この「多次元性」は厳密な意味で解されねばならない。つまり、あらかじめ存在する統一的全体の諸側面が抽出されて複数の次元が生じるのではなく、それぞれの次元のなかに全体が現れてくる。この複数の全体(!)は統合不可能なのである。
〔機能システムの閉鎖性から〕統一的な「メタ物語」(リオタール)の消失が、そして全体社会の多次元的な記述が帰結する。そこでの種々の次元(=ポジティブ/ネガティブの区別)とは、諸機能システムの種々のコードと種々のシステム/環境−区別に他ならない。(Luhmann 1995b: 174)