以下の議論を先取りすることになるが、われわれから見ればロールズの問題点は、その理論的枠組が抽象的で現実のコンフリクトに対して閉じられていることにではなく、逆にそれが十分に閉じられていない点にある。すなわちロールズは、(「重合的コンセンサス」の発想に見られるように)他の機能システムによる観察=拒絶を、開かれた対話と誤認してしまっているのである。