ルーマンが先の引用箇所の直前において指摘しているように、カントの第三アンチノミー(因果性の王国/自由の王国)もまた、この関係の二方向性の現象形態のひとつであると考えてよいだろう。多様な諸原因の相乗効果によって引き起こされる行動が、結果としてその背後にひとつの自由な意志があるかのような仮象を呼び起こすのか(多様性から統一性へ)、それとも現に存在しているひとつの自由な意志が多様な行動を生ぜしめるのか(統一性から多様性へ)、というわけだ。