、うまくいっていない部分も多い
    • そこで、(数値ではなく)研究内容を適切に評価できる「良い観客」「良い消費者」「良い納税者」を増やすことを提案した
  • なお、制度的な改善も必要だと考えていますが、それは山口裕之『「大学改革」という病』明石書店(2017年)、福井憲彦編著『対立する国家と学問』勉誠出版(2018年)などですでに分析・検討されています
  • 人文社会科学系はもともとある種のスターシステムのようなところがあって、当然その功罪も、スター研究者なりの大変さもあるのだろう
  • 同意します
  • 共著の執筆過程において、酒井泰斗さんからも「「スターシステム」は、制度としての学問に組み込まれた一つの側面として捉えることが重要」との指摘がありました
  • 素人が接近するとろくな結果にならない
  • アカデミアがポピュリズムに陥る危険
  • ごもっともです
  • 寄稿でも〈専門性 vs 民主性〉や〈特権 vs 平等〉の緊張関係について論じていました
  • (在野)研究推しは、学術の市場化を進めることにならないかと多少の不安もあったが、まさにその点も記事で指摘されていた
  • 問題意識を読み取っていただき、ありがとうございます
  • 共著では「『在野研究』の隆盛を、研究助成などを増やさない正当化事由にしないでほしいと思う」と一行だけ記載するに止まりましたが、寄稿ではもう少し論じることができました
  • 自分が行っている研究の「ファン」や「サポーター」をつくることは研究者にとってとても重要
  • 推していただけるように日々の教育・研究・学内貢献・社会貢献に取り組んでいきたいと思います
  • 応援します
  • 「推し」は、国家が捨てた役割を国民自ら補っていく試みか?
  • そういう面もありますが、民主制をとる国家は、国民が政治の最終決定権限を有するというのが建前です
  • 「科学史学者のポーターは、計量評価への傾倒を、専門家の判断への信頼に代わって数値への信頼が台頭したものと分析した。そして、数値の追求は、ほとんど権威を持たない官僚に、権威を貸し与える結果をもたらす」という部分が面白い
  • ありがとうございます。ぜひもとの文献も読んでみてください(セオドア・M・ポーター著、藤垣裕子訳『数値と客観性――科学と社会における信頼の獲得』みすず書房(2013年))
  • なお、ポーターが分析した事例は、数理会計士や税理士などで、研究者については別の文脈(自然科学の頂点と言われる物理学では、特定の実験者の判断や特定の装置への信頼が高く、恣意性の排除にはあまり頓着していないこと)であることにご注意いただければ幸いです
  • 大学の事例は『測りすぎ』7章の方をご参照ください
  • 「推し研究者」などの言葉が使われているが、内容自体は「探求の共同体」をどうやって維持していくかというごく一般的な話しだった
  • おっしゃるとおりです
  • 現場を知らない聞きかじりの知識でアイドル論を展開しないでほしい
  • cultural appropriation(文化の盗用)に類する問題が生じるのではないか
  • ご指摘ありがとうございます
  • 当事者論やアイデンティティ論にも関係するので(私はファン文化に属する人なのか、そうだとすると許容されるのか、許容されるとすればそれはなぜか等)、今後の課題として受け止め、回答は保留したいと思います
  • 言い方が寒い
  • 大げさな装飾過多でエモーショナルな単語が乱用されている文体がキツい
  • 時流に乗ろうとしただけの軽薄極まりない記事だ
  • 「こんなお堅い誰も興味持たない対象でもアイドル文化とのアナロジーで語ればみんな親しみわくでしょう、面白そうだと思うでしょう」みたいな押し付けがましさを感じる
  • 限界オタなんですね
  • お目汚し失礼いたしました
  • 我々、大学職員/学芸員/博物館職員/美術館職員も研究者と伴走しているのだが、認識されてなくてかなしい
  • ごめんなさい。もちろんあなたも含まれます
  • 寄稿は、例示列挙とご理解ください
  • タイトル見て読むか迷ったけれど中身はバランス感覚優れた割とコアな記事だった
  • タイトルだけでなく本文もお読みいただき、ありがとうございました
  • 私の推し研究者は、XXXです
  • 「探究の共同体」に貢献する手段として、愛やときめきを形で示すことを提案したので、こうした反応は嬉しいです
  • 記事へのコメントでそれぞれの研究者のスタンスや巻き込まれてるものが可視化されていく感すごい
  • 同意します
  • 推し研究者、大抵亡くなってる
  • わかります
  • ところで、「推しの尊さはわれわれの前に現れて同じ時間を生きてくださっているという受肉の神秘に基づいていると思う」というコメントもいただきました
  • 推し研究者がトンデモに傾倒していく地獄を味わった
  • かつて「推し」だった人が年を重ねて衰えるのを見ることほど辛いことはない
  • わかります……
  • そういうときは「介錯」してあげるのですが、「斬られた」ことすら認識してもらえないこともあります。地獄です。
  • なお、友人知人の研究者たちに、私がそういう状態になったら息の根を止めてほしい旨をお願いしています

まとめの方針について

意見のみを取り上げ発言主体を明示しない(参照リンクをつけなかった)という構成を採用した理由について
  • 「発言主体は関係なく意見だけ対象にすればよい」という人が散見されたので、その立場を尊重しました
  • 発言者特定は応答責務の帰属先明確化という機能がありますが、多くの人は研究活動として本件について発言したわけではないでしょうから言いっ放しでもよいですし、また、今回私はその責務を求めていません(自ら進んで応答いただくことは歓迎です)
  • 研究者等に対する過剰な/的外れな/目的外のコミュニケーションを迫ることがハラスメントになりうるとの問題提起がなされていたことも考慮しました
    • Twitter等で個別リプライをつけるという方式を採用しなかったのも、同じ理由です
    • もっとも、これだけ長文を用意することの方が気持ち悪いとか受け入れがたいという人もいるかもしれませんが、そこは言論の自由として、ご海容を願いたいです
  • 「掲載された意見が本当に存在したか」「取り上げ方が恣意的ではないか」などの検証可能性は、SNS検索等である程度担保されていると思います
    • なお、掲載した意見は、もとの表現/表記を整理したり、要約したり、区分したりしています
『在野研究ビギナーズ』の派生ページに、この応答を掲載してもらった理由について
  • 第一義的には、現代ビジネスさんの寄稿は、在野研究ビギナーズがきっかけだったからです
  • 加えて、いただいたコメントを拝見するなかで、その前提にある研究観、研究者像、科学観、学問のイメージなどを興味深く感じました
    • 「推し」という言葉が多義的で曖昧であるのと同じくらい、「研究」「学問」も多義的で曖昧であるようです
    • ときとして研究者自身ですら「自分たちが実際にはどのように仕事を進めているのか」を認識していない、または、関心がないように見受けられました(SNS上の発言だからかもしれませんが)
  • そして共著『在野研究ビギナーズ』の執筆過程でわかったことは、まさにこの点に関することでした。つまり、「研究や学問をどういう営みとして捉えているか(または、何が死角に入っているか)」という研究者等の認識が、成果物(論文や討議)にかなり影響を与えていることがわかりました
    • 例えば、朱さんの担当された第14章が典型例です
  • 上記を考察する意味で、共著とウェブ記事をつなげて捉えるとよりよいと考えました